継承と超革新を同時に、スバル レヴォーグ コンセプト…東京モーターショー2019[インタビュー]

SUBARU商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの五島賢さん(右)と商品企画本部デザイン部主査の中村真一さん(左)
SUBARU商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの五島賢さん(右)と商品企画本部デザイン部主査の中村真一さん(左)全 8 枚

SUBARU(スバル)は東京モーターショー2019に次期型『レヴォーグ』のコンセプトモデルを出品した。その開発テーマやデザインの特徴について、それぞれの担当者に話を聞いた。

継承と確信をテーマに

レヴォーグコンセプトの開発テーマについてスバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの五島賢さんは、「継承と革新」だという。この継承はレガシー、遺産、受け継ぐものとして、「『360』、『1000』、『レオーネ』、『レガシィ』、そしてレヴォーグと続いてきたグランドツーリングの思想を継承し、より遠くへ、より速く、より快適かつ安全にということだ」と話す。そしてこれが「スバルの価値そのもの」と述べる。

そこをベースとして継承した上で、革新は、「初代レヴォーグも革新スポーツツアラーとして、かなり新しい要素を入れていたが、新型はそれを超えなければならない。なぜならお客様の期待は初代レヴォーグをさらに超えて来るからだ」とし、五島さんは、「“超”革新、革新を超えろ。それだけ新しいものもグランドツーリングの思想を継承した上で、すごくたくさん投入した」と語る。

新開発のアイサイト

その超革新について五島さんは、「プロトタイプとしていえるところは大きく3つある」とし、「先進安全と、スポーティ、そしてデザインだ」という。

先進安全では、まずアイサイトを挙げる。フロントウインドウから見えるカメラの取り付け方法が変更されており、「これは新開発のカメラがより広角になったことで、より広い範囲のものを捉えることから、いままでの位置ではなくガラスに貼り付けるタイプに変更した」と説明。

それだけではなくレーダーも採用。「スバルビークルディテクション(後側方警戒支援システム)と同じようなものもフロントに取り付けた。それによって360度センシングを行っている」と五島さん。

これにより、ステレオカメラと4つのレーダーによるセンサーフュージョンにより、「交差点で広角のカメラのさらに外から直角で来るようなクルマもレーダーで捉えることで、よりぶつからない技術、ブレーキアシストの技術を高めている」とのことだ。

もうひとつ先進安全としては、高精度マップと地図ロケーターを搭載。「現在のツーリングアシストもアクセルとブレーキ、ステアリング操作などを行い追従性は高いが、首都高などで少し速度が速いとキャンセルしてしまうこともある。しかし、新型の場合は地図を搭載しているので前にあるカーブに対して速度が速すぎれば自動的に減速する」と五島さん。同時に渋滞時のハンズフリーも装備され、「苦手なところや疲れているときにアシストして、少しでも楽をしてもらいたい」と採用への想いを述べた。

1.8リットルエンジンを搭載

次にスポーティ面では新開発の1.8リットルの直噴ターボエンジンが搭載される。「このウリは動力性能で、パワーというよりはトルクの太さだ」と五島さん。「例えば高速道路などで80km/hから100km/hに加速する際には、すごく豊かなトルクを感じるだろう」。また、「リーン燃焼により、特に街中での低速燃費、環境性能を上げることで、走行性能と両立したエンジンに仕上がった」とこの高い完成度をアピールした。

レヴォーグにはこれまで1.6リットルと2リットルのエンジンラインナップが存在したが、「“現段階のリリース”は1.8リットルのみとなっている。このエンジンの位置付け1.6リットルと2リットルの両方合わせたのではなく、1.6リットルの後継だ」とした。

もうひとつスポーティにつながる要素として、『インプレッサ』から始まったスバルグローバルプラットフォームを使い、そこにフルインナーフレームを採用したことにある。これは、「骨格を組み上げた最後に外板、アウターパネルを貼り付ける手法だ」と五島さん。「北米のレガシィで採用した技術で、国内工場ではこれから投入する」。そのメリットは、「よりねじり剛性を上げることが出来、いま以上にスポーティであるとともに、かなり上質な乗り心地を実現。操安性と乗り心地がかなり高いレベルで両立しており、個人的には2ランクぐらい上がった印象だ」とのことだ。SUBARU レヴォーグコンセプトSUBARU レヴォーグコンセプト

格好良さとレヴォーグの個性

最後はデザインだ。同社商品企画本部デザイン部主査の中村真一さんも、伝統と継承になぞらえ、「伝統はレガシィツーリングワゴンの血を受け継ぐレヴォーグとして、お客様のマインドの中に、単純に格好良さがある。そこはしっかりと受け継がなければいけない」という。

そして革新では、「スバルのデザインとしてこれまで取り組んできたのは、安心と愉しさというスバルがお客様に提供する価値を、デザインを通じてどうやって表現していくかが命題だった」と述べる。そこを、「これまではダイナミックソリッドという言葉で伝えてきたが、要は一目で見てスバルが来た、スバルだとわかるデザインを採用してきた」

その結果、「お客様からスバルだとわかってもらえるようになったが、若干それぞれのクルマの個性が少し見え難くなってきたという意見も出始めた」と分析。「我々としては近づけたつもりはないが、お客様から見たときになんか似ているよねとか、なんとなく個性が少ないねという声が出たことから、それぞれの個性をしっかり出していかなければいけない」と、スバルデザインの新たな方向性を示唆し、レヴォーグコンセプトは、「この考えを取り入れ、大胆に個性を出していこうという取り組みだ」と話す。

ヘキサゴングリルを立体的に構成

そこで、具体的に3つのポイントが挙げられた。ひとつは全体的なフォルムのあり方として、「このクルマには、乗って走っていきたいと思わせるパフォーマンスとスポーティさが必要なので、それをデザインでは前傾姿勢によって表現している」。次に動的なインフォメーションを伝えたいと「フェンダーが張り出し、タイヤが地面をぐっと踏ん張って見えるように、前後のフェンダーをボディから張り出しているように見せている」

最後はヘキサゴングリルをより立体的にデザインし、「ここから始まる形がボディの側面を通って後ろに抜けるイメージ」だという。中村さんは、「これまではまず顔を作り、その上に六角形を後から付けても可能な形だったが、今回はこのヘキサゴングリルから全ての形が始まるようかのような立体構成にしている。これが個性をしっかり出すという大胆な造形処理につながっている」と説明した。

そして、今回のレヴォーグプロトタイプはこの表現を採用しているが、「『フォレスター』であればフォレスター、インプレッサであればインプレッサと、それぞれの個性に合わせて表現していく」と述べた。

ホイールアーチは特徴的

サイドビューのキャラクターラインに関しても特徴的だ。中村さんは、「サイドもフロントも基本的にはつながっているデザインを考えていて、グリルから始まったキャラクターラインはヘッドランプの中を貫いてサイドに周り込むことを意識してデザインした」

またフェンダーが盛り上がっているところに付けるキャラクターはよりRを大きくすることで、「力強さを表現し、キャラクターの強さ、シャープさを変えている」という。

さらに先ほど述べられたフェンダー周りではホイールアーチの形状にも特徴が表れている。これまでは、タイヤを反復したような切り取り方だったものから、このレヴォーグからは、「より前傾姿勢を訴えかけるような、前に走っていくんだということを、お客様に伝えやすくするための形状を作り上げた。そういったところも今回新しく取り入れた特徴的なところだ」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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