【BMW Z4 新型試乗】スープラとはまったく違う運転感覚…渡辺陽一郎

トレンドに逆行したショートホイールベース

スープラとはまったく違う運転感覚

粋な乗り方が似合う

BMW Z4 新型(M40i)
BMW Z4 新型(M40i)全 8 枚

トレンドに逆行したショートホイールベース

BMW Z4 新型(M40i)BMW Z4 新型(M40i)
『Z4』はBMWの2シーターオープンスポーツカーで、新型は電動開閉式ソフトトップを装着する。全長は先代型に比べると85mm長い4335mm、全幅は75mm広がって1865mmだ。先代型はマツダ『ロードスター』に近い印象もあったが、新型は立派になった。その一方でホイールベース(前輪と後輪の間隔)は、25mm短い2470mmに抑えている。

今のカーデザインは、全長の割にホイールベースを長くする傾向が強い。そうすればボディがホイールから前後に張り出したオーバーハングを短くできるから、カーブを曲がる時に慣性の影響を受けにくい。走行安定性を高める上でも有利だ。加えて居住空間も広く確保しやすい。

Z4はこのトレンドに逆行して、全長の割にホイールベースが短い。従ってボディを横方向から眺めると、クラシックな印象がある。

スープラとはまったく違う運転感覚

BMW Z4 新型(M40i)BMW Z4 新型(M40i)
その代わり峠道を走る時などは都合が良い。ホイールベースが短く、最小回転半径も5.2mに収まるから、操舵して曲がり始めるまでの時間差が短い。ドライバーが後輪に近いところに位置するから、挙動の変化も把握しやすい。運転席の後ろ側が短く、ボディの大半が視野に入ることもあり、車両との一体感を得やすい。

ホイールベースの短いオープンモデルだから、操舵感は機敏にしていない。この車両で操舵に対する反応をクイックにすると、安定性の確保が難しくなることもあるだろう。新型Z4はボディ各部の寸法を含めてスポーツカーの素性を高めたから、操舵感がマイルドでも車両の動きは軽快で楽しい。荒れた路面では、フロントウインドーのマド枠が少し震えるところもあるが、不満は感じない。

ちなみにトヨタの新型『スープラ』は、Z4と基本部分を共通化するが、プロトタイプを試乗した限りでは運転感覚が異なる。新型スープラはクローズドのハードトップボディを生かして、操舵に対する反応を機敏にした。Z4は自然な運転感覚とオープンドライブの爽快感を重視するが、新型スープラは車両をグイグイと内側に曲げて、コーナーを攻める印象が強い。同じベースを使うスポーツカーでも性格はまったく違う。

粋な乗り方が似合う

BMW Z4 新型(M40i)BMW Z4 新型(M40i)
Z4は短いホイールベースによって車両と一体感のある走りを楽しめるが、全体的な印象は先に述べた通りクラシックだ。冬の夜にオープンドライブを楽しむような、粋な乗り方が似合う。オープンドライブでも風の巻き込みが抑えられ、シートヒーターも併用すれば、寒い時期でもソフトトップを降ろして走れる。

また肌寒い雨の晩にソフトトップがしっとりと濡れ、街灯に照らされて鈍く光るようなシーンも渋くてカッコイイ。このような想いを巡らせるクルマは、貴重な存在だと思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

《渡辺陽一郎》

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト 1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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