誰でもカーシェア事業者プラットフォーム「Kuruma Base」とは…スマートバリュー 上野 真氏[インタビュー]

株式会社スマートバリュー スマートバリューLab. ディビジョンマネージャー 上野 真(うえの まこと)氏
株式会社スマートバリュー スマートバリューLab. ディビジョンマネージャー 上野 真(うえの まこと)氏全 2 枚

所有から利用へと、車の使い方が変化していくなか、コネクテッドカーのクラウドソリューションに強みを持つスマートバリューから、“クルマのサービス化を推進するためのプラットフォーム「Kuruma Base」”が発表された。

Kuruma Baseとはなにか。同プロジェクトを推進する株式会社スマートバリュー スマートバリューLab. ディビジョンマネージャー 上野 真(うえの まこと)氏に聞いた。

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クラウド車両管理に強み


---:御社は営業車両をクラウドで管理するシステムで知られていますね。

上野氏:はい。現在のところ約250社、15000台に利用いただいており、主な対象は、普通車を営業車両としてもっている会社です。具体的には、製薬会社のMRの方や医療機器営業、給食を白いバンで運んでいるケースなどです。

---:御社のソリューションはどのような点が優れているのでしょうか。

上野氏:OBDにデバイスを装着するだけで運転管理ができるというソリューションです。デバイスに内蔵したGPSや通信モデムを利用して、車両情報と組み合わせることで、ドライバーの運転診断や走行ルートの管理、車両の稼働率の分析をすることができるものです。

車両側に設置工事が不要で、OBDにデバイスを装着すればすぐに使えることが評価されて導入につながっています。それから運転診断についても、ドライバーをタイプ別に分析して、それぞれ指導のポイントをアドバイスできることも好評です。

---:企業の運行管理者の方に好評なのですね。

上野氏:はい。タクシーやトラックなどのプロドライバー向けには、以前から運行管理が徹底していますが、当社のお客様は、いわゆる運送業ではない一般企業が多いので、そういう企業様でも運転指導しやすいレポートを提供しています。

---:運行管理を導入する企業は増えているのでしょうか。

上野氏:はい。以前と比べると、導入する動機が変わってきたと感じています。例えば交通事故が起きた時のリスクや、企業としての社会的責任を果たすために運行管理の仕組みを導入したいというケースが増えていますね。

それからもうひとつ、“働き方改革“も導入の動機になっています。例えば、直行直帰の就業スタイルにも向いていますし、一日の活動が管理できるので、働かないことはもちろん、働きすぎも管理することができるからです。

上流から下流までできる強み


---:今回発表した「Kuruma Base」は、御社のアセットを活用した新しい取り組みですね。

上野氏:はい。当社の強みは、上流から下流まで、つまり車載端末からアプリ・回線・クラウドプラットフォームまで全部提供できることです。そういった強みを活用して、クルマのサービス化を推進するプラットフォーム、「Kuruma Base」を始めました。

---:具体的にはどのような内容なのでしょうか。

上野氏:例えばカーシェアリングなど、クルマのサービス化事業を新たに始めたいと思っている事業者様に対して、必要な要素をパッケージして提供するものです。

(筆者註:Kuruma Baseのパッケージは、車載端末、利用者向けスマートフォンアプリ、クラウドの管理システム、サービス運用サポートの4要素で構成される)

車載端末については、スマートフォンアプリでドアロックとイグニッション制御をするための車載デバイスや、OBDタイプの運行データ管理デバイス、通信型ドライブレコーダーなどがあります。これらはパートナーのニーズに合わせて提供可能です。

利用者が使うスマートフォンアプリは、クルマの利用予約や決済機能を持たせる予定です。

一方で車両管理システムは、ウェブアプリケーションの形で、車両のメンテナンスのタイミングを管理し、かつメンテナンス会社に作業指示ができる仕組みがあります。

最後に運用サポートですが、カーシェアリングサービスでは通常月2回、車両の清掃や空気圧・オイルの点検をしています。そういった業務の受託や、コールセンター業務の受託をします。
株式会社スマートバリュー スマートバリューLab. ディビジョンマネージャー 上野 真(うえの まこと)氏株式会社スマートバリュー スマートバリューLab. ディビジョンマネージャー 上野 真(うえの まこと)氏
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自分でやらないと洗練されない


---:クルマのサービスを始めようと思ったときに、必要な要素がKuruma Baseにそろっていて、やりたいことに応じて、あれとこれ、というように選んで使ってもらうということですね。御社が自らクルマのサービスを手掛ける、ということではないんですか?

上野氏:自社でもサービスをやらないと、こういったものは洗練されていかないので、Kuruma Baseの上で自らカーシェアサービスを立ち上げます。

駐車場シェアリングの「akippa」と提携して駐車場を確保して、既存のカーシェア事業者が多い駅近ではなく、住宅街に重点的に展開することで差別化していきたいと考えています。

また他の中小カーシェア事業者と連携し、利用IDを共通化することも考えています。利用できるエリアが限定されるカーシェア事業者もありますので、そういった事業者間でIDを共通化して、事業者をまたいで使えるような話を進めています。

身近にあるクルマのサービス化ニーズ


---:Kuruma Baseの具体的な利用事例はありますでしょうか。

上野氏:いま複数の自治体と話を進めているケースでは、自治体の公用車を、週末に市民に貸し出したり、あるいは公用車で直行直帰できるようにカーシェアの仕組みを取り入れたい、というニーズがあります。

また中古車販売店との取り組みでは、自動車ローンの支払いが滞った場合に、車の鍵が開かなくなるといった仕組みや、ご近所さんにクルマをシェアする仕組みを導入して、月々のローン負担を少しでも減らせるような提案ができないか、と検討しています。

自動車ディーラーとは、カーシェアの仕組みを使って試乗してもらう機会を作れないか、ということを話しています。顧客とのタッチポイントを増やすという視点でカーシェアを考えていらっしゃいます。

---:なるほど。大がかりな取り組みだけではなく、身近なところでもクルマのサービス化のニーズがありそうですね。

上野氏:そうですね。ただこういったパッケージも、やってみなければわからないことが多いので、自社でもカーシェアを立ち上げるということです。とはいえ、大手が強いところで普通に戦っても仕方ないので、小規模なところともうまく連携していきたいと考えています。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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