【ホンダ N-WGN 新型】毎日乗っても飽きの来ない色を…カラーデザイナー[インタビュー]

ホンダ技術研究所オートモビルセンターデザインプロダクトデザインスタジオCMFデザイナーの秋山ゆかりさん
ホンダ技術研究所オートモビルセンターデザインプロダクトデザインスタジオCMFデザイナーの秋山ゆかりさん全 13 枚

フルモデルチェンジしたホンダ『N-WGN』のボディカラーは、全体のデザインコンセプト、「私の毎日ハッピーベーシック」をもとに開発された。その詳細についてカラーデザイナーに話を聞いた。

飽きの来ないノイズレスなカラーを目指して

----:N-WGNのデザインコンセプトは“私の毎日ハッピーベーシック”で、これは内外装、カラーとも同じとのことですね。それを踏まえ、カラーデザインとして心掛けたことは何でしょう。

ホンダ技術研究所オートモビルセンターデザインプロダクトデザインスタジオCMFデザイナーの秋山ゆかりさん(以下敬称略):軽ハイトワゴンは、お客様が毎日乗り続けるもの。また、クルマのライフサイクルも長くなっているので長期間乗り続けるお客様にとって、毎日乗っても飽きのこない色、ノイズレスなものを心掛けました。それから何よりも、どんな気分の時にも自分の生活に馴染んでくれるということを主題に置いています。

今回ノーマルでは『ホライズンシーブルーパール』という新色が渾身の力作です。今までどうしても軽自動車のブルー系というのは濃い目のブルー、あるいは明るい水色というのが多かったのですが、明るい水色だとどうしても女性っぽくなってしまいます。そこで今回は全てのラインナップを含めて、できるだけジェンダーレスなところを心掛けて、中間明度でちょっと落ち着いたブルーを選びました。

ただし、ハイライトにほんのりとゴールドが入ることによって面の豊かさを表現しています。今回は造形を作る時に、一緒にフィルムに塗ったカラーをあてがいながら確認をしていますので、ちゃんとクルマとカラーが連動するように進めてきました。色と形状が互いに引き立て合うようなそういった色を作っています。

----:N-WGNのサイドを見ると、面が比較的フラットに仕上げられている印象ですので、抑揚をカラーで魅せるとのは難しいと思うのですが。

秋山:特にこの新色はソリッドライクであまりパールメタリックの強いものを使っていません。その理由は生活に馴染むことを考えていましたので、あまりメタリックがギラギラしたものは作らないように考えました。ただし、面の豊かさや、サイドパネルのフラットなところをどのように立体感があるように見せるか。そこで、ブルーに対して反対の補色であるイエロー系を入れることによってコントラストをつけ、青とのコントラストでよりふくよかな印象、柔らかさを出すことにチャレンジしました。

----:若干の抑揚であってもゴールドが多少見えることによってより抑揚感が出せるということでしょうか。

秋山:そうです。それから、硬く見せるのではなく、いかに柔らかそうな見え方にするかということもあります。どうしても白い光だとクリーンで明るい感じにはなりますが、一方で強い印象を与えてしまうのです。それよりも柔らかくて優しい印象を与えたかったのでこの色を作りました。

モノ価値からコト価値へ

----:先代のN-WGNはより強く見せたいという印象があったのですが、そこからは大きく変わりましたね。

秋山:お客様の価値がモノ価値からコト価値へとシフトとしていることが挙げられます。先代のN-WGNの場合はモノ価値、プロダクトデザインをどう見せるかに主軸を置いていましたし、カラーデザインも同様で、先代のN-WGNの形はすごく硬い印象でしたので、それを引き立てるためのカラーラインナップでした。

しかし今回はお客様の暮らしや、豊かさなどの気持ちの部分を大事にしてきましたので、そういう点でいってもエクステリアカラーのラインナップも、ノーマルに関しては印象の強い色はあえてあまり入れていません。定番のブラックやレッドはありますが、他の色は全部少し落ち着いた優しい色味で揃えています。

ハイコントラストにならないように

----:それはインテリアでも見事に表れていますね。

秋山:はい。インテリアに関してはかなり明るいアイボリーとブラウンのコントラストをつけることによって、全体に爽快な印象と落ち着いた印象という、相反するものを両立させることをテーマとして作りました。

----:エアコンの吹き出し口がフロントの中央から左に向けて走っており、黒がアクセントになっていますね。

秋山:助手席前あたりは、どうしても白くて比較的平たい面になってしまいますので、少しぼんやりしてしまったり、変に印象が強すぎたりしてしまいがちです。そこで上下をブラウンで締めたり、中間のところに明るめのベージュを入れることによって濃中淡の三色のコントラストを作っています。全体が極端に濃淡のハイコントラストにならないように中間色も効果的に入れることによって全体を馴染ませました。

大人の色気を演出

----:ではカスタムはどうでしょうか。

秋山:シンプルという考えはあるものの、カスタムに関しては全くアプローチを変えています。より上質で大人っぽい、もっというと大人の色気みたいなものまで表現したいと考えています。というのも、カスタムはノーマルに比べるとダウンサイザーのお客様なども見据えていますので、そういったお客様や目の肥えた大人の方にもしっかりと自信を持って乗ってもらえるようなものにしたいと考えました。

従って黒が基調ではあるものの、所々にチタン調の塗装やシートにも少しラメプリントを入れたり、また光沢のアクセントを加えることによって黒の世界の中にも少し色気のあるニュアンスを加えています。そうすることで、華やかさとシックさというものを両立した世界観にしているのです。つまり、ただの真っ黒なドブ漬けではなく少しきらっとしたアクセントを入れたかったのです。

----:それはエクステリアカラーも同じで結構落ち着いた濃い目の色が多いですね。

秋山:ノーマルは比較的中間明度の落ち着いた色味が多いのですが、カスタムは暗めの色を多くしています。この一番の理由はグリルにメッキパーツが付いていますので、そことのコントラストをいかに綺麗に見せるかを主軸に置いているからです。従ってメッキと合わせた色にどの色もしっかりとコントラストがついてメリハリと華やかさがちゃんと出るようになっています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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