ZFの先進技術を乗って検証! レベル2+自動運転や周波数感応式ダンパーを体感

ZF 「Vision Zero Days Japan」(2019)
ZF 「Vision Zero Days Japan」(2019)全 26 枚

大手サプライヤーZFの日本法人であるZFジャパンは富士スピードウェイで「Vision Zero Days Japan」を開催した。これは交通事故ゼロと地球にやさしいゼロ・エミッションを目指すZF社の技術力をアピールするイベントである。

特設ブースに持ち込まれたのは、ZF社の新製品と近未来に実用化される新技術だ。また、同社の最先端ソリューションを搭載したプロトタイプ(試作車)と実際に採用した市販車の試乗も行った。

東名高速道路で自動運転のデモを実施

自動運転を見据えたADAS(先進運転支援システム)の開発に力を入れているZF社は、今回のイベントにバイワイヤ技術を用いた最新の自動運転車両を持ち込んできた。テストコースではなく実際に東名高速道路で走らせる。テスト車両のオペル『インシグニア』に搭載されていたのは、自動運転に向けたレベル2+を実現した自動運転技術、「co ASSIST」だ。部分的に自動化を実現したレベル2は、アクセルとブレーキの両方の操作を自動制御し、前を走っているクルマに追従して走行できることに加え、車線をはみ出さないようにアシストしたり、レーンチェンジのステアリング操作を自動で行ったりする。

レベル2+は、高速道路など特定の場所という条件付きだが、クルマが交通状況を認知し、ハンズオフ(手放し運転)や自動レーンチェンジなど、運転に関わる操作のほとんどを行ってくれるものだ。ハンズオフ・アシストの機能はレベル3に限りなく近い。

モービルアイ社製の処理チップを用いた単眼カメラ(画角100度)にレーダーを組み合わせ、全方位360度のセンシングを実現している。フロント側のレーダーはショートレンジのレーダーをクルマの左右に1個ずつ配し、前方中央にはミッドレンジのレーダーを組み込んだ。リアにはショートレンジのものを左右に1個ずつ配した。これらの採用によってステアリングやブレーキを自動制御すし、高速道路でのハンズオフによる追従走行や自動での車線変更、自動ブレーキなどを可能にしたのである。

降雨でも問題なくレベル2+の走行をこなす

この日は雨模様で、自動運転は難しいかと思ったが、東名高速道路では予想を上回る賢い自動運転を見せつけた。本戦に合流して自動運転モードのスイッチを入れると、カメラからの信号とレーダーからの信号を読み取り、道路状況を判断する。このことに加え、専用のマップシステムと連動させて走行中の車線変更や分岐を正確に行い、追い越し時の車線変更もアシストしてくれるのだ。

ドライバーが確実にステアリング操作できると判断すると、ハンズオフ機能を使った手放し運転を実行した。ワイバーを作動させていても、正確に制限速度を守り、前車を追従し続ける。横方向の制御に力を入れているようで、レーンキープ能力は高かった。前走車の追い越しやレーンチェンジもベテランドライバーのように上手にこなす。また、工事区間の手前で40km/hの表示が出ると、上手に減速を行った。

出口を告げておけば、インターチェンジの手前30mでウインカーを自動的に出し、減速して左側に寄っていく。もちろん、高速道路を出るときには、ここから先は自分で運転しろ、という表示が出される。ちなみにレーダーは180km/hまでの速度でセンシングを行うことが可能だ。カメラやセンサーを追加すれば、さらに精度は高まるという。

ZF社の自動運転技術、「co ASSIST」はスカイラインの「プロパイロット2.0」に近いシステムだが、カメラやレーダーの数が異なる仕様だ。リーズナブルに自動運転につながる運転支援システムを提供したいと考え、開発を行っている。将来的には工事区間が近づくとアラームで知らせたり、乗員の具合が悪いときはすみやかに停車させる機能も加えたいと開発者は述べていた。が、実際に同乗してみると、このシステムの量産化がかなり近いところにあると実感させられる。

もう1台のテスト車両、アウディ『A4』に採用されているのは、レベル2の自動運転技術だ。搭載しているのは、1基のカメラとミッドレンジのレーダーである。こちらは「co ASSIST」よりシンプルな構成で、クルマの前方を中心とした運転支援をリーズナブルに提供しようと開発された。前方の情報を上手に制御しているから、ステアリングから手を放しても安全に走り続けることができる。

自動車だけでなくオートバイまでも見分けられる優れたシステムで、滑らかで安心感のある追従クルーズを体感させてくれた。自動でのレーンチェンジ機能はないが、違和感のないスムーズな運転感覚は大きな魅力だ。

EVトラックやショックアブソーバーの技術を体感

これ以外では次世代を担う電動のEVトラック「CeTrax」とシャシーテクノロジーのひとつであるビークルモーションコントロールを採用したクロスオーバーSUVに試乗した。小型商用車をターゲットにしたCeTraxは、いすゞ製の小型トラックを改造し、EV化したものである。大容量バッテリーを搭載しているから重いはずだが、アクセルを踏み込むと一気に力強いトルクが湧き上がった。瞬発力は鋭いし、加速も豪快だ。それでいて静粛性はかなり高く、振動も出ない。

路面からの入力や速度によって減衰力を最適化する減衰力自動調整式のショックアブソーバーを装着したトヨタの『C-HR』にも乗った。このシステムを組み込んだクルマとないクルマの両方を試したが、その差は歴然だ。非装着車は継ぎ目や段差で不快な突き上げを感じたし、コーナーでの揺れも大きく感じた。

しかし、ZF社が開発したショックアブソーバーは、段差を乗り越えたときのショックは小さいし、不快な揺れも上手に抑え込んでいる。足の動きがいいことに加え、乗り心地もよくなっているから、クルマ酔いも大幅に減るはずだ。

《片岡英明》

片岡英明

片岡英明│モータージャーナリスト 自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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