欧州から日本へ まだ日本に存在しない空の移動を支えるインフラ企業を目指す…エアモビリティ 代表取締役社長 浅井尚氏[インタビュー]

欧州から日本へ まだ日本に存在しない空の移動を支えるインフラ企業を目指す…エアモビリティ 代表取締役社長 浅井尚氏[インタビュー]
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2019年8月、エアモビリティ株式会社が東京に設立された。イギリスに本社があるeVTOLメーカーVRCO社の日本での独占販売権も獲得した。Uberなど「空飛ぶタクシー」サービスや、Volocopter、Lilium等「空飛ぶクルマ」開発メーカーが海外の事業者として有名だが、VRCOという会社名は日本ではまだほとんど知られていない。

そのVRCOの日本における販売・営業を一手に担うエアモビリティ株式会社とは一体どのような会社なのか。他の中短距離の空の移動を手掛けている企業とはどこが違うのか。日本においてどこにチャンスを見出しているのか。今回まだ設立して5ヶ月のエアモビリティ株式会社の代表取締役社長の浅井氏に話を聞いた。

浅井氏は、 1月30日開催セミナー【MaaS2020】陸・海・空~ネットワーキングセミナー~に登壇する。

エアモビリティ株式会社とは何か

---:エアモビリティ株式会社とはどういった会社ですか?英国のVRCO社との関係についても教えて下さい。

浅井氏: 弊社の事業モデルのメインは、eVTOL(電動垂直離着陸機)のプラットフォーム事業にということになります。弊社は英国のVRCO社が開発する「空飛ぶクルマ」の独占販売権も持っていますが、それに留まらず広く「空飛ぶクルマ」に寄与できるようなインフラ事業を行います。弊社のスタンスとしては、全方位外交で自動車、航空機メーカーに使ってもらえるインフラサービスの展開を行いたいと考えています。

---:自動車・航空機メーカーに使ってもらうインフラサービスとは具体的には?

浅井氏: 今の時代、皆さんが自動車に乗ると当たり前のようにナビがあり、それを使って目的地まで移動すると思います。新しい「空飛ぶクルマ」で使用できる空のナビは現時点ではありません。具体的には空のナビのことで、空は3次元空間ですが、航行にあたっては飛んでいい場所、駄目な場所などルールがあります。弊社は現在この空のナビゲーションシステムを地図メーカーさんと一緒に開発します。出発地と目的地の2点間を決めたら、その航行可能なルートを設定し誘導するナビゲーションシステムです。このシステムは8~10年後に、空を使った自由往来の時代になると必要になると考えています。

---:空のナビゲーションを開発する際の課題は何でしょうか?

浅井氏: まずルートを設定するにあたっては国の認可が必要です。そのためにはリスクアセスメントをしなければいけません。その部分については損害保険メーカーさんと協力します。毎回同じルートを航行する定期ルートであればナビもリスクアセスメントも必要はないのですが、これから来る自由往来の時代には必要です。

---:やはり安全対策が「空飛ぶクルマ」という新しいモビリティが一般化するにあたっての最大の課題でしょうか?

浅井氏: はい。そのため現在、損保メーカーさんはリスクアセスメントの開発に力を入れており、リスクが高いところには高い保険をかけるなどの検討をしています。上空を航行される自治体も乗る人にもリスクに合わせて最適な保険を販売するなどのサービスが考えられます。

---:保険やリスクアセスメント以外ではどのような安全対策を考えられていますか?

浅井氏: 「安全巡行支援システム」も必要になります。突発性の外部要因、地震、竜巻、ゲリラ豪雨、ビルの火事など、安全に空を移動するにあたっては様々なリスク要因があります。上記以外でも例えば緊急事態が発生して自衛隊が出動したので、飛行禁止要請が来る時も想定しています。そういった情報を一元的に管理・発信するシステムをイメージしております。

それを「空飛ぶクルマ」を運行している自動車メーカーや運行事業者に発信します。一元管理された情報は、5Gのネットワーク経由で提供します。それ以外でも、気象情報(風速、風方向)などを分析して安全巡行を監視することも行います。この「安全巡行支援システム」は現在複数のメーカーさんと開発について協議を進めております。

「空飛ぶクルマ」のインフラ提供を目指す

---:御社は「空飛ぶクルマ」を販売するだけではなく、そういった他社にオープンに開かれた情報を提供することが他社との差別化となるんですね。

浅井氏: もちろん、VRCO社のeVTOL自体も販売しますが、弊社の考えでは、機体の基本性能は自動車・飛行機会社が検証・向上して機体を開発していますが、社会実装する段階で安全な運行をサポートするシステム・情報の提供も必須になります。その部分をサポートする情報を弊社が提供したいと考えております。

他にも、「クラウド管制システム(離発着誘導システム)」の開発も現在行っています。Vertiportと言われる「空飛ぶクルマ」着陸地点に機体が近づいて来た時に、Vertiportと交信し着陸の許可を取るシステムです。自由往来の時代には、複数の「空飛ぶクルマ」が同じVertiportでの着陸を目指しますので、それらを整理し、着陸順番をシステムでコントロールします。機体はその情報から所要時間を自動的に計算し、eVTOLそれぞれの環境を自動計算し、エネルギー設定を自動でコントロールするということになります。バッテリーの稼働時間もありますので、ずっと空で待つことはできません。そのため、効率的に発着順を自動的に決めるということが重要です。それにはVertiportとのコミュニケーションシステムが必要不可欠です。

弊社はこのようなインフラの提供に加え、バッテリーの充電、パイロットのライセンス取得など、eVTOLが潤滑に飛ぶシステム全体を提供することが狙いです。

---:「空飛ぶクルマ=eVTOL」が一般的な交通手段となる時代はいつ頃になると考えていますか?

浅井氏: 日本では経済産業省と国土交通省が合同で設立した「空の移動革命に向けた官民協議会」で設定されている事業開始の予定は2023年ですが、世界では2020年から実証実験が始まります。私の想定では、自家用車としての空飛ぶクルマが出てくるのは7~8年後だと考えています。

そのために日本における航空法も変わる必要があります。ドローン(高度150m以上の飛行)とヘリコプター(高度1,000m以上の飛行)の間に、空飛ぶクルマが位置づけられることになります。弊社としては、最初は1km 5,000円の運賃を想定しています。ヘリコプターよりも安くしないと意味はありません。私個人としては、世間のイメージとは違い、「空飛ぶクルマ」の時代は案外すぐに来ると思っています。

---:御社が提供する「空飛ぶクルマ」とはどのような機体でしょうか?

浅井氏: 弊社が提供する「空飛ぶクルマ」は、有人パイロットが操作する電動垂直離着陸機(eVTOL)です。完全自動での運用も視野には入っておりますが、かなり先になると考えております。弊社のeVTOLの特徴は、自動車で言うと超高級車のカテゴリーです。弊社が販売するVRCO社のeVTOL機の内外装デザインはベントレー社と共同で開発しておりますので高質な内装になります。弊社は機体のシェアサービスも行いますが、販売も行う予定です。販売価格は1機約2億円を考えていますが、この価格はジェット機よりも安い価格です。

日本での展開

---:今後の日本での展開についてはどう考えていますか?

浅井氏: 現在、国交省や経産省とも協議を進めています。まずは日本国内で実証実験、実証サービスをやらないといけないと考えています。例えば、現在ヘリコプターの送迎サービスを行っているところを弊社のサービスに変えて実証をするというような話も進んでいます。地方自治体の中にも実証実験の受け入れ先として手を上げていただいている所もあります。特に、三重県の鈴木英敬知事は前向きに検討いただいています。

---:東京での実証実験はやはり難しいですか?

浅井氏: 東京は規制が最大の壁ですね。羽田空港の周りも規制が多すぎます。ただ、東京にこだわる必要もないと考えています。日本は島国なので海に囲まれており、陸路でいくと山があり、移動が不便な場所も多くあります。そういった場所は「空飛ぶクルマ」での移動に向いていると思います。

空飛ぶロールスロイス

---:お話をお伺いしているとターゲット顧客はまずは初期段階では富裕層になりますか?

浅井氏: はい。初期のターゲットは富裕層になると思います。VRCOの最初の製品も超高級eVTOLになります。次のステップとしては4人乗りや6人乗りの機体も予定しており、これらは富裕層以外もターゲットとしております。

先程もお話したようにVRCO社の機体はベントレーと共同で開発しておりますので、イメージとしては「空のロールスロイス」と言えるものになると思います。2021年後半には、最初のVRCO社製の、ロールスロイス型二人乗りのeVTOLが発売を開始する予定です。リミテッドエディションとして、シリアルナンバー付きでの販売も考えています。弊社経由でも販売しますが、最初は日本というよりも、アジア圏で販売する可能性が高いと思います。

一般ユーザー向けには、現状では規制が整備されていないので、環境整備が整うまでは一般向けの販売は行えないと思います。弊社は日本だけを見ているのではなく、アジア含め海外市場にも可能性を見て取り組んでおります。

---:御社は機体の販売だけではなく、新しい「空飛ぶクルマ」のプラットフォーマーを目指しているということですか?

浅井氏: はい。弊社はプラットフォーマーを目指します。そのためには3つのレイヤーが考えられます。1つ目は、機体の販売、シェアサービスのレイヤーです。2つ目は、サービサーとしてのレイヤーです。例えばUberなどと提携し、実際のサービスを提供します。3つ目はプラットフォーマーとしてのレイヤーです。サービサーが運行できるためのインフラサービスを提供します。この業界に今はプラットフォーマーはいません。Uber Elevateや駐機場のネットワークなど、ある一部分に特化した会社などのサービサーは徐々に出てきています。

「空飛ぶクルマ」の社会実装に必要なプラットフォーマーに

---:プラットフォーマーとなるために既に関係するメーカー、業界との提携関係を進めているということですね。

浅井氏: 現在、日本を含めてグローバルでは機体の開発競争は激化していますが、弊社はそこはVRCO社に任せております。空のインフラ事業者として、地図メーカーや損害保険会社、損害保険会社と協業しております。「空飛ぶクルマ」は不動産とも相性が非常に良いです。

現在の開発目標は、連続飛行距離が約150kmです。高精度バッテリーの開発が進めば飛行距離はさらに伸びる可能性はありますが、弊社としては距離自体はあまり重視していません。なぜなら、飛行距離が伸びれば飛行機での移動でいいというように、移動の目的が変わるからです。弊社が狙うのはあくまでも、短中距離の移動です。乗客にしても、コックピットの中では立ち上がれないため、時間にして15~20分が限界だと考えております。

---:国交省、経産省など行政との関係はどうですか?

浅井氏: 経産省や国交省と話をしていると、自動車産業の次の新しい産業として「空飛ぶクルマ」に期待している認識はあります。ただ、機体の開発などはやる事業者はあっても、インフラをやる企業がいなかったため、弊社に対しては国としてもサポートするので、どんどんやってほしいと応援をいただいております。

---:日本で今後展開する上での課題はどのようなものがありますか?

浅井氏: 安全面をしっかりと担保すること、証明していくことが重要です。VRCO社のeVTOLは機体自体が軽量ですし、パラシュートが本体側についています。動力は4つのモーターで、ローター2個ずつ付いています。万が一の時は、パラシュートで不時着できる設計になっていますので、飛行機よりも安全と言えます。大切なのは日本人の疑心暗鬼をどう取り除くかだと考えています。eVTOLは安全な乗り物であることをどう理解してもらえるかが鍵です。行政としても現在は実証実験の招聘は国際都市間の力比べになっているので、産学官で協力して推進していくことが重要です。

Uberとも提携をしたい

---:御社の2020年の目標は?

浅井氏: 2020年中に日本で実証実験を始めたいですね。先程も出た三重県などでできると良いなと考えています。試作機も日本に持ってくるのに何億円もかかります。実証実験もそうですが、日本には海外ですでに開催されているUrbun Air Mobility Sumit(アーバンエアモビリティサミット)のようなものがまだないので、そういった展示会なども積極的に弊社が音頭を取って実施していきたいと考えています。Uberがもし日本でeVTOL事業を行う場合は、是非弊社と提携してほしいですね。

浅井氏が登壇する、 1月30日開催セミナー【MaaS2020】陸・海・空~ネットワーキングセミナー~はこちら。

《安永修章》

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