【スズキ ハヤブサ 最終試乗】カタナの裏で生産終了!世界最速の実力は今も褪せない…青木タカオ

スズキ 隼(ハヤブサ)
スズキ 隼(ハヤブサ)全 24 枚

スズキは新型『カタナ』が登場し、リッタースポーツ市場を賑わしているが、その裏でもうひとつの“雄”が姿を消そうとしている。すでに国内仕様は生産終了が決定し、新車を手にするなら店頭在庫のみのラストチャンスとなってしまった。

公道向けバイクの“究極”を目指したことで“アルティメットスポーツ”とも呼ばれる『HAYABUSA(ハヤブサ)』だ。

なんという迫力だろうか、グラマラスで威風堂々とした流線型スタイル。大容量アルミデュアルマフラーや鎧兜(よろいかぶと)からインスピレーションを受けたテールカウルが際立つ後ろ姿もいい。

速度計に刻まれる300km/hに武者震い!

スズキ 隼(ハヤブサ)スズキ 隼(ハヤブサ)
一時代を築いた横綱に敬意を払って跨ると、五輪となった丸いメーターが並ぶコクピットのメカメカしさに、SFの世界を感じずにはいられない。右から水温計、速度計、中央にギヤ段数やドライブモードを表示する液晶画面、そしてタコメーター、燃料計の順だ。

スピードメーターの目盛りは、300km/hまで刻まれているから強烈としか言いようがない。しかし、2007年7月に発売されたときは驚かなかった。なんせ1999年にデビューした初代は、350km/hまで目盛りがあったからだ。各メーカーが凌ぎを削ったこのセグメントはその頃、行き着くところまで達していたのである。

世界最速の称号をかけて競い合ったのは、ホンダ「ドリームCB750FOUR」やカワサキ「Z1・900スーパー4」の時代から続いてきたが、カワサキが1980年代半ばからレーサーレプリカ路線と一線を画す「GPZ900R ニンジャ」「GPZ1000RX」「ZX-10」「ZZR1100」と立てて続けにリリースし、トップスピードを少しずつ向上。90年代前半まで、その座を堅守する姿勢を保った。

その牙城を崩しにかかったのが、1996年のホンダ「CBR1100XX スーパーブラックバード」であり、スズキも99年に「GSX1300R ハヤブサ」で対抗した。ファンらは自らが体験せずとも、300km/hオーバーの“市販車最速”という高速性能に酔いしれていくのであった。

熟成の域に達し、ビギナーをも包容する

スズキ 隼(ハヤブサ)スズキ 隼(ハヤブサ)
いま乗っている「ハヤブサ」は2008年式でフルモデルチェンジした2代目で、エンジンのストロークを2mm伸ばし、1298ccだった排気量は1340ccにスケールアップされている。エアロダイナミクスがさらに追求され、身にまとっているフェアリングはボリューム感がさらに増したものだ。

13年にフロントのブレーキキャリパーをブレンボ製モノブロックにグレードアップさせ、ABSを搭載するなど小変更があったものの、熟成を重ねてロングセラーを続けているのは、いかに完成度が高かったかを物語っている。国内仕様は14年2月に登場し、カラー&グラフィックの変更を繰り返し、この19年式に至った。

サイドスタンドを払って車体を起こすときはズッシリと重いが、走り出せば翼が生えたかのようにシャープに加速していく。最高出力197psを発揮する並列4気筒エンジンはジワーっと湧き出るようにパワーを発揮し、トップエンドでの伸びも凄まじいが、街乗りで多用する常用回転域でのトルクも太く、ジャジャ馬すぎて扱いにくいというわけでは決してない。

エンジン制御マップが切り替わる「スズキドライブモードセレクター(S-DMS)」は、右ハンドルスイッチで3つの走行モードが選択可能。トラクションコントロールの装備・介入はなく、スロットルレスポンスやパワーの盛り上がりが各モードで違ってくる。ドライならキビキビ走る「A」(フルパワー)を筆者は選びたいが、レインなら穏やかな「C」がありがたい。

S-DMSのおかげで、ビッグバイクビギナーにも「ハヤブサ」が身近になった。装備面を見てもリヤシートまわりに荷掛けフックが備わっているなど使い勝手も考慮してあり、ツーリング先で見かけることが多いのも頷ける。

世界最速の実力は譲らない

スズキ 隼(ハヤブサ)スズキ 隼(ハヤブサ)
されど、高揚感は「ハヤブサ」ならではのものがある。公道ではもちろん不可能だが、そのままエンジンを引っ張り、トップギヤまで順番にかき上げていけば、なんたって300km/hを超えていくポテンシャルを持つのだから想像しただけで鳥肌が立つ。もちろん国内仕様は180km/hリミッターが付き、そんな大それた速度は出ないのだが、ロマンは充分に感じるのだ。

サスペンションは初期荷重でしなやかに動き、奥では踏ん張りが効き、その動きにはゆとりを感じる。ブレーキもタッチ・制動力ともに申し分なく、車体の挙動もエンジンレスポンスも落ち着いていて、王座の貫禄がそこにはある。公道を余裕を持って走ることができるよう開発陣が意識した賜物であり、エンジン、車体、足まわり、すべてが上質。

横綱にしかない圧倒的な力と品格をも持ち合わせていて、そこに佇む姿には敬意を払いたくなるのであった。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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