トヨタの先進技術開発部隊「TRI-AD」、クラウド9割でバグフリーを目指す

1月30日、TRI-ADが自動運転ワークショップを開催した
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トヨタ自動車、デンソー、アイシン精機の3社が2018年3月に共同で設立した「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デペロップメント」(以下:TRI-AD)は1月30日、同社事業の柱である自動運転技術などを説明するワークショップをメディア向けに開催した。

車両のビッグデータを活用する新サービス「MSPF」

TRI-ADは、自動運転技術の先行開発分野で技術開発を促進するために設立されたが、この日、説明に立ったTRI-AD CEO(最高経営責任者)のジェームス・カフナー氏は、「弊社の役割は、日本の強みであるモノ作りとシリコンバレーのイノベーションを一体化する架け橋となること」と説明。トヨタ自動車の米国子会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート」(以下:TRI)が取り組んでいるAIによる自動運転技術に関する研究成果を、トヨタ自動車本体の製品開発へと落とし込む役割を担う。

カフナー氏は説明の中で、トヨタ自動車の80年にわたる歴史を振り返り、トヨタがこれまでの自動車メーカーからモビリティカンパニーへと変身しようとしていることも紹介。そのベースとしてTRI-ADでは、車両のビッグデータを活用して新しいサービスを創出する「モビリティサービス・プラットフォーム」(MSPF)を用意した。

このMSPFについてカフナー氏は、「将来のモビリティサービスの収益や価値を底上げすることにつながる」と期待を示す。しかし、その一方で「自動運転車がデモ走行することはたやすいが、それを製品化してどうバグなしで開発するかはとても難しい」とする。そのために「信頼性の高いソフトウェア開発に必要なクラウドベースの開発ツールやシミュレーションが欠かせない。我々はクラウド上にパワフルなツールを作ることを目指しており、その体制を盤石にするための投資を強化する」(カフナー氏)との決意も表明した。

カフナー氏は、TRI-ADが開発中のトヨタ向け自動運転技術について、「その中核となっているのがハイウェイチームメイトと呼ばれる自動運転技術だ。これまでも高速道路に範囲を絞ったレベル3での実証実験を繰り返し、2020年の実用化を目指している状況にある」。さらに「この開発にはTRIとTRI-AD以外に、デンソーやアイシンといったサプライヤー、半導体メーカーなどが開発に加わっている他、さらにスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学なども関わる産学連携の事業ともなっている」(カフナー氏)と説明した。

安全で移動の自由を妨げない環境に配慮したクルマ作りを目指す

続いて登壇したトヨタ自動車の先進技術開発カンパニーで先進安全領域長を務めるTRI-AD CTO(最高技術責任者)の鯉渕健氏は、「MSPFなどのソフトウェアプラットフォームを立ち上げ、自動車をハードウェアだけでなくサービスとしても展開していく。その中で自動運転は重要な技術で、死傷者ゼロを目指すために様々な開発を行っていく」との基本方針を説明。「トヨタは今後のポリシーとして、安全で移動の自由を妨げず、環境にも配慮したクルマ作りを続けていく」(鯉渕氏)とした。

さらに、これまで積み重ねてきたトヨタの自動運転技術について説明。2017年に新型LSへ向けて「Lexus Safety System+A」という予防安全システムを搭載し、「Toyota Safety Sense」にもいわゆるレベル2の自動運転技術などを導入。その後もその第2世代を導入したことで、「こうした技術の登場もあって、交通死亡事故率は長い時間をかけて徐々に低下してきている」とその成果を強調した。

しかし、鯉渕氏は「ここへ来て、交通死亡事故率の低下ペースが落ちてきており、北米ではむしろ上がっている」と報告。その要因として3つが想定され、「一つ目がセンサーの視認範囲外で事故が起きていること、二つ目が自転車/歩行者/子供など対象が急激に動いて対処できなかった、そして三つ目がスピードが速過ぎて反応が遅れた」ことがあると説明。今後はセンサーの高度化や技術を進化させることで事故低減を目指していくとした。

TRI-ADは現在、仮の拠点として東京・日本橋のオフィスビルに入居しているが、2019年夏にも近隣で建設中のビルに移転する。TRI-ADをこの地を選んだ理由についてカフナー氏は、「米国のTRIと日本のトヨタが連携するにも、製品開発と研究の間を隔てる絶対的な距離がある。付加価値を生むソフトウェアやデータの重要度は増しており、トヨタ自動車が自らソフトウェアを作れるようにならなければいけない。そのためにはアジアの優秀な人材も引き入れられやすい“東京”という立地が適している」と説明した。

TRI-ADがソフトウェア開発に本腰を入れ始めたことで、自動運転技術を巡るソフトウェアの開発競争がいよいよ活発化していくことになりそうだ。

《会田肇》

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