サプライヤーの顔ぶれが変わってきている…矢野経済研究所 賀川勝氏[インタビュー]

矢野経済研究所で移動体通信・エレクトロニクス市場を担当する賀川勝(かがわ すぐる)上級研究員
矢野経済研究所で移動体通信・エレクトロニクス市場を担当する賀川勝(かがわ すぐる)上級研究員全 2 枚

スマートフォンをクルマのキーとして使う「スマートロック」市場が立ち上がりつつある。そこには、スマートフォンを単なるカギ代わりとして使うだけでなく、クルマをスマート化するための”入り口”としての可能性があるからだ。矢野経済研究所で移動体通信・エレクトロニクス市場を担当する賀川勝(かがわ・すぐる)上級研究員に聞いた。

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普及は2020年ごろから


---:スマートフォンをクルマの鍵として使える車種が登場していますね。

賀川氏:そうですね。ちょうどいま、新型車に搭載される事例が出てきたばかりのところです。3月に日本で発売されるBMWの新型『3シリーズ』は、スマートフォンで鍵の開閉ができると謳われています。

ただ全体としては、まだまだ事例は少ないです。メルセデスベンツもスマートロックに取り組んでいますが、まだ一部の車両に限られています。

---:いつ頃から本格的に普及すると見ていますか?

賀川氏:2020年以降には対応車種が出てくると思います。“イモビカッター”(ワイヤレスキーを悪用して盗難防止装置を無効化するもの)への対策や、カーシェアリングへの対応など、クルマのカギのスマート化は求められている状況だからです。

いっぽうで、消費者サイドがスマートロックにそれなりの対価を払うかというと、まだ難しいと思います。今のキーでも十分便利なので、スマートフォンを鍵代わりにすることのメリットを、ユーザーのメリットとして形にしていかなければ、価値を感じてもらえないのではないでしょうか。

---:自動車メーカーとしては、どのような目的があるのでしょうか。

賀川氏:自動車メーカーが考えるのはまずセキュリティ強化です。それから、スマートフォンと連携することで、クルマとユーザーの距離をより近くすること。ユーザーをサポートする存在にしたいと考えているでしょう。単にスマートフォンでキーを開錠する、だけにとどまる話ではなく、スマートロックをそういったツールとして提供して行きたいと考えているでしょう。
矢野経済研究所で移動体通信・エレクトロニクス市場を担当する賀川勝(かがわ すぐる)上級研究員矢野経済研究所で移動体通信・エレクトロニクス市場を担当する賀川勝(かがわ すぐる)上級研究員
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後付けはハードルが高い


---:後付けのスマートロックを利用したビジネスもいくつか出てきていますね。

賀川氏:はい。2013~14年ごろから後付けキットが販売されています。法人の社有車やトラックなどのフリート向けに、カギの代わりにスマートフォンを利用して利便性を高めるというユースケースですね。

ただ、元々破られては困る自動車のカギを、後付けの装置で開けるわけですから、(後付けキットを販売する)サードパーティーにとっては、技術的な面や、車種ごとの適合確認、コスト面などまだまだハードルは高く、広く普及するという段階には来ていません。

サプライヤーの顔ぶれが変わってきた


---:複数の部品メーカーから、スマートロックのソリューションが提案されていますね。

賀川氏:はい。ソリューションが広範囲になるとともに、キーレスを供給する部品メーカーの顔ぶれが、2014年あたりから変わってきています。既存の部品メーカーに加えて、パナソニックやコンチネンタルが伸びています。部品メーカーにとっては、単なる自動車のカギという意味以上に、クルマとスマートフォンの連携という意味が重要です。新しいクルマの付加価値に関わるところなので、ぜひ抑えたいという意識はあるはずです。

いっぽうで電動化が進み、メカトロの部分が相対的に少なくなると、中国の部品メーカーの存在感が増してくるでしょう。スマートフォンを見ても、より安く高性能なものを作る技術がありますし、自動車メーカーとしても、中国仕向けのクルマには、現地生産のために現地のサプライヤーを使う理由になります。それが突破口になる可能性もあります。

---:ソリューションが広範囲になるとともに、サプライヤーに求められるアセットが広がり、顔触れが変わる可能性があるということですね。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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