【池原照雄の単眼複眼】トップ10で成長確保はVWとトヨタのみ…苦戦目立った19年の世界新車販売

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首位VWなど上位10社の顔ぶれは変わらず

自動車メーカーの2019年における世界新車販売台数を連結またはグループベースで集計し、上位10社(グループ)をランキングした。各社の発表に基づくもので、一部は卸売りや出荷での集計となっている。

4年連続での首位に立った独VW(フォルクスワーゲン)をはじめ、10社の顔ぶれは18年と同じだが、トヨタ自動車がルノー・日産自動車・三菱自動車グループを上回って2位に順位を上げた。10社のうち前年比で台数を伸ばしたのはVWとトヨタのみで、米GM(ゼネラルモーターズ)など8社がマイナスだった。減少した企業は18年の3社から大幅に増え、中国など主要市場での減速と各社の苦戦ぶりが浮き彫りになっている。

2019年の世界販売ランキング(カッコ内は前年順位と増減率、▲はマイナス)
1(1)VW 1097万台(1%)
2(3)トヨタ 1074万台(1%)
3(2)RNM 1016万台(▲6%)
4(4)GM 771万台(▲8%)
5(5)ヒュンダイ 719万台(▲3%)
6(6)フォード 538万台(▲10%)
7(7)ホンダ 518万台(▲1%)
8(8)FCA 442万台(▲9%)
9(9)PSA 349万台(▲10%)
10(10)ダイムラー 334万台(▲0.2%)
*RNMはルノー・日産・三菱グループ

トヨタ・カローラツーリングトヨタ・カローラツーリング

19年の世界の新車需要は、2大市場である中国と米国、さらに3番手につける日本がいずれも前年割れとなった。09年に世界最大の新車市場となり、着実な成長を続けてきた中国は、28年ぶりのマイナスとなった18年に続いて市場が縮小、前年比8.2%減の2576万台となった。減少幅は18年の2.8%から拡大している。米国との通商摩擦を主因とする経済成長の鈍化が影を落とし、政府が普及を進める電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)も4.0%減の約120万台と、初めて前年実績を割り込んだ。

安定した成熟市場である米国は1.3%減の1704万台と小幅ながら2年ぶりのマイナスとなった。さらに、10月の消費税増税や同月以降の台風被害の影響が大きかった日本も1.5%減の519万台と3年ぶりに減少、それぞれ好不調の目安となる1700万台、500万台ラインは維持したものの、力強さを欠いた。

VWグループの本社VWグループの本社

欧州自動車工業会の集計によるEU(欧州連合)加盟28か国の乗用車販売は1.2%増の1534万台と、6年連続で成長した。だが、秋口以降は20年の環境規制強化を前にした駆け込み需要が顕在化しており、今後の反動減が警戒される。巨大新興市場の中国のみならず、日米欧の先進諸国も総じて厳しい展開となっている。

トヨタ、3年連続の過去最高で安定した成長力示す

トヨタ自動車、米インディアナ工場トヨタ自動車、米インディアナ工場

企業別の販売実績では、16年に初めて首位に立ったVWが1%増の1097万台と最高記録を更新し、4年続けてトップを維持した。最多のシェアをもつ中国では市場が落ち込むなか、売れ筋であるSUVの新モデルを拡充するなどで423万台(1%増)を販売し、世界首位堅持への原動力とした。

トヨタは1074万台(1%増)と4年連続でプラスとなり、3年続けて過去最高を記録した。毎年大きな伸びはないものの、5年連続で1000万の大台を維持し、重視してきた「持続的成長」を体現している。『RAV4』や『カローラ』といった新モデルが米国や中国など主力市場で好調に推移した。米国は小幅減だったものの、中国は10%増の162万台と前年に続いて過去最高を記録するとともに、初めて日本(161万台)を上回った。

ルノー・日産・三菱グループは、3年連続で1000万台ラインを突破したものの、小幅増の三菱自動車を除いて2社が前年割れとなり、グループでは6%減と苦戦した。3社でもっとも販売が多い日産自動車は、販売正常化に取り組む米国などでの不振が響き518万台(8%減)となった。ルノーは375万台(3%減)、三菱自動車は123万台(1%増)だった。

GM、フォードの米大手は3年連続のマイナスに

4位のGM、6位のフォードモーターの米国勢はともに3年連続でマイナスとなった。米中の通商摩擦による中国での販売不振が影を落としており、フォードは2年連続で2ケタのマイナス。また、GMは17年に不振の欧州とインドからの撤退を図ったこともあり、16年には1000万台に達していた世界販売は、17年に900万台ライン、18年は800万台ライン、そして19年は700万台ラインへと、毎年大台の下降が続いている。

5位の韓国ヒュンダイ自動車(キア自動車含む)は、3%減の719万台と2年ぶりのマイナスだった。このうちヒュンダイが6%減の442万台、キアは1%減の277万台となり、いずれも海外市場で苦戦した。両社は20年に合計で754万台(5%増)の販売目標を掲げている。

7位のホンダは、3年連続で500万台に乗せたものの、小幅ながら2年続けてのマイナスとなった。主力の米国は161万台(0.2%増)、中国は過去最高の155万台(9%増)と、両市場が落ち込むなか、いずれも2年ぶりのプラスと健闘した。しかし、部品の不具合で新モデル投入が遅れた日本は3%減と3年ぶりに前年割れとなった。

19年12月に合併で合意した8位のFCA(フィアットクライスラーオートモービルズ)と9位の仏PSAグループは、ともに落ち込み幅が1割程度と大きく、経営統合に向かわせた背景を浮き上がらせている。10位の独ダイムラーは、メルセデスベンツ乗用車部門が前年を約2700台上回る236万台と、9年連続で最高を記録した。しかし、ダイムラートラック部門は前年を6%下回り、全体ではわずかなマイナスとなった。

《池原照雄》

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