【プジョー 308SWディーゼル 3700km試乗】下火のステーションワゴンも、選ぶ価値はまだまだある[後編]

プジョー308SW HDi GT-Line。至って抑制的ながら均整の取れたデザイン。
プジョー308SW HDi GT-Line。至って抑制的ながら均整の取れたデザイン。全 30 枚写真をすべて見る

プジョーのCセグメントステーションワゴン『308SW GT-Line Blue HDi』で3700kmあまりツーリングする機会があった。前編では全面刷新された1.5リットルターボディーゼル+8速ATのパフォーマンスについて述べた。後編ではまず、ロングツーリングを支える最も重要な性能である走行性能、および快適性から触れていこうと思う。

ロングツアラーとしてのバランスが優れている

プジョー308SW HDi GT-Line。山口県北部の油谷湾にて。
308SWは全般的に落ち着いた挙動で、ロングツアラーとしてのバランスは大変よろしいものに感じられた。昨年夏に3500km試乗を行った『308』のハッチバック版は軽快なドライブフィールを身上としていたが、ウェットや悪路など低ミュー路になるとちょっとテールハッピーな傾向があった。たとえばウェット路面で高架橋の継ぎ目の金属部分を踏んで一瞬リアタイヤのグリップが失われてからの復帰のさいに、グラリとよれるような動きが強めに出るといった感じである。

それに対してSWのほうは、ホイールベースが110mm延長され2730mmとなったことがプラスに作用してか、そういう動きはほとんど気にならなかった。ハンドリングで似ているクルマを挙げるとすると、同様にホイールベースが長く重心が低いホンダのCセグメント『シビックハッチバック』であろうか。コーナリング時はフロントの食いつきの良さでぐいぐいとインに寄り、それに穏やかにリアがしっかりついていく。その動きをシートを介して伝わるGの体感とステアリングの反力で自在にコントロールできるという感じで、断然好感が持てた。

タイヤは225/45R17サイズのミシュラン「パイロットスポーツ4」。ブリップ、ピックアップともツーリングカー用としては申し分なかったが、サイドウォールはパイロットスポーツ3に比べて若干ソリッド。
タイヤは225/45R17サイズのミシュラン「PilotSport(パイロットスポーツ)4」。セミスリックのような鬼グリップではないが、ウェットグリップは申し分ないしブレーキンググリップも優秀だしヨー発生時の反力も自然だしと大変素晴らしく、GT-Lineといいうキャラクターにはちょうど合っているように感じられた。その高性能タイヤを本物の「GT」グレードのような強化サスペンションでなくともきっちり履きこなしているのもすごい。

乗り心地はおおむね良好だが、細かい路面の不整や段差通過などの振動吸収については、サイドウォールの固さゆえか、ちょっとしなやかさに欠ける。1世代前のパイロットスポーツ3、あるいはコンチネンタルの「コンチ・スポーツコンタクト」のようなしなやか系だったらどんな感じであろうかなどという思いも頭をよぎった。

肩こりの少ない良いレイアウト

前席。ダッシュボードデザインなどは基本的に改良前と同じ。
シートはGT-Line向けのカラー刺繍が施されるなどのデザイン面以外はまったくのノーマル形状だが、出来はすこぶるよく、疲れにくかった。クルマの挙動や振動特性が変わったせいか、同じシートを装備していた308ハッチバックより良いように感じられたくらいである。路面インフォメーションの伝わりが良いことが奏功しているとみえて、長時間運転でも眠くなりにくかったのも高得点に思えた部分だった。

室内の使い勝手は操作系についてはよく整理されており、頻繁に使う機能についてはドライブ中に複雑な操作をしなくても簡単に呼び出せるようになっていた。例外はカーナビ&オーディオで、他のプジョーのコンパクト系と同様、操作の階層がごちゃついていて少々使いにくかった。

メーターナセル。視認性は良好だった。
メーター類をステアリング上端越しに見るコクピットレイアウトはハッチバックとまったく同様。小さいアクションでドライブしたほうが長距離の疲れが小さいはずというプジョーのセオリーとして、ステアリング径を小さく、パワーアシストを大きくという作りになっているが、個人的には身体によく馴染んだ。肩こりの少ない良いレイアウトだと思った。

居住区の使い勝手におけるネガティブファクターはハッチバックと同様、小物の収納スペースが非常に少ないことだ。大型のドアポケットに何でも放り込めばいいというのはいかにもフランス流な考え方だが、長距離・長時間ドライブではモノを分類して置きたくなることも結構ある。フォルクスワーゲン『ゴルフ』並みとは言わずとも、もうちょっとポケットが多ければ便利なのになと思った。筆者はドアポケットをいくつかのポリ袋で仕切り、分類するというやり方で切り抜けた。

荷室の広さは出色

荷室に荷物を満載してみたが、収容力はCセグメントワゴンとしては抜群に高かった。
308SWで出色だったのは、荷室の広さだ。前編でも少し紹介したが、VDA方式による計測で610リットルもある。数値を稼ぐためにリアシートバックの上端を高く取ったりといった小細工を施すモデルも少なくないが、308SWはそういう奇手をほとんど使わずしてこの容量を達成しており、見た目からして本当にだだっ広い。長期旅行用の大型トランクも長辺を下にして余裕でタテ積みできる。本体長70cm級なら4つを並べて積むのも可能だろう。

今回はこの荷台を使って試しに車中泊をしてみたが、これはすこぶる快適であった。荷室の床のボードはものすごい強度で、人が乗ってもまったくと言っていいほどしならない。日本車で言えば、最大積載量500kg級のライトバンみたいな使い方もできそうなくらいだ。

リアシートを前に倒すとさらに長大かつフラットな空間が出現する。そこに寝袋に入って寝てみたわけだが、身長170cmくらいであれば頭からつま先まで身体を伸ばして寝ても接触せず、実に気持ちよかった。硬い床で寝慣れている人なら寝袋に入るだけで十分に快眠できるであろうし、硬い床が苦手な人でもウレタンシートを敷けば余裕で寝られるだろう。ちなみにボディ、ガラスの遮音はクラスの水準を大幅に凌駕しており、うっかりすると寝坊しかねないくらいだった。

運転支援システムは昨年乗った改良前の308から大幅にアップデートされ、今日のCセグメントに要求される水準を満たすレベルになった。クルーズコントロールは前車追従型となり、車線逸脱防止も格段にレベルアップした。これでヘッドランプが先行車や対向車を避けて照射するアクティブハイビームになれば言うことなしだが、現状でも長距離運転の疲労蓄積を減らすのには十分有用であった。

ノンプレミアムの域を超えたボディカラー

デジカメでは虹色グラデーションを捉えるのが難しい。実物はもっと美しい外光反射であった。
さて、いかにも実用性一点張りといった感の強い308SWだが、装飾性で“おっ”と思わされた点があった。それはボディカラーである。昨年308のハッチバック車に乗ったときも、赤い塗装でありながら光が混じると黒っぽくなりやすい青空の色を美しく反射するのに感銘を覚えたものだった。

今回はパールホワイト。強い日差しの下ではちょっぴりアイボリーの入った普通の白にしか見えなかったのだが、島根の宍道湖畔で日没を迎えたとき、突然パールホワイトがその夕映えを浴びて精緻きわまりないグラデーションを見せた。

日本車で外光反射が美しいという印象を持った1台はマツダ『CX-3』の「マシーングレー」だったが、308SWはそれ以上で、まさに“真珠色”であった。よほど反射材である人工雲母やメタルチップが微細なのだろう。塗装に関しては完全にノンプレミアムの域を超える水準にあると感じられた。

“遊びグルマ”が欲しいカスタマーにぴったり

城崎温泉の市街にて。
プジョー308SWは、上位クラスも食う広大かつ強固な床板の荷室とハードなツーリングにも余裕で耐えるシャシー性能を兼ね備えるという点で、ステーションワゴンの中ではフォルクスワーゲン『ゴルフ・ヴァリアント』と並ぶ貴重な存在だ。今日ではヴァカンスエクスプレスもSUVが主流となっているが、クルマ自体が無駄に重厚長大であることを嫌うユーザーは一定数いる。荷物は大量に積めるし、日本では一般的ではないがヒッチメンバーを装着すれば日本の法制度で牽引免許が不要な750kgアンダーのモービルハウスを軽く牽引できるだけの強度も持っている。そういう“遊びグルマ”が欲しいというカスタマーにはぴったりの1台であろう。

欧州車ファンにとっては308SWは別の角度から見たバリューもある。普通の308ハッチバックではリアシートのスペースに不満があるというカスタマーにとっては、ニールームが広い308SWはワゴンであることをさておいても選ぶ価値がある。今回ドライブしたGT-Line Blue HDiのような小排気量ディーゼルは今や貴重な存在となりつつあるため、実用ディーゼルに乗ってみたいという人にも良い選択肢となるだろう。

競合しそうなのは内外のステーションワゴン。一番の強敵は前出のゴルフ・ヴァリアント、なかでも専用のスポーツサスペンションを装備する「R-Line」であろう。次点はルノースポール謹製の足回りを持つ『メガーヌ・スポーツツアラーGT』か。308SWの最大のアドバンテージはディーゼルを選べるということと価格。ディーゼルの308SW GT-Line Blue HDiをガソリンターボのゴルフ・ヴァリアント R-Lineよりも安く買えるのだ。

日本ではステーションワゴン需要が下火ということもあって、日本車で直接競合しそうなモデルは少ない。あるとすればスバル『レヴォーグ』。マイナーなモデルであるが、ホンダ『ジェイド』に最近追加された5人乗り2列シートモデルも、フロントシートの座面が短くて長距離向きでないものの、面白いかもしれない。

夕日を浴びたときのグラデーションは素晴らしいものがあった。パールマイカの微細度がよほど高いのだろう。

《井元康一郎》

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