EV・HV関連でも高い技術力を発揮、ボルグワーナーの高効率ソリューションとは?…キーパーソンインタビュー

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ボルグワーナー 副社長兼エミッションズ&サーマルシステムズ・アジア事業本部長のクリストファー・J・ランカー氏、副社長兼マーケティング・広報・政府渉外担当のスコット・D・ジレット氏、ボルグワーナー・モールスシステムズ・ジャパン代表取締役社長の三島邦彦氏(右から)
ボルグワーナー 副社長兼エミッションズ&サーマルシステムズ・アジア事業本部長のクリストファー・J・ランカー氏、副社長兼マーケティング・広報・政府渉外担当のスコット・D・ジレット氏、ボルグワーナー・モールスシステムズ・ジャパン代表取締役社長の三島邦彦氏(右から)全 21 枚

ボルグワーナーは、アメリカのミシガン州アーバンヒルズに本拠を構える老舗の自動車サプライヤー(部品メーカー)だ。1880年に設立したモールス社をルーツとし、1929年に今につながる会社組織へと発展させている。1940年代には時代に先駆けてオートマチック・トランスミッションの開発に取り組み、戦後は日本の自動車にも数多く採用された。

また、モータースポーツに興味を持っている人は、インディ500で勝者を讃える記念トロフィーをボルグワーナーが贈呈していることを知っているだろう。2017年のインディ500を制覇した佐藤琢磨選手も、この栄光のトロフィーに顔が刻まれた。ちなみにボルグワーナーは、インディカーシリーズにターボユニットを供給している独占サプライヤーとしても知られている。

今のボルグワーナーは、トランスミッションやターボチャージャーの開発や販売だけにとどまっていない。4WDシステムやトランスファー(副変速機)、エンジン内部の可変バルブタイミング機構や電子制御スロットル、EGR(排気ガス再循環システム)など、自動車の中核となるパーツに加え、EV(電気自動車)に代表される電動化技術の開発にも熱心だ。また、電動モビリティ向けの統合ドライブモジュール「iDM」や高効率なP2オンアクシスハイブリッドモジュール、バッテリーやキャビンヒーターなどのサーマルマネージメント(熱や温度管理)コンポーネントなどの開発も積極的に推し進めている。

ボルグワーナーの製品を使っている自動車メーカーは世界中にあり、北米だけでなくヨーロッパとアジアにもパートナー顧客がバランスして存在する。ヨーロッパではVW/アウディを筆頭に、ダイムラーベンツ、ルノー、BMWなどと取り引きがある。日本、中国や韓国などでもボルグワーナーの製品を使うメーカーが多い。

電動モビリティ向けのソリューションを展示

ボルグワーナーブース(第10回EV・HEV駆動システム技術展~EV JAPAN~/オートモーティブワールド2019)ボルグワーナーブース(第10回EV・HEV駆動システム技術展~EV JAPAN~/オートモーティブワールド2019)

2019年1月、東京ビッグサイトで「第10回EV・HEV駆動システム技術展~EV JAPAN~」が開催された。このショーにボルグワーナーは、先進的で地球環境にやさしい、最新の高効率なソリューションを出展し紹介。会期中、多くの人たちがボルグワーナーブースに詰めかけ、次世代の新たな推進システムに熱い眼差しを向けていた。

ボルグワーナーのハイライトのひとつが、前述した電動モビリティ向けの統合ドライブモジュール「iDM」だ。3つの異なるサイズ(iDMi XS、iDM S、iDM M)で、この一体型推進ソリューションに統合パワーエレクトロニクス、効率的なS波巻線ステータ技術、パワフルなトランスミッションを組み合わせた。

さらに「P2オンアクシスハイブリッドモジュール」も展示。簡単に低コストで搭載できる、このテクノロジーは電動モーターを内燃機関とトランスミッションの間に直接配置しているのが特徴だ。エンジンやトランスミッションを交換することなく、内燃機関のクルマをハイブリッド車に転換することができる。また、EVやハイブリッド車では熱源などの温度管理も大きな課題だ。ボルグワーナーでは素早いレスポンスで、最適なバッテリー温度と室内温度の管理を実現する高電圧クーラントヒーターをはじめとしたバッテリーやキャビンヒーターの製品シリーズも送り出している。

電動化技術では、48ボルトを採用するEVに向けた電動コンプレッサーにも注目だ。この技術は排ガスに依存しないで稼働するため、タイムラグを感じない気持ちよい加速を可能にしている。

P2 オンアクシスモジュールP2 オンアクシスモジュール

市場のトレンドを捉え、革新的な製品を提供

ボルグワーナーの今後のビジョンやEVを中心とした先進的ソリューション、日本での戦略はどのようなものなのか。ショーの会場で、ボルグワーナーの副社長兼マーケティング・広報・政府渉外担当のスコット・D・ジレット氏、副社長兼エミッションズ&サーマルシステムズ・アジア事業本部長のクリストファー・J・ランカー氏、そしてボルグワーナー・モールスシステムズ・ジャパン代表取締役社長の三島邦彦氏の三氏に聞いた(以下敬称略)。

----:ボルグワーナーのビジョンについて教えてください。

ジレット:ボルグワーナーは内燃機関、ハイブリッド車、そしてEV用推進システムのリーディングカンパニーです。パフォーマンスを向上させるとともに、エネルギー消費と排気を抑えたモビリティシステム・ソリューションに積極的に取り組んでいます。クリーンでエネルギー効率のいい社会の実現を目指しているのです。

ボルグワーナーはパワートレインの分野において130年以上の歴史を誇り、実績もあります。プロダクトリーダーとして、私たちは自動車産業をサポートし、乗用車から大型の商用車、さらには建設車両や農業車両までも対象に、クリーンでエネルギー効率の優れたソリューションを提供したいと思っています。

内燃機関は燃焼などの効率を高め、排出ガスを減らすとともに性能を向上させることに努めています。ハイブリッド車は、マイルドハイブリッド、フル(ストロング)ハイブリッド、そしてプラグインハイブリッドとありますが、包括的な製品ポートフォリオによって、あらゆるハイブリッドアーキテクチャを対象に、自動車メーカーに最先端のソリューションを提供しています。EVについても、モーターからバッテリー、パワーエレクトロニクス、サーマルマネージメントなど、ほぼすべての電気の分野をカバーできます。

----:ボルグワーナーはグローバルに事業を展開し、拡大していますね。世界中の自動車メーカーとタッグを組み、好調ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。

ジレット:ボルグワーナーは市場のトレンドをとらえるのが得意です。また、内部への投資も積極的に行っています。研究・開発に多額の投資をすることによって新しい製品を開発しているのです。市場のトレンドにフィットするテクノロジーを持っている会社を買収して取り込むことも行っています。こういったことを長年にわたって行っているため革新的な製品が多いのです。私たちが持っている技術と知見は、1960年代に確立したトランスミッション設計が根底にあります。これらの技術がハイブリッド車などの製品の開発に、大いに役立っているのです。

----:これから先はEVへと大きくシフトしていくのでしょうか。

ランカー:私たちはEVだけでなく、内燃機関ももっともっと効率を高めようとしています。ユーザーが望んでいるのは、排ガスのクリーン化と燃費向上だから、エンジンの効率を高めることが重要なのです。内燃機関ではターボチャージャーの効率を高めることにも努めています。また、EGR(排気再循環システム)を効果的に使って燃費を向上させることもできます。

内燃機関で培ってきた技術をハイブリッド車に応用することも可能です。燃焼した後の熱い排気ガスを再循環させ、クリーンな技術を加えることによってハイブリッド車を効率よく動かします。

ジレット:EVに関しては、効率を高めることと重量の低減が重要になります。EVやハイブリッド車は、エンジンにいろいろなものを加えていかなければならないので、1mm単位でのモノづくりにこだわっています。

----:軽量化とコンパクト化は大変だと思いますが、これを克服する技術は?

ジレット:現在のトレンドは、すべてを統合したモジュールです。ボルグワーナーの製品をすべて使ってくれればコンパクトになるし、重量も軽くできます。また、熱源などの温度管理もしやすくなります。騒音も大きな課題ですが、これも解決しやすくなります。

ランカー:自慢できる技術としては、モーターの線を巻いていく技術ですね。とてもユニークな技術を持っています。また、ギアボックスのハウジングに関しても、100年にわたる技術の蓄積とノウハウが活かされています。計測技術、そして解析技術も強みです。強度や騒音の解析が一気に進みました。EVなど、静かなクルマが増えてきているし、高級車も多いので、静粛性の追求は重要です。

EVでも効率は重要になります。あらゆるロスが航続距離を短くしています。ヒーターの熱効率に関しても高い技術とノウハウがあり、航続距離を減らすことなく、快適な温度のキャビンを実現しています。乗っている人がひとりだけなら、その人だけを温めるという技術もあるんですよ。

----:グローバルに見て、日本の位置付けはどうなっているのでしょうか。

三島:日本国内において、自動車の生産というものはそれほど多くありません。伸びも限定的です。しかし、世界で生産されている日本ブランドのクルマはたくさんあります。少なくとも30%になりますし、用途を限定すれば50%を超えるシェアのものもあるのです。有望な市場ですが、日本の自動車メーカーの特徴は、どのサプライヤーの部品を使うか、の意思決定が日本でのみ行われていることだと思います。また、サプライヤーとの関係が長期にわたっているのも特徴です。

よい製品を発明しても、日本のエンジニアは細かいところにまでこだわり、納得しないと使ってくれません。そこに対応できる日本人のセンスを持ったエンジニアがいるということが日本で成功する秘訣だと思います。

ボルグワーナーはNSK(日本精工)と合弁でNSKワーナーを立ち上げてから55年、ボルグワーナー・モールスシステムズ・ジャパンはボルグワーナー単独資本になってからでも35年の日本での開発と生産の歴史を誇っており、日本に根付いていると思います。また、ボルグワーナーの社員は勤続年数が長いのも特徴です。ですので、日本の自動車メーカーの担当者とも長く付き合えると考えています。

ボルグワーナー スコット・D・ジレット氏(左)とクリストファー・J・ランカー氏(右)ボルグワーナー スコット・D・ジレット氏(左)とクリストファー・J・ランカー氏(右)

ボルグワーナーのホームページはこちら

ボルグワーナー・モールスシステムズ・ジャパンのホームページはこちら

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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