バスを歩道に近づけたい---バリアレス縁石の技術 ブリヂストンなど共同開発

バス停バリアレス縁石
バス停バリアレス縁石全 16 枚

株式会社ブリヂストンは7月10日、東京都港区にあるブリヂストングローバル研修センターにて、バス停バリアレス縁石の技術説明会を行なった。

【画像全16枚】

自家用車に依存しすぎの都市交通

まずバリアレス縁石実用化の意義や動機付けについて、横浜国立大学・交通と都市研究室教授の中村文彦氏によって解説された。

中村氏は冒頭で「都市交通を研究している中で、現代の社会において自家用車に依存しすぎているのではないか? もっと車を使わないでもよい場面があってもいいのではないか? という考え方をベースに、交通計画の視点を組み合わせて、もっと車を使わないでよい街を作りたいという思いがある」と述べた。

そこで中村氏が注目しているひとつが、多くの人が利用可能なバスとのこと。ただ現状のバスは、バリアフリー化とはほど遠い状態で、バス停に停車するバスと、歩道との間はかなり離れていて、乗客は一度車道に降りてから、バスに乗るといったことが普通に行なわれている。

世界の都市で工夫、日本向けに開発

この問題の解決策を探るべく、外国ではどのような取り組みがされているかを調べたところ、ブラジルのクリチバ市では、バス停とバスの乗降口に渡り板が敷かれ乗降しやすい仕組みが施されており、フランスのナント市では道路に轍のような溝があり、バスのタイヤが轍にはまることで、自動的に縁石に近づけて止まることが可能など、様々な工夫がされていることがわかった。

なかでもフランスのストラスブール市では、縁石の形状を工夫することで、バスがバス停に近づけやすくなっており、この方法であれば日本でも同じような結果が得られるのではないかと考察。そこで実際に欧州製の縁石を日本に輸入し、横浜国立大学内のバス停に設置する検証実験を行なったとのこと。

その結果、通常の縁石では40cmほどの隙間が、10cm以下まで近づけて停車できるというよい結果が出た。ただ日本のバス停に設置する場合、外開き扉車両への対応や、車体やタイヤの損傷についての検証が必要など様々な課題もあるため、日本の交通事情に適した日本仕様の縁石の開発が必要であるという結論にたどり着いたそうだ。

バス正着について意識の高いフランス

次にバス停バリアレス縁石の取り組み概要と経緯の説明に、公益社団法人日本交通計画協会(JTPA)の萩原岳氏が登壇。

縁石開発の背景として、日本のバス停では、乗客がいったん路面に降りてから乗車したり、乗降口と停留所に段差があったり、車椅子やベビーカー利用者はスロープを設置し、介助者がいないと乗降できないといった、様々な問題がある点を挙げた。

さらに萩原氏によると、公共交通のユニバーサルデザイン化が法で制度化されているフランスでは、バスの正着に関する意識が高く、バス停とバスの乗降口の水平と高さの離隔は50mm以内が目標にされ、車椅子やベビーカーがスムーズに乗車できるシステムが確立されていることが報告された。

フランスを手本に、日本でも公共交通として誰もが使いやすい環境を整えていくべきだという思想のもと、2017年にJTPA自主研究「BRTシステム研究会」の中に「正着縁石分科会」を設立し、横浜国立大学中村副学長、株式会社ブリヂストン、株式会社アドヴァンス、開発協力として日本道路株式会社、株式会社トーニチコンサルタントがタッグを組み、バス停バリアレス縁石の共同開発を進めることになった。2018年3月には共同開発のバリアレス縁石タイプが完成し、2019年6月には、岡山市にある後楽園のバス停で実用化された。
バス停バリアレス縁石(2019年6月)バス停バリアレス縁石(2019年6月)

複数の研究プロジェクトを統合

次に、ブリヂストンのソリューション技術企画部部長・田村大祐氏による、バス停バリアレス縁石の技術説明が行なわれた。

もともとこのプロジェクトは、2014年頃から始まっているが、横浜国立大学とブリヂストンの取り組み、日本交通計画協会とアドヴァンスの取り組みと、ふたつの共同プロジェクトとしてスタートしており、当時はそれぞれで研究開発をしていた。そして先ほど萩原氏から説明があったとおり、2017年にブリヂストン、横浜国立大学、日本交通計画協会、アドヴァンスの4社がメインとなり、実用化に向けひとつのチームとして開発を推進することとなった。

その中でブリヂストンは、技術検討、縁石設計、技術検証などを請け負い、バス正着における課題の抽出や把握、課題解決に導く独自の正着縁石の開発などを手がけた。

タイヤと縁石との接触

2017年6月15日に発表されたリリースでは、路肩に寄せやすくするためのスロープを作り、縁石底がラウンド形状で、かつ車両が接触しない回避形状が施された縁石が開発された。またタイヤについてもバリアフリー用の新コンセプトタイヤが開発され、縁石に接触するサイド部やトレッド部が摩耗した場合、リトレッド工場で新たなトレッドゴムとサイドゴムを同時に貼り替えることが可能なタイヤを開発。これらの技術によって、従来の縁石より25mmの段差減少を実現(段差33mm)し、車椅子での乗降や、ベビーカー利用者の負担が軽減されることとなった。

また検証については、バスドライバーにもヒアリングを行ない、通常の路肩と、路肩スロープではどちらのほうがハンドル操作をしやすいかなどを確認。さらに縁石接触時の衝撃についてなどもリサーチを重ね、接触が気にならない縁石底曲率を見つけ出すといった作業も実施。これらの実験で得られたデータをもとに現在は、日本交通計画協会とアドヴァンスが開発した正着縁石のメリットを融合した、新型のバリアレス縁石を開発完了した。

田村氏は「この新製品については現在最高のものだと自負しているが、使っていく上で課題が生じる可能性はあるため、それらはひとつひとつ解決し、さらにまた最高の製品を作りだすことが我々の使命だ」と力強く語っていた。

質疑応答の際、最新のバス停バリアレス縁石の価格についての質問があったが、バス会社の希望や、バス停の形状などによって変化するため一概に答えられないという回答だった。導入を希望する事業者は、製造を請け負うアドヴァンスに問い合わせて欲しいとのこと。ただし、通常の縁石と同じように、大量生産が可能になればコストは下がっていくはずだということも付け加えられた。

《関口敬文》

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