自動運転タクシー実用化に向けた挑戦…日の丸交通代表取締役社長富田和孝氏[インタビュー]

自動運転タクシー実用化に向けた挑戦…日の丸交通代表取締役社長富田和孝氏[インタビュー]
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ドライバーが運転席にいないタクシー「自動運転タクシー」。いつ頃実現しそうなのか。実現には何を整備すればよいのか。タクシー会社はどう考えているのか。日本の自動運転は他国と比べて遅れているのか。「自動運転」の言葉を見聞きしない日はないが、全容を把握する人はそれほど多くはない。日本の自動運転タクシーの実装の“鍵”を握るのは、世界から称賛される日本の民間タクシー会社だ。ライドシェアの衝撃とデジタル化により目覚めたタクシー業界の今を知ることは今後のモビリティサービスの進化を知ることに等しい。しかし正しい情報が共有されていないのが実情だ。

2018年度よりドライバーが運転席にいない「自動運転タクシー」の実証実験を東京都で取組む、日の丸交通代表取締役社長の富田和孝氏に聞いた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。


タイミングを間違えれば、ライドシェアと同じく受け入れられなかった自動運転タクシー


---:最近タクシー業界では多彩な経歴を持つ若手経営者が増え大きく変わりつつある印象があります。前職のご経歴は?
富田氏:航空自由化など大きな規制緩和が行われた時代に、エアーニッポンで約5年、若手が集まって新しいことに挑んでいく環境で働きました。大きな会社だけではなく小さな会社でも頑張れる。新しいことに取組むチャレンジ精神が養われたのかもしれません。

---:タクシー業界の課題は?
富田氏:タクシー業界が直面している危機は大きく分けて5つ。1.タクシーも広義でとらえればライドシェアですが、いわゆるタクシーの営業許可を得ていない「白タク」と呼ばれるライドシェアへの対応、2.自動運転などの新技術の到来、3.深刻な人手不足、4.高齢ドライバーの増加、5.働き方改革です。

---:ライドシェアをタクシーやバス業界は競合ととらえ、業界を挙げて当初は反対しました。自動運転の出だしは、ライドシェア同様に自動運転も受け入れられないのではないかと思っていました。しかし深刻なドライバー不足が業界の大きな課題として認識され自動運転が受け入れられました。タイミングがよかったですね。

---:各国でタクシーやライドシェアの対応が異なります。ライドシェアを支持する人が日本国内には非常に多く、ライドシェアを解禁しない日本は出遅れているとの声があります。しかしながら、いろいろな国を取材しましたが、まわりまわって日本のタクシーがライドシェアと一番うまくやり、AIオンデマンドバスなどの新モビリティサービスとのバランスもとれているのではないでしょうか。

ライドシェアという黒船が日本のタクシーを進化させた


富田氏:多くの国ではタクシーは個人事業主が多いです。有名なロンドンタクシーもそうです。日本のようにタクシーサービスを民間企業が担い、ドライバーの教育や労務管理をしっかり行い、安全と受給調整を行い質の良いサービスを維持してきたことは珍しく、日本のタクシーは世界一だと言われる理由です。日本の文化と言えるかもしれません。ライドシェアが広がった国の共通項は、既存のタクシーのサービスが悪く、ライドシェアの方がサービスの質がよかったからでしょう。

---:なるほど。その共通項は興味深いです。
ライドシェアをただ単に反対するだけでは社会に日本のタクシーが受け入れられません。ライドシェアを反対する代わりにタクシー業界は、ライドシェアが実施し評価されているサービスをすべて取り入れて日本のタクシーを進化させることでした。11項目あります。都内の運賃が410円になった初乗り距離短縮運賃、相乗り運賃、事前確定運賃、ダイナミックプライシング、定額運賃タクシー、相互レイティング、ユニバーサルデザインタクシーの導入、タクシー全面広告、第2種免許緩和、訪日外国人などへのサービス、交通不便地域や高齢者への乗合タクシーなどです。

---:「自動運転」に取組む理由は?
富田氏:東京都のタクシーの25%が稼働できていません。そして朝の通勤、深夜の時間帯などに大きな需要があるのですが、なかなかピーク時に合わせて、その他の時間を遊ばせるようなことに対してタクシー会社の多くは対応が難しいのが現状です。

しかしながら難しいと言っている場合ではありません。自動運転などのデジタルテクノロジーを活用して、お客様のニーズに応えていかなければ、新たなモビリティサービスを最新のテクノロジーとビジネスモデルで参入してくるウーバーやGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)などのプラットフォーマーたちにとって代わられてしまうでしょう。

そうならないためにも日本のタクシー会社自ら、ドライバーのいない無人の自動運転タクシーを活用し、有人タクシーと無人のタクシーをうまく活用しながら需要にこたえていく必要があると考えています。

特に中小のタクシー事業者にも「座して死を待つ」のではなく、自動運転タクシーの技術を使って戦って欲しいと声を大にして言いたいです。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。


2018年度の実証実験がターニングポイント「これは使えそうだ」と実感、有人と無人の共存で


---:タクシー業界の反応は?
富田氏:はじめは「自動運転タクシーはやめてくれ」「勝手に何をやっているんだ」「余計に人手不足になる」と業界から反対する声も非常に大きかったです。しかし2018年度に自動運転の車両開発、運行システム、ダイナミックマップをつくるZMPと東京都などの協力を得ながら実施した実証期間中に若手経営者を中心に試乗してもらったことが大きなターニングポイントとなりました。実体験を通して「これは使えそうだ」と感じることができたからです。最近では「いつやるの?」「いつ実用化するの?」と聞かれるようになりました。

実証実験を行った区間は、もとから需要の大きい六本木から大手町です。交通密度が高い東京都内で、しかも民間のタクシー会社か実施した実証実験は世界的にも珍しいようで、欧州、アジアの数多くメディアに取り上げられました。

---:自動運転サービスの実用化はいつ頃になる感覚ですか?それまでにどのような整備が必要でしょうか?
富田氏:2019年現在においてはあと約10年程度かかるでしょう。法整備が行われ、車両のコストが落ち、ドライバーの人件費がかからない無人の自動運転タクシーとして運行できてはじめてビジネスとして活用が可能となります。自動運転の車両の価格は1台1,000万円にして欲しいとは要望を出しています。自動運転タクシーの車両はワンボックスで、対面で会議や飲食ができるようなデザインがよいかと思います。

またタクシー事業は旅客運送事業法に基づいていて、無人の自動運転タクシーを想定した内容になっていません。車両は営業所の車庫に戻す必要があります。例えば実証実験を行った六本木と大手町間を走らせようとした場合、需要の高まる朝の時間に自動運転タクシーを数台連ねて営業所から持っていく必要があります。それは非効率ですから、六本木に駐車したり保管おくことが現実的です。また道路ではなく安全に乗降できるスペースも必要となります。

ダイナミックマップをつくりアップデートしていくコストを考えると、あるルートを限定して走らせることが現実的かと思います。技術の進歩とともに必要なくなるでしょうが、安全の確保のためにも優先レーンがあるとよいかもしれません。

自動運転タクシーの配車システムは、すでにタクシーの配車はデジタル化が進んでいます。神奈川からはじまり東京にも展開中のAI活用した需要予測なども可能なDeNAのタクシー配車アプリ「MOV(モブ)」などに、自動運転タクシーの車両を入れ込めばサービスインできるでしょう。

2019年度はMaaSを意識した自動運転タクシーの実証実験を予定


---:2019年度や東京オリンピックパラリンピックを意識した動きは?
富田氏:2019年度は2018年度に引き続き自動運転タクシーの実証実験を行いたいと思っています。詳しい内容は検討中で、セミナーの際にお話しできると思います。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

《楠田悦子》

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