三菱ふそう、今秋にも レベル2 自動運転対応『スーパーグレート』発売へ

「レベル2」の自動運転技術が搭載される三菱ふそうの大型トラック
「レベル2」の自動運転技術が搭載される三菱ふそうの大型トラック全 13 枚

三菱ふそうトラック・バスは7月24日、前の車に自動で追従し、ハンドル操作もアシストするSAEレベル定義「レベル2」相当の自動運転機能を搭載した大型トラック『スーパーグレート』を、今秋にも発売することを明らかにした。バス・トラックとしてこの対応は国内初になる。

これは同社がこの日開催した報道陣向け技術説明会で明らかにしたもの。「レベル2」を実現した機能は大きく「アクティブ・ドライブ・アシスト“ADA”」「アクティブ・ブレーキ・アシスト5“ABA5”」「インテリジェント・ヘッドランプ・コントロール“IHC”」「交通標識認識機能」の4つ。システムは「グローバル・センサー・セット」としてグローバルで開発が行われ、メルセデスベンツの新型「アクトロス」にも採用済みのものだ。ただ、日本ならではの道路事情を鑑み、右ハンドル仕様の評価は日本側が独自に行っているという。

“ADA”でもっとも苦労したのは、幅広の大型車を車線内でどう安定させるか

「アクティブ・ドライブ・アシスト“ADA”」は、乗用車では普及が進んでいる全車速域で対応するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を実現し、電動モーター付油圧パワーステアリングを導入することで、アクセルやブレーキ、ハンドルを制御することで「レベル2」を実現した。

このシステムでは、高速道路など自動車専用道路上でアクセルやブレーキ、ハンドル操作を車載システムが担当し、先行車と一定の間隔を保ちながら自動追従走行ができる。追従はトラックやバスなどの大型車だけでなく、車高の低い乗用車に対しても可能。これにより、ドライバーの疲労軽減につなげる。

システムが作動中、ドライバーはハンドルに手を添えていることが必須で、これは“自動運転”というよりも「レベル2」の“アシスト”の範疇にシステムがあるからだ。そのため、仮に手を離したままでは30秒で警告が鳴り、60秒で自動的にシステムが中止される。ハンドルに手を添えているかどうかは、ハンドルに伝わるトルク変化で検出しているという。

同社開発本部メカトロニクス開発部マネージャー 木下正昭氏によれば「もっとも苦労したのは、車幅が広い大型トラックを車線幅3.2~4.4mの枠内でいかに安定して走らせるかだった」と話す。トラックは乗用車より車体が大きく重いため、操作してから実際に車が動くまでに要する時間は乗用車の3倍。「特に車線の内側に破線が引いてある場所では誤認識が頻発した」(木下氏)と話す。そこで「カメラでの車線認識する際、遠方を認識して車線がどう変化するかを予測させる手法」でこの解決を図ったという。また、カメラは赤外線式ではなく、夜間でも高い認識力を発揮する高感度型を採用したとのことだ。

「交通標識認識機能」を日本の大型車で初めて搭載した

「アクティブ・ブレーキ・アシスト5“ABA5”」は、これまでのレーダーに加え、フロントガラスに搭載したカメラとの組み合わせによって被害軽減ブレーキの機能を強化したもの。カメラで歩行者と車両を認識し、レーザーでその距離を測るフュージョン技術を駆使することで、もちろん、すべての事例で完全停止できるわけではないが、障害物検知の精度を大幅に向上さて危険回避能力を高めたという。ただ、夜間になると昼間よりも認知能力は下がってしまうとのことだ。

「インテリジェント・ヘッドランプ・コントロール“IHC”」は、カメラが前方の状況を判別してハイビームとロービームを自動的に切り換える。判別の対象としているのは、前方の車両のテールランプ、対向車のヘッドランプ、そして街路灯など。ライトスイッチが「オート」になっている時にハイビームにしておくと、対象を検知して自動的にロービームに切り換える。また、速度が30km/h以下になった場合も自動的にロービーへと切り換える。

「交通標識認識機能」も大型トラックでは日本初の搭載機能だ。カメラによって認識した交通標識をメーター内のディスプレイにポップアップ表示するというものだ。制限速度や追い越し禁止、進入禁止、大型車通行禁止、一時停止が表示対象で、認識してから700m走行するまで表示される。このうち、進入禁止の道路への進入を認識すると、アイコンをポップアップされると同時に警報を鳴らす。

自動運転機能「グループとしてレベル2から一足飛びしてレベル4へ」

この日の技術説明会では、三菱ふそうトラック・バスが進める自動運転機能に対する方向性も説明された。それについて、同社開発本部エンタイヤビークル開発統括部長 恩田 実氏は「グループとしてレベル3の開発はあまり意味がないと考えている。日本の状況を説明すれば、運送コストの約40%が人件費で有効求人倍率が2.8倍という中では、人の介在が必要なレベル3ではメリットが感じられない」という。そして、グループとしては「レベル3を飛び越えてレベル4の開発を進めていく計画だ」と説明した。

今回のレベル2の投入について恩田氏は「2012~16年の期間、大型車が関係する死亡事故は1071件発生しており、そのうちの36%が工作物衝突、追突、すれ違い等によるもの。今回の投入がこのカテゴリーの事故減少に貢献すると見ている」と話した。大型車が関係する事故は、重量があることでどうしても甚大な規模に発展しがち。こうしたシステムの導入でドライバーの疲労低減と事故減少につながることを期待したい。

《会田肇》

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