【ボルボ XC90ディーゼル 新型試乗】2トンのボディも軽々、回せば回すほどよく回る…丸山誠

480Nmものトルクが魅力の「D5」ディーゼル

2トンオーバーの重量を感じさせない加速感

トップクラスの安全装備とレーンキープのクセ

ボルボ XC90 D5
ボルボ XC90 D5全 16 枚

480Nmものトルクが魅力の「D5」ディーゼル

『XC90』シリーズに新たにDrive-E(ドライブ・イー)2リットル直4ディーゼルターボの「D5」エンジンが追加された。

すでに『V40』や『V60』には、同排気量の2リットルのクリーンディーゼルターボエンジン「D4」が搭載されている。このD4は低回転域からトルクが充実していて走りがよく、燃費性能にも優れていて定評がある。XC90のD5はD4と基本設計は同じで、D5はハイパワーバージョンという位置づけだ。日本市場に初めて導入されるD5で、XC90にとっても初のディーゼルグレードとなる。

Drive-Eと呼ばれる新世代のエンジンはD4が190ps/400Nmなのに対し、D5は235ps/480Nmといっそう強力になっている。400Nmを絞り出すD4でも十分なトルクだったが、480NmもあるとガソリンエンジンでいえばNAの4リットルオーバーほどの最大トルク。最高出力も45psも高くなったため、XC90がどのようなドライブフィールに変化したか興味が尽きない。

2トンオーバーの重量を感じさせない加速感

ボルボ XC90 D5 AWD INSCRIPTIONボルボ XC90 D5 AWD INSCRIPTION
試乗車は「D5 AWD INSCRIPION」のエアサス仕様のため車両重量2110kg、さらにガラスサンルーフ付きのため標準より20kg増の2130kgと2トンを大きく超える車重になっている。

D5はスタート時のエンジン応答性がよく、アクセルを踏むと遅れなく車体を前に進めてくれる。出だしのフィーリングはとても2トンオーバーのクルマとは思えないスムーズな感じで、トルコンタイプの8速ATもスムーズにアップシフトを繰り返す。室内にいる限りディーゼルであることはわかりづらい。低速域でオーディオを消すとわずかにエンジン音が耳に届くが、その音質はソフトでディーゼルとわかるほどではない。中高速域ではタコメーターを見ない限り、それとはわからないほど静粛性が高い。

試乗会場の横浜市街を走り、首都高速に乗り合流車線でアクセルを踏み込んでみる。すると2500回転ぐらいまではD4とあまり変わらない雰囲気だが、3000回転を超えるとエンジン回転の上昇が一層早くなり、まるでガソリンエンジンのように高回転域まで回ってしまう。

ボルボ XC90 D5 AWD INSCRIPTIONボルボ XC90 D5 AWD INSCRIPTION
2トンオーバーの重量を感じさせない加速感で、しかも試乗時は大人3人乗りという状態で軽々と加速。レッドゾーンの4800回転までスムーズに回ってしまう勢いでタコメーターの針が跳ね上がる。このまま回転が上がるかと思いきや4000回転を過ぎて4400回転あたりでアップシフト。

まだレッドソーンまで余裕があるから「もったいない」と思ってしまうほど、このハイパワーディーゼルは高回転域の吹け上がり感がいいのだ。

実際、最高出力は4000回転で235psに達するため、これ以上回しても加速タイム的には短くはならないのだろうが、軽くよく回るためレッドゾーンを極めたい気持ちにもなってしまう。加速をよく確かめるとアップシフトではトルクが落ち気味にもなっていることがわかる。最大トルクは1750から2250回転で発生しているから、すでに4000回転ともなるとトルクの性能曲線は落ちてきているのだろう。

いずれにしろD5は回せば回すほどよく回るディーゼルで、XC90のボディが軽く感じるほどパワフルだ。3列シートを備える7人乗りだがフル試乗車で荷物を積載しても、この実力なら動力性能に不満を感じることはなさそうだ。

トップクラスの安全装備とレーンキープのクセ

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市街地の加速でやや気になったのは、電子制御エアサスの制御。発進時もトルクフルなディーゼルということもあるが、静止時からややアクセルを踏み込み気味に加速すると少しだけスクウォート(尻下がり)の車両姿勢になる。

これはエアサスにありがちなことで、高速域の微小舵角で応答遅れを感じるのもエアサスだからだ。もっとも乗り心地がいいのがエアサスの美点でもあり、市街地から高速域まで突き上げ感を感じさせないのは、このクラスのSUVとして重要な評価点だ。

ボルボの先進安全装備のインテリセーフはトップクラスの充実度で、トップランナーの1台といってもいい。だが、気になるのが高速道路でACCを使って走りながらレーンキープをするパイロット・アシストのクセ。

レーンの中央を安定してキープすることが難しいようで、どうしても左側に寄っていってしまうことが多い。もちろん車線を逸脱しそうになると警告と共にステアリングのバイブ機構が作動し、同時に車線中央に戻すようにステアリングが動く。このアシストは作動感が明確かつ正確でいいのだが、もともと中央をキープすることが大切。この点は次世代のパイロット・アシストに期待したい。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。

《丸山 誠》

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