【カワサキ W800ストリート 試乗】“カワサキW熱”は不治の病、最新型にも底なしの魅力…青木タカオ

カワサキ W800ストリート
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信州を“カワサキW”で走っていると、まるで片岡義男の小説「彼のオートバイ、彼女の島」の世界に入り込んだみたいで「バイクっていいなぁ」「バーチカルツイン最高!」と、ひとり酔いしれてしまう。

「彼のオートバイ、彼女の島」。若い人は知らないかもしれないが、1977年に発表された小説で、1986年には映画にもなった。そして小説や銀幕のなかで強烈な存在感を放ったのが、1973年の650RS「W3」。なのでW系オーナーには特に有名で、筆者も中学生の頃に映画を観て以来、熱狂的なファンとなり、71年製の「W1SA」を2台も乗り継ぎ、今でも大切な愛車としている。

“カワサキW”熱は不治の病


瀬戸内海の島と同じように信州もまた美しく描かれ、筆者の頭の中ではWといえば信州、信州といえばWというイメージがずっとある。これはもう“カワサキW”と片岡義男に魅せられすぎた病であり、ネット用語ではどっぷりハマることを意味して“沼”なんていうらしい。

もはや30年以上、底なし沼にズブズブであり、我ながら手に負えないし、人に呆れられることも度々あるので普段はあまり大きな声では言わない。

今回乗ったのは、Wシリーズの最新型『W800ストリート』。先代の「W800」は2016年7月発売のファイナルエディションをもって惜しまれつつも販売終了となっていたが、新型となって待望の復活を遂げた。

アップハンドルでトラディショナルなスタイルとしたのが、この『W800ストリート』。M字形状のローハンドルやビキニカウルを備えた『W800カフェ』と2本立てで、スタンダード的なモデルがこちら“ストリート”というわけだ。

オールドファンも頷くサウンド


乗ってまず気付くのが、サウンドに迫力が増したこと。左右対称に真っ直ぐ伸びた2本のマフラーからは、歯切れの良い排気音。昔からWファンは音にこだわり、エンジンやマフラーを楽器にたとえ、オーナーらは自らを“走者”であり“演奏者”だと主張してきた。

スロットル操作とトランスミッションを駆使し、自分だけでなく一緒に走るライダーにもいい音を聴かせて走るからだ。W1の走行音、アイドリング音を収録したレコードも発売されたことがあるほどで、「Wは音が良くなければならない」と徹底的に追求する。その点、新型は申し分ない。

心地良いと感じるポイントはパルス感と乾いた音質であり、それを引き出すために入念なチューニングが施された。アクセルを開けるたびに力強いサウンドが耳に、いやシートを通じて全身に伝わってくる。

そして前を走るW800からも、身震いするほどの素晴らしい演奏が聴こえるではないか。このサウンドならオールドファンも納得がいくだろう。

W伝統の360度クランク・バーチカルツイン


空冷の360度クランク直列2気筒=バーチカルツインエンジンはW1やW3と同じで、Wシリーズの伝統となっている。「W800」はボア・ストローク:77×83mmで排気量は773cc。

1999年の「W650」以来受け継ぐベベルギア駆動のSOHC4バルブをはじめ、味わい深い鼓動感をもたらすロングストローク設計などは先代から踏襲。ただし、エンジンは全面改良を受け、アシスト&スリッパークラッチも新採用した。

低中回転域のトルクが太く、トルクバンドが広いから扱いやすい。トランスミッションの選択に自由度があり、早めにギヤを上げればトコトコと軽やかに、低いギヤで引っ張り上げれば加速は鋭く、スポーティなライディングが楽しめる。

そしてハンドリングに軽快感が増し、より操作に従順となった。先代ではフロント19インチだったが、新型は前後18インチ化し、27度だったキャスター角を26度に、トレール量を108→94mmに変更。

正立式フロントフォークはインナーチューブ径を39mmから41mmに大径化し、ブレーキもフロントはディスク径を300→320mmに拡大し、ドラム式だったリアブレーキも270mmローターをセットするディスク式にグレードアップした。

走りがよりスポーティに


シャシーの剛性が上がり、足まわりも強化されたことで、よりハードにコーナーを攻め込め、高速道路も快適になった。ABSが標準装備され、安全性を向上していることも付け加えておこう。

さらに170mmの大径ヘッドライトはLED化され、6室のうち4室がロー、2室がハイビームに。クラシックムードを損なわないよう、ポジションランプは電球式のようにランプ全体が点灯する。

車体はブラックパーツで引き締められ、レトロとモダンなデザインが融合した印象。ただ単に旧いものを再現したわけではないのがわかる。正直なところ、旧いWシリーズを所有する筆者も、新型を愛車の1台に加えたくなるのだ。

そしてWのことを考えていると、また“カワサキW”熱にうかされてしまうこととなる。梅雨が明け、夏が本格化したらミーヨを探しにW800ストリートで走りに行こうかな。ミーヨは小説や映画に登場するロングヘアのヒロイン。あぁ……、この病、生涯なおりそうにない。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

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