【池原照雄の単眼複眼】明暗分けた堅調日欧勢と苦戦の米2社…2018年世界新車販売

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首位VWなど上位10社のランキングは不変

世界の自動車メーカーの2018年新車販売台数を連結またはグループベースで集計し、上位10社をランキングした。各社の発表データに基づくもので、一部は卸売りや出荷での集計となっている。

3年連続で首位になった独VW(フォルクスワーゲン)をはじめ、10社の顔触れと順位は17年と全く同じになった。そのなかでGM(ゼネラルモーターズ)、フォードモーターの米国大手2社は、米中経済摩擦の影響もあって、いずれも前年実績から2ケタの落ち込みと苦戦した。日欧勢の上位3社がいずれも過去最高となっているだけに、長年の勢力関係が揺らいできた。

2018年の世界販売ランキング(カッコ内は前年順位と増減率、▲はマイナス)
1(1)VW 1083万台(1%)
2(2) ルノー日産三菱 1076万台(2%)
3(3)トヨタ 1059万台(2%)
4(4) GM 838万台(▲13%)
5(5) ヒュンダイ 740万台(2%)
6(6) フォード 598万台(▲10%)
7(7) ホンダ 524万台(▲1%)
8(8) FCA 484万台(2%)
9(9) PSA 388万台(7%)
10(10)ダイムラー 335万台(2%)

18年の世界の新車需要は、2大市場である中国と米国で鈍化傾向を強め、勢いに欠ける展開となった。09年に世界最大の新車市場となり、08年のリーマン・ショック後の需要回復をけん引してきた中国は、前年比2.8%減の2808万台と、3000万の大台を前に足踏みした。マイナスとなるのは1990年以来、実に28年ぶりだった。

中国はエントリーユーザーの購買意欲に異変も?

17年末に廃止された小型車への優遇税制の反動減に加え、米中摩擦による消費マインドの悪化もあって18年は9月から前年を下回ったまま年末を迎えた。経済摩擦で対峙する米国ブランド車が不振となっているほか、「中国の自主ブランドも苦戦している」(ホンダの倉石誠司副社長)状況にある。自主ブランドとは国営から独立系に至る中国メーカー各社による非外資系のブランドであり、もともと最初にクルマを購入する層の支持が高い。それだけに、エントリーユーザーの購買意欲の異変も懸念される。

2番目の大市場である米国は0.3%増の1727万台と、2年ぶりにプラスとなったが実体は横ばい。リーマン・ショック後の09年以来8年ぶりのマイナスとなった17年から勢いは今ひとつだ。もっとも、歴史的にも高水準な1700万台を4年続けているので、地合いとしてはそう悪くはない。

一方、欧州自動車工業会の集計によるEU加盟国など欧州30か国の乗用車販売は0.1%減の1562万台と、ほぼ横ばいだが、13年以来5年ぶりのマイナスとなった。また、国別では世界3番手の市場である日本は0.7%増の527万台と、2年連続でプラスかつ500万ラインに乗せた。ただ、日本も横ばい圏であり、日米欧の先進諸国市場は総じて伸び悩んだ。

トヨタ、4年連続で1000万台の安定感

企業別の販売実績では、16年に初めて首位に立ったVWが前年比1%増の1083万台と最高記録を更新し、3年続けてトップを維持した。最多のシェアをもつ中国では市場が鈍化するなかで420万台(0.5%増)を販売し、トップへの原動力とした。ルノー・日産・三菱グループは、17年に続いて1000万台を突破するとともに2位をキープした。3社でもっとも販売が多い日産自動車は、米国での不振が響いて565万台(3%減)と、前年までの8年連続過去最高が途絶えた。ただ、日系ではトップの中国では3%増の156万台で過去最高を確保した。ルノーは388万台(3%増)、17年から回復が続く三菱自動車は強みの東南アジで伸ばし、121万台(18%増)だった。

トヨタは1059万台(2%増)と3年連続でプラスとなり、2年続けて過去最高をマークした。毎年大きな伸びはないものの、4年連続で1000万の大台を維持する安定ぶりだ。主力の米国は243万台(0.3%減)と横ばいにとどまったものの、『カムリ』や『カローラ』など中心車種が好調な中国は14%増の147万台と大きな伸びで過去最高になった。米中摩擦のなか、18年7月に米国生産車以外の自動車関税が25%から15%に引き下げられたため、日本から輸出するレクサス車の販売も増加した。

4位のGM、6位のフォードは米中摩擦のため、中国での販売を大きく落とすなど2年連続でマイナスとなった。1、2位を占める母国の米国でもGMが2%、フォードは4%のマイナスと苦戦した。GMは前年に1000万台を割っていたが18年は900万台にも届かなかった。フォードも600万台ラインを割り込み、両社の後退がジリジリと進んでいる。

ホンダの最高更新は6年で途絶える

5位の韓国ヒュンダイ自動車(起亜自動車含む)は、17年に防衛装備問題による中韓関係の悪化によって中国での販売を大きく落とし、世界販売もマイナスになっていたが、18年は小幅ながら回復した。740万台のうちヒュンダイが459万台、起亜は281万台で伸び率はいずれも2%だった。7位のホンダは、2年連続で500万台に乗せたものの、小幅のマイナスで17年まで6年連続としていた最高更新も途絶えた。軽自動車が快走する日本で3%増とした一方、前年まで3年続けて最高だった米国と中国がいずれも2%減となった。

8位から10位のFCA(フィアットクライスラーオートモービルズ)、仏PSAグループ、独ダイムラーはいずれも前年を上回り好調を持続した。FCAは欧州部門が3%減となったが、北米部門が10%増でカバーした。PSAは5年連続でのプラスとなり、17年に買収したGMの欧州事業も貢献している。ダイムラーは、238万台(0.4%増)だった乗用車のメルセデスベンツ部門が8年連続の最高となって全体をけん引した。トータルでも前年に続いて300万台を突破して最高を更新した。番外次点(11位)はスズキで、6%増の334万台と過去最高だった。

《池原照雄》

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