【ホンダ インサイト 新型】なぜモデルチェンジでセダンになったのか[開発者インタビュー]

i-MMDの特性を生かすと上質なセダンになる

シビック寄りのアコードとの間

インサイトにはホンダの電動化に対する魂が込められている

環境車でもデザインが良くなければ買ってもらえない

ホンダ・インサイト
ホンダ・インサイト全 12 枚

ホンダ『インサイト』が3代目となってデビューした。初代はクーペ、2代目はハッチバック、そして今回はセダンとして登場した。なぜ今回はセダンなのか。その理由を開発責任者に聞いた。

【画像全12枚】

i-MMDの特性を生かすと上質なセダンになる

----:インサイトはハイブリッドという基本概念は共通しながらも、これまで2ドアクーペ、実用的な5ドアハッチバックとボディ形態を変えながら、今回はセダンとなりました。まずはその理由から教えてください。

本田技術研究所四輪R&DセンターLPL主任研究員の堀川克己氏(以下敬称略):はい、今回は『アコード・ハイブリッド』などにも搭載されているハイブリッドシステムのi-MMDを採用しています。これは発電用モーターと走行用モーター、ハイブリッド専用エンジンを備える2モーターハイブリッドシステムです。

そこで、お客様の価値にあった上質なもの。しかもi-MMDの特性を生かしたクルマを作り上げるとすると、一体どんなクルマが良いかを考えました。その行き着いた先がオーソドックスではあるもののセダンだったのです。

----:そのi-MMDの特性にあったものとは具体的にどういうことなのでしょう。

堀川:性能面では、爽快かつ快適にということです。そして当然セダンの持っている安心感を出す。こういった基本的な性能をバランスする一番良いクルマとしてはセダンスタイルが似つかわしいと考えたのです。
ホンダ・インサイトホンダ・インサイト
----:そうはいってもセダン市場はとてもシュリンクしてきています。そこにあえて挑戦する意味はどういうものなのでしょう。リスキーでありながら、チャレンジングでもあるとは思いますが。

堀川:我々はチャレンジングとは思っていません。2代目インサイトや『プリウス』のような多くのお客様をターゲットに、なるべく安い値段にしてたくさんのお客様に乗ってもらうことを志向したクルマから、概ね日本でいうと50歳代の方をターゲットに、上質な価値を理解してもらえる方、共感してもらえる方に買ってもらう、月約1000台を販売するクルマという方向にシフトしたのです。このような提案もあるだろうと考えセダンとしました。

シビック寄りのアコードとの間

----:今回のインサイトは、『シビック』との関係性をすごく感じますが、ポジショニングはどのようになりますか。

堀川:2代目インサイトのポジショニングは、『フィット』との兼ね合いでした。プラットフォームも基本的にはフィット・プラットフォームから派生したハイブリッド専用車を作ったという関係性でした。

今回我々は、シビック・アコード・プラットフォームを使ってインサイトを作っていますので、日本のマーケットではシビックとの関係性は非常に高く、シビック・アコードの中のインサイトとなります。従って先代よりはひとつ上の提案です。Bカテゴリーのフィット系からCカテゴリーのシビック・アコード・プラットフォーム側にひとつ上に上がったということです。
ホンダ・インサイトホンダ・インサイト
アコードとシビックとの関係では、シビック寄りの中間を狙っています。サイズ感でも、アコードというよりはシビックに寄った位置づけになるでしょう。ただし、クオリティの面ではほぼど真ん中まできちんと上がっています。

インサイトにはホンダの電動化に対する魂が込められている

----:インサイトというクルマのファンは非常に多いですね。これまでボディスタイルがどんどん変わってきている中でも変わらずファンがいるということは、インサイトという名前に込められた思いがあると思います。そのあたりの考え方を教えてください。

堀川:ホンダも色々なハイブリッドシステムを提案しています。世界中で複雑な環境規制も出てきていますが、そういった中でも、きちんとお客様に価値を提供できる、しかも手の届く範囲のもので提案し、かつその発展性も考えると、このi-MMDをベースに我々が宣言した2030年に2/3の電動化するという目標に向かっていくべきだと考えているのです。その魂をインサイトに搭載した。そこをファンの方々にも理解していただきたいと思っています。

初代インサイトから2代目にいくときも、そして2代目から3代目にいくときも、少し中断した時期がありましたので、きちんとした継続性があって作られているわけではありません。

ただし魂としては、ホンダの今後「x-EV」、ハイブリッドを作っていくときに、今後こういうものにしていくというスタートを切るのが大体インサイトでした。初代インサイトは燃費レーサー。2代目はそんなことは全く気にもしないで(苦笑)、使い勝手がいいのは5ドアハッチバック。その中できちんと値段を下げてお客様が買いやすいハイブリッド車を作ることにこだわりました。
ホンダ・インサイト(左:3代目 右:2代目)ホンダ・インサイト(左:3代目 右:2代目)
そして今回はそうではない、もう一段上の提案です。この成熟した、ハイブリッドが当たり前になってきたマーケットに新たな提案するということで、あまり(初代や2代目を)振り返らずに、どうしようかと皆で考えて作ることにしたのが3代目インサイトなのです。

環境車でもデザインが良くなければ買ってもらえない

----:3代目の開発目標として一番達成しなければいけなかったことは何ですか。

堀川:それは見た瞬間に格好良いと思ってもらえることです。艶っぽい良いものだと思ってもらえるかどうか。値段は上がってはいますが、十分手の届く範囲の質の高いものを提案できているかどうか。できていると判断してもらえなかったお客様には買ってもらえないでしょう。従って、そこに共感したお客様で、ホンダを買ってもらえ、なおかつハイブリッドシステムを志向されるお客様には選んでもらえると思っています。
ホンダ・インサイトホンダ・インサイト
また、お客様の価値観でのプライオリティ、その一番はデザインです。見たときに欲しくなって、ああいいなと思ってもらえないと次はないでしょう。何といってもデザインです。

これは私の個人的な見解なのですが、どんな環境車が主流になって、EVやFCVになっても、まず見たときに格好良いクルマ以外はなかなか選んでもらえないと思っています。ホンダは使い勝手もパッケージングも重要視していますので、それらはもちろん両立させながら格好良いものを作ろうと皆にお願いしました。お金を使いたいなら使っても良いから格好良くしてくれ。3万円、5万円売価を下げるより絶対に格好良い方がお客様は選んでくれると、極めて単純にお願いをしました。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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