右足でギアチェンジ!? カワサキビッグバイクの元祖「W1」に試乗して再認識した“魂”と進化

カワサキW1(1966年)
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マッハ、Z、ニンジャ、ZZR…。大排気量エンジンの強烈な動力性能で「世界最速」の座をライバルらと競い合ってきたカワサキ。

“ビッグバイクといえばカワサキ”のイメージも、昔からナンバーワンの座をかけて海外市場で戦い、『Z1』や『GPZ900Rニンジャ』らがシーンを席巻してきた歴史や物語があるからだ。

しかし、そんなカワサキ大排気量車の始源は、じつは「マッハ」でもなく「Z1」でもない。どちらもまだ誕生する前の1966年に発売した『W1』である。

マッハやZが登場する前に…


国産バイクの大半が125cc以下だった時代に、排気量624ccの4ストロークエンジンを積み、1965年の東京モーターショーで試作車を公開。

オートバイの外装は落ち着いた配色がほとんどだった時代に、真紅のキャンディカラーと上質なクロームメッキで燃料タンクなど外装を仕上げた。

美しいスタイルと、最高出力180km/h、0-400m=13.8秒という優れた動力性能で、翌66年2月より開催された全米各地の展示会でも好評を博し、ビッグマーケットである北米市場でも好調なセールスを記録。

シカゴに現地販売会社「アメリカン・カワサキ・モーターサイクルCO」も設立され、この「W1」によってカワサキというブランドが日本から本格的に羽ばたいていき、その後の「マッハ」や「Z1」の成功への礎となったのだ。

国内でも66年9月に発売され、白バイや官庁用にも採用。翌67年には対米向けに『W2SS』が送り出されたが、キャブレターを2基装備しパワーアップを図ったのが最大の特徴。

国内仕様47ps、輸出仕様50psであった最高出力は53psに向上し、国内には「W1スペシャル(W1S)」のネーミングでリリースされた。

各シリンダーごとにキャブレターを1つ備えるのが、その後のスポーツモデルでは当たり前となるが、「W1」はキャブが1つしかない。「W1S」以降はミクニVM28×2、「W1」だけが大径のVM31であり、マフラーも“ダブワンサウンド”を奏でる代名詞となっているキャブトンマフラーではなく、ダイコンマフラーと呼ばれる独特の形状をしたものを備えている。

マニア垂涎の初期型をライディング


Wシリーズは熱狂的なファンがいることでも知られ、筆者も1971年の「W1SA」を所有するマニアのうちのひとり。そんな自分にとって、「W1」の初期型は憧れの存在でしかなく、目の当たりにするだけで嬉しいのだが、なんと試乗する機会をカワサキが用意してくれた。

飛び跳ねて喜びたいところを、何もなかったかのように振る舞うのは、じつにたいへんであった。

始動は言うまでもなくキックスタートのみ。イグニッションスイッチはW1SAやW3(1973年~74年)ではONとOFFの2段階だが、W1やW1Sでは三段階にキーが回り、最後はパーキングポジションとなっている。

エンジンを掛ける方法は同じで、まずガソリンコックを開き、ハンドル右にあるチョークレバーを押し上げ、キックペダルを目一杯踏み下ろせばいい。

エアレバーを使うのは冷間時のみで、エンジンが暖まっていたら使用する必要はない。冷えていれば、暖機しながらレバーを少しずつ戻し、微調整が効くところが利点。キックでの始動は調子がよければ、決して難しくない。

この時代、右足でシフト操作が当たり前だった


さて、ギヤを入れて走り出せばもう夢心地である。サウンドはキャブトンマフラーのS以降よりジェントルで、SやSAは弾けるような排気音だが、初期はしっとりと低音が効いて落ち着いている。

とはいうものの現代のバイクに比べれば、凄まじい迫力。元祖ダブワンサウンドに酔いしれつつ、このまま何時間でも乗っていたくなる。

じつは「W1SA」から、英国式の右チェンジ/左ブレーキを左足でシフトチェンジできるようにした。だからこの「W1」はまだ右チェンジ。

一番上がニュートラルで、シーソペダルをツマ先の裏で押し下げていくとシフトアップしていき、トップ4速までN→1→2→3→4という具合に上がっていく。

ギヤを下げたいときは、カカトの裏でペダルの後ろ側を踏み込んでいけば4→3→2→1→Nと戻っていく。落ち着いて操れば、特に混乱せずに済む。当然ながら後輪ブレーキは左足でペダルを操作する。

味わい深さは新型W800へ受け継がれる


この大らかで心地良いライドフィールは、新型の『W800ストリート』『W800カフェ』にも受け継がれている。

OHVや別体式ミッションなどはもちろん異なるものの、360度クランクの並列2気筒エンジンをカワサキ開発陣は追求し、筆者のようなオールドファンにもテイスティだと感じさせるSOHC4バルブのバーチカルツインを現代の技術でつくりだしているのだ。

足まわりは長らくフロント19インチ、リア18インチだったが、新型W800は「W1」と同じ前後18インチに再び戻した。

もちろん懐古主義ではない。車体とエンジンを新設計し、より運動性能を向上。デザインもレトロとモダンを融合させ、伝統を感じつつも新しいスタイルを提案している。

今回「W1」に乗って、カワサキWシリーズにますますのめり込んでいく自分を感じた。新旧、どちらもこれから存分に楽しみたいと思う。

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

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