多様なモビリティへの挑戦 25km/h制限の「低速eモビリティ」の法整備を…glafit代表取締役CEO 鳴海禎造氏[インタビュー]

多様なモビリティへの挑戦 25km/h制限の「低速eモビリティ」の法整備を…glafit代表取締役CEO 鳴海禎造氏[インタビュー]
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日本には存在しないような多様なモビリティが世界には存在する。暮らしを支え、豊かな社会にするためには、時代に合わせたモビリティの法整備が必要だろう。

日本を代表する次世代乗り物メーカーになるという100年ビジョンを掲げるglafit(グラフィット)代表取締役CEOの鳴海禎造氏に、多様なモビリティへの挑戦を聞いた。

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グラフィット社は「自転車×バイク(原動機付自転車)」の両者を掛け合わせたハイブリッド走行が可能な次世代モビリティ「GFR-01」で、クラウドファンディングとしては国内最高額となる1 億 2800 万円以上を集め、2019 年にはヤマハ発動機と資本業務提携を発表。2020年には次世代のプロットタイプの発表を控えるなど、いま注目のモビリティメーカーだ。

2019年10月17日に内閣官房の新技術等実証制度(「規制のサンドボックス制度」)の認定を受け、2020 年1月まで和歌山市内の公道を実証エリアとして、人力と電動モードを切替可能なハイブリッドバイクの走行実証を実施する。

日本の自転車の進化はユニーク

---;日本の自転車の進化を改めて振返りましょう。

鳴海氏;日本には独自の「自転車」の定義があります。漢字の意味の通り、“乗る人自ら”がこぐ乗り物が自転車なんです。実はこのような整理をしている国は珍しいんです。

戦前に自転車にエンジンを付けた「モペット」が登場。戦後に本田宗一郎さんもエンジン付き自転車「バタバタ」を作り、1947年に市販の自転車に取り付け可能な自転車用補助エンジン「ホンダA型」が販売されロングセラーとなりました。自転車よりも簡単にスピードが出て、自由走り回れるので、女性にも非常に喜ばれました。

しかし、このような自転車にエンジンがついた状態の自転車扱いで、運転免許証のない状態で多くの人が乗ったので、交通事故が増えたり、交通が乱れてしまいました。そこで自分でこぐものが「自転車」、原動機が付いたものが「原動機付自転車」という整理になったようです。

---;エンジンの付いた自転車「バタバタ」は日本ではすっかり見なくなりましたが、欧州ではLカテゴリーの「モペッド」として、最近では変わりつつありますが運転免許に対して寛容な国もあるようです。グラフィットさんの「GFR-01」はこの日本の自転車と原付との空いた穴をついたわけですね。非常に興味深いです。

---;日本の電動アシスト自転車のはじまりは?

鳴海氏;ヤマハ発動機さんが26年前に自転車に電気のモーターを付けました。

ヤマハさんは、電気のモーターがついているけど自転車ですとい言いたかったのだそうです。しかし警察から、自分でこがないなら自転車ではなく、原付だと言われたのだそうです。自分でこぐなら自転車の延長になるので、その折衷案として電動アシスト自転車となったわけです。

---;日本の電動アシスト自転車はどうなっているのですか?

鳴海氏;電動アシスト自転車は、自転車のこぐことに対してモーターが作動してアシストできる上限は時速24kmです。そしてアシストするモーターの力は、自転車をこぐ人の足の力をトルク感知で測って、その人の足の力の2倍まで(アシスト比率)と決まっています。

残念ながら海外の標準は時速25kmで、時速24kmではないんです。

---;この日本の電動アシスト自転車は、e bike(イーバイク)が世界で人気になる以前から爆発的に販売台数を伸ばしましたが、残念ながら世界標準になっていません。日本ではスポーツタイプの電動アシスト自転車を総称してe bikeと呼ぶことが多いようですね。

欧州の電動アシスト自転車はおおよそ3つのタイプに分類している国が多いですし、時速25km制限のところが多いように思います。中には時速25km以上出るもの(要ヘルメットなど)もありますね。

鳴海氏;国によって考え方が異なりますが、欧州はおおむね“速度”でリミットをかけています。欧州では時速25km以下にリミットをかけているものを自転車としています。日本のように自分でこぐことに対してこだわっていません。またアシストするモーターの力は、日本では自転車をこいだ人の足の力の2倍と決まっていますが、欧州では決まっていない国もあるので何倍でもよいのです。ペダルをこがずにハンドルのスロットルを回すことのできるものも自転車も中にはありますね。中国やアメリカも同様の考え方です。

グラフィットの「GFR-01」は、日本では自転車とバイクを組合わせた原付扱いですが、欧米では自転車になるんです。

---;日本ではグラフィットの「GRF-01」は自転車にもなるし原付にもなります。原付になってしまうため、自転車専用通行帯や歩道を走れないという制約がありますね。

国内の移動手段の実情や海外の多様な移動手段の車両を見ていると、自転車、モペッド、原付、eバイク、電動キックボードあたりの低速モビリティに非常に可能性を感じています。

海外の電動モビリティの販売店のサイトを見ていると、e bike、電動キックボード、電動バイクが一緒に取り扱っているところもあります。自転車、e bike、電動キックボード、電動スクーターで同じくらいの速度のものは自転車道を走行し、それ以上のものは車道となっているようなところも多い気がします。

時代に合わせた多様なモビリティを創造するための法整備を

鳴海氏;モビリティの枠組みを作っているのは法律です。多種多様ではないようにしているのは法律ですし、多種多様にしているのも法律です。

eバイクや電動キックボードなど、世界的に新しい流れができています。時代に合わせた法律に変えていく必要があると考えています。一つは“速度”で枠組みを整理する方法でしょう。
欧米などと同様に制限速度を時速25kmにした運転免許不要の「低速eモビリティ」のカテゴリーを作ってはどうでしょうか。

自転車や電動アシスト自転車という日本で独自の進化を遂げた規格が参入障壁になってきていました。速度で制限するようになると、その参入障壁がなくなるわけですから、中国やヨーロッパから日本には存在しない多様なモビリティが入ってくる可能性もありますね。

---;速度で制限するということは、二輪のみならず三輪や四輪のモビリティも生まれそうですね。しかし一方でグラフィットにとって不利になることもあるのでは?

鳴海氏;グラフィットが注目されている理由は、日本のガラパゴスの穴を突いたからです。みずから参入障壁を取っ払ってしまうことにより、競合相手を増やすことなります。諸刃の剣ですがそこにチャレンジしたいと思っています

鎖国する時代ではないという前提があれば、逆に日本で開発したものを海外輸出することができるようになり、産業が活性化するかもしれません。

---;時代に応じたモビリティが足りないと感じています。新しい法律の整備により、潜在的な生活者のニーズをくみとった多様なモビリティが生まれることを期待します。またそれと同時に道路インフラの整備も重要ですね。

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《楠田悦子》

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