【日産 リーフe+ 4200km試乗】充電回数が半分に、ストレスは10分の1に。弱点はあるか[前編]

日産 リーフe+ のフロントビュー。山口県の山中にて。
日産 リーフe+ のフロントビュー。山口県の山中にて。全 36 枚写真をすべて見る

日産自動車のCセグメントコンパクトBEV(バッテリー式純電気自動車)、『リーフe+』で4200kmほどツーリングする機会があったので、インプレッションをお届けする。

リーフe+は現行の第2世代リーフのバッテリー増載型。バッテリーパックの総容量は標準の40kWhに対して62kWhと、約1.5倍に。満充電時の航続距離は新しいWLTCモードで458kmと、かなり魅力的な数値になった。バッテリー容量だけでなく主基となる電気モーターもスペックアップ。定格出力は従来型と同じ85kW(116ps)だが、最高出力は110kW(150ps)から150kW(218ps)へと36%も増強された。ネガティブ面は重量で、e+は標準型に対して160kg増。試乗したトップグレード「G e+」の空車重量は1680kgに達する。

試乗ルートは東京~鹿児島間の周遊。往路は東海・山陽ルートで九州入り。岐路は広島の尾道からしまなみ海道経由で四国に入り、今治から香川の琴平、徳島の阿波池田、大歩危渓谷を経て高知市、室戸岬、徳島の鳴門へ。その先、淡路島から明石海峡大橋で本州に戻り、新東名経由で東京に戻る――というもので、総走行距離は4192.4km。おおまかな道路比率は市街地2、郊外路4、高速3、山岳路1。1~4名乗車、エアコンAUTO。

インプレの前にリーフe+の長所と短所を5つずつ挙げてみよう。

■長所
1. 航続距離延長の効果は絶大で、長距離走行時の注ぎ足し充電のストレスが激減した。
2. 新型の出力90kW充電器を使うことができる。
3. 40kWhモデルに対してバッテリーの熱だまりが大幅に軽減された。
4. 重量増をものともしない加速力の高さと操縦安定性の良さ。
5. 思ったより小回りが利き、また車両の見切りも良い。

■短所
1. フットブレーキのフィーリングが激悪。
2. 高速連続走行のさいにはバッテリー冷却システムなしの弱点が顔を出す。
3. 航続距離の絶対値は増えたが、1kWhあたりの走行距離は短くなった。
4. 航続距離が延びたことでシートの出来が平凡であることが露呈。
5. 価格。

想像以上の満足感

日産 リーフe+。横浜の日産グローバル本社にて。旅の始まりである。
筆者はこれまで2014年に旧型24kWhモデルでの奥会津~日光~房総を巡る1000km、2016年に旧型30kWhモデルでの米沢~横手~花巻を巡る1200km、昨年2月、現行40kWhモデルでの横浜~鹿児島3300kmと、3度ロングドライブを行っている。それらと今回乗ったe+との最大の差分は、ツーリングの自由感だった。

今回の往路は前回の3300kmツーリングとほぼ同じ、東海道、瀬戸内経由の高速・一般道混合ルート。前回は寒冷期ということもあって、30分1セットとして鹿児島到着までに延べ15セットの急速充電を行った。それに対して今回は、高出力の90kW急速器を3回使ったこともあって、7.5回と文字通り半減した。

充電回数が半分になったことで、充電で足止めを食うストレスも半分になったか。否、半分どころではない。気分的には10分の1になったというところである。もちろんまだまだ発展途上の技術であり、復路では弱点をさらけ出したシーンもあったが、このくらい走れば自分的にはとりあえず満足。「ほう、なかなかやるじゃないか」という印象であった。

そういう満足感を抱くことは、ドライブ前は想像していなかった。充電回数が半分になればストレスもそれに比例して半分になるであろうと考えていたからだ。だが、ストレスの源泉である不満感というものは、一定ラインを越えると急に満たされるという性質がある。BEVの航続距離や急速充電の受け入れ性もまたそうであった。

愛知西部の一宮でお楽しみの出力90kW新型充電器を初使用。計算上はタイピカルな44kW充電器の2倍の性能ということになる。
充電回数が減ったことで、今回のドライブは今までの3回のドライブと感覚がまるで違うものになった。「BEVでも根性さえあればロングドライブくらい簡単!!」というハードボイルド、言い換えればやせ我慢の美学はもはや必要なくなった。EVビジネスをきっちり回していくには、充電設備の回転率を上げるためにチャージの時間を大幅に短縮しなければ話にならないし、台数が増えればチャージポイントも現状ではとても足りない。クルマ単体でもコストを劇的に落とし、耐久性も上げなければいけない。

だが、BEVの普及を阻む第一要因であった航続距離問題は、このリーフe+くらいのレンジを境に急速に解消していくのではないかという予感めいたものを覚えた。

バッテリー増載のメリット

日産 リーフe+ のサイドビュー。一般的なエンジン車とほとんど変わらないフォルム。
では、その横浜~鹿児島までのドライブのイメージをお伝えしよう。横浜の日産本社でクルマを借り受け、そこから西にスタート。保土ヶ谷バイパスから東名高速に乗り、御殿場で新東名へと分岐。新静岡インターから島田金谷インターまでは前回の3300kmドライブ時の110km/h制限とは異なり、120km/h制限。BEVは走行抵抗が高まる高速巡航を苦手とするが、おかまいなしに全区間最も速い流れに乗って走った。

島田金谷インターからは国道1号線のバイパスに移動して西進を続け、天竜川を渡る手前の磐田に達した。スタートからの走行距離は222.7km。40kWh版リーフはここでバイパスから下り、残り4%の状態で1回目の充電を行ったが、e+はまだ40%も残っている。そのまま通過して浜松から愛知の豊橋~蒲郡と進み、333.1km走行地点の三河安城で第1回目の充電を行った。電力残は10%で、実航続距離は前回の1.5倍をやや上回る計算であった。

ちなみにそこまでのコンディションだが、気候的には寒冷期だった前回と比べると有利な半面、前回は最初の区間のみエアコンをオフにしていたのに対して今回は最初からエアコンを盛り盛りに作動させ、平均車速も高速、バイパスともずっと高いというハンディもあり、総体的にはおおむね対等な条件と言えるだろう。オンボード上の平均電費は前回の6.7km/kWhに対し、6.7km/kWhだった。もう少しのんびり走れば、名古屋市街まで十分無充電で走りきることができそうだった。

333.1km走行地点、愛知の三河安城初回充電。名古屋市まで十分に届く航続性能であった。
三河安城では日産ディーラーの出力44kW充電器で30分充電。充電前にバッテリーの温度計を見てみたが、高負荷で走るシーンが多かったわりにはバッテリー温度は上がっておらず中立。バッテリーのセル数が192個から288個へと1.5倍になったため、セル1個あたりの負荷はアベレージで3分の2になる。発熱量は3分の2の2乗で9分の4。重量増で発熱量が高まる領域に入る時間が長いことを勘案しても、熱量は40kWh版の6割くらいと推測される。

バッテリー増載のメリットは急速充電時にも表れており、バッテリー温度の上昇は40kWh版よりずっと小さい。通電電流は充電開始時の107アンペアが最後まで保たれ、推定充電電力量も40kWh版より多かった。ただし、バッテリー容量が大きいため、充電率は10%から43%まで、34%ぶんしか回復しなかった。バッテリー残量が少ないときは電圧が低いため、もう少したくさん残っている状態で充電したほうが30分での充電電力量を稼ぐには有利だろう。

往路で7回半の急速充電

航続残表示が簡単に300km台に乗るのは何とも喜ばしかった。飛ばすともちろんこの数値ほどには走れないが、40kWh版に比べると数値の信頼度はかなり上がった。
航続距離残表示が45kmから185kmに増えた状態で翌朝スタート。途中、名古屋美術大学で行われていた創作織物展を見るなど、混雑した市街路を寄り道しながら64.5km走行し、新型の90kW充電器がある愛知西部の一宮に達した。充電率26%で充電を開始。充電器のメーターを見ると…おおおっ200アンペア出てる!!!107アンペアの2倍近い数値だ。過去に充電で散々苦労しながらの長距離ツーリングを試したことを思い返すと、感動的ですらあった。

もっとも電圧のほうは358ボルト。掛け算すると出力は約72kWである。そうかー90kWを得るためには充電電圧450ボルトのバッテリーを使わなきゃいけないわけねと、さらなる改善を望みたくなったのも事実である。

この新型充電器による充電では、さすがに初期の200アンペアのまま完走することはできなかった。開始後8分ほど経過してから180アンペア、170アンペア…と、徐々に電流は落ちていく。充電終了直前においてはちょうど100アンペアであった。バッテリーの温度も44kW充電と違ってかなり高温側に振れていた。それでも充電電力量は28.7kWhと、十分に満足できる値。平均電費7km/kWhで走れば200kmぶんはある。充電率は55%回復して81%、航続残表示は112kmから335kmとなった。

滋賀県の古戦場、関ヶ原にて記念撮影。
一宮からは岐阜の関ヶ原、滋賀の彦根を経由して京都から丹波高地を経由し、一宮と同じ90kW充電器がある兵庫県の姫路へ。マイレージは245.7km、平均電費7.1km/kWh、バッテリー残量15%。充電を始めてみると、今度はフルスピードに満たない157アンペアでのスタート。急速充電を繰り返すと充電受け入れ性が落ちるという特質は40kWh版リーフと変わらないようだった。

それでも、ロングレンジ化で充電のインターバルが長くなったこととバッテリーの発熱量低下の相乗効果か、40kWh版に比べるとバッテリーの冷えはいい。終了直前の電流は98アンペア、充電電力量表示は25.3kWh。最初が悪かったわりにはまあまあである。ちなみにこの姫路では、試しに連続充電をやってみた。が、終了時の98アンペアに対して2度目のスタート時は70アンペア。まったく非効率的であることを確認し、すぐにやめた。充電量65%、航続残表示267kmでスタート。

次は広島の90kWh充電器を目指して山陽道と国道2号線を交えて走ったが、188.6km地点の三原で充電残15%、航続残66kmと、電力が少し心もとなくなったため、44kW充電器で15分、10kWhぶんドーピング。広島市西部の90kWスポットには274.4km、充電残13%、航続残54kmで到着。153アンペアスタート、95アンペアフィニッシュ、充電電力量25.1kWh、充電率59%、航続残240kmに回復してリスタート。

187.5km走行地点の関門海峡手前、長府の44kW充電器で30分充電し、充電率11→45%、航続残51→182kmに回復。そこから112.4km先にある90kW充電器設置拠点、久留米の日産ディーラーに到着した。水害で旧型充電器がダメになり、どうせならと高速機を入れたのだという。144アンペアスタートの91アンペアフィニッシュ、充電電力量は23.4kWhとちょっと振るわなかった。ここでも注ぎ足しを試してみたが、2回目は60アンペアスタート。おかわりが非効率的なことは確定的だ。充電率18→66%、航続残表示76→267km。

北九州・門司港レトロにて記念撮影。
最後のウェイポイントは九州道および南九州道経由で187.2km南下、熊本-鹿児島県境の先にある出水の44kW充電器。12→38%、航続残表示55→158kmに回復させ、周遊を含め114.1km先の鹿児島の90kW充電器に充電率11%、航続残49kmで滑り込んだ。

以上が往路における7回半の急速充電器の全記録である。長々と書くといかにも大変そうに見えるかもしれないが、先に述べたように、体感的には前回の15回充電とは比較にならない楽さであった。高速な90kW機を使えるというだけでなく、40kWhリーフが急速充電を繰り返すと音を上げていたのと異なり、バッテリー温度が多少高い状態でも44kW充電器の出力を30分間、ほとんどフルで受け入れられたのが大きく貢献した。

e+に弱点はあるのか

日産 リーフe+のエンジンベイ…と言っても入っているのはモーターやパワーコントロールユニットだが、小型のエンジンなら収められそうな気もした。
BEVを語る時、「どのみち休憩するのだから、充電時間は気にならない」という論法が使われるが、これまで筆者はその意見に与する気にはならなかった。バッテリーに熱がたまるにつれて1充電あたりの走行距離がどんどん短くなるため、超ロングドライブでは休憩したくもないのに30分足止めを食うような感覚があったからだ。

だが、今回の往路くらい充電の受け入れが安定すると、休憩がてらの充電時間という話が詭弁に感じられなくなる。もちろん感じ方は人それぞれであろうが、ロングドライブに慣れたほうだと自任している筆者の体感は、多くの人も共有してもらえるものではないかと思った次第だった。

バッテリーの大容量化は、日常的なBEVの使用感をも変えるものだと思われた。鹿児島での運用拠点は充電設備のない実家。40kWhリーフのときは、遠出の用件が発生したときに備えてしょっちゅう充電に出かけないと不安で、実際そうしないと運用に支障が生じることもあったのだが、e+はそういうプレッシャーが激減。残量が少なくなってきたらおもむろに充電に出かけるというスタイルで事足りた。鹿児島市街に90kW充電器があったことも、利便性をいっそう高めた。もちろん実家でフル充電できれば、超ロングドライブ以外は何の問題もなく使えるであろう。

バッテリー温度が上がった状態では30分で13kWh弱しか入らない。帰路の東名、新東名は4200kmツーリングの中で唯一、性能に不満を持った区間であった。
では、e+に大きな弱点はないのか。実は4200kmツーリングの終盤にそれをたっぷり味わうシーンがあった。バッテリーの発熱量が大きく、冷える間がない長時間の高速連続走行には心底弱い。徳島から神戸淡路鳴門自動車道~阪神高速・西名阪、名阪国道と進んで東名阪自動車道の三重・御在所サービスエリアの50kW急速充電器で充電。最大電流125アンペアは、日産ディーラーなどにある44kW充電器に比べると若干速いと踏んでいたのだ。

充電電力量は21.1kWh。読みどおり、1割くらいはいい値だ。が、バッテリー温度を見て青くなる。90kW充電器と変わらないくらい上がっているではないか。しかも天候はBEVが苦手とする豪雨で、電費も悪い。水溜りを通過するたびに盛大に巻き上がる水しぶきでバッテリーが冷えないものか…と思ったが、それがダメなことは40kWリーフや今回の鹿児島出発時の豪雨の中で検証済み。

高速道路主体だとバッテリーが冷えないのでこの先どうかなーと思いながら先を急いだが、案の定愛知の音羽蒲郡では16.5kWh、静岡サービスエリア以降は13kWh弱しか入らなくなり、足柄サービスエリア、海老名サービスエリアと、主要なサービスエリアに30分間各駅停車という有様。バッテリー増載で発熱が抑えられるようになったとは言っても、無力なシーンもあるというのではBEVに寄り付いたユーザーをがっかりさせる要因になりかねない。次はやはりバッテリーの放熱システムを実装していただきたいものだと思った。

が、最後の高速連続走行を除けば、四国の山深いワインディングロードを含め、ほぼパーフェクトにドライブを進められたe+。インフラを含めるとまだまだ目鼻もついていない状況のBEVだが、将来の展望が何となく見えた気がした旅になった。

桜島をバックに記念撮影。背後の浜は海水浴場。

《井元康一郎》

この記事の写真

/

ピックアップ

Swipe

Next
/article/2019/10/05/327253.html/article/2019/10/05/327252.html/article/2019/10/05/327254.html