【ホンダ フィット 新型】機能的価値と感性価値は同じもの…開発担当[インタビュー]

ホンダ フィットHOME(左)とCROSSTAR(右)
ホンダ フィットHOME(左)とCROSSTAR(右)全 12 枚

ホンダ『フィット』の開発は大きく機能的価値の追求から感性価値へと転換した。なぜあえて新型では感性価値、“心地よさ”を重視したのか。その理由を開発担当者に話を聞いた。

本田宗一郎が掲げていた方針

ホンダ・フィットHOMEホンダ・フィットHOME

初代フィットをはじめ、歴代フィットは燃費や室内の広さなど、機能的価値を追求し続けてきた。その結果、センタータンクレイアウトをはじめ様々なアイディアを創出。これらは競合車とデジタルに比較出来るものであり、答えは明確だった。

しかし、4代目となる新型フィットは“心地よさ”という、人それぞれが持つ感性価値に重きが置かれた。ホンダオートモービルセンター第11技術開発室開発戦略ブロック主任研究員の奥山貴也さんは、まず機能的価値は、「MM思想(マンマキシム・メカミニマム)をはじめ、本田宗一郎が掲げていた方針で、昔から脈々と受け継がれている」という。

ホンダ・フィットHOMEホンダ・フィットHOME

しかしその本質的なところは、「今も昔も、お客様に日常生活で使ってもらい、本当にいいよねと思ってもらうことに変わりはない。そこで改めて機能性価値を整理し、4台目を開発した」とコメント。つまり、単純に数値を追い求めるのではなく、その機能に価値を持たせることでお客様は喜んでくれるかどうか。そこをもう一度考え、お客様が喜ぶものは何かから発想をスタートさせたのだ。

もともとフィットが機能性価値を追求したのは使い勝手などを追い求めた結果で、そのベースはお客様に喜んでもらおうというものだった。そこで、「心地いいという感覚性能を掲げて、いま一度初心に帰って改めて開発した。大きく舵を切ったというよりも改めて見つめなおしたのだ」と述べる。

ホンダ・フィットHOMEホンダ・フィットHOME

人研究から新たな調査手法を

奥山さんは、「機能的価値も感性価値も同じものでないといけない」という。これは特にコンパクトカークラスにおいては重要だ。なぜなら開発資源とサイズが限られているからだ。「作り手はそれぞれの領域のところはすごく頑張るので、新しいフィットではこういうことをやりたいという(機能的価値の)提案を色々してくれる。その時にプロジェクトチームのプロジェクトリーダーをはじめ我々は、そこをもう少し冷静に、一歩引いた形で資源の再配置をした」と述べる。

ホンダ・フィットHOMEホンダ・フィットHOME

その際に、ユーザークリニックの新しい調査方法を取り入れた。それはホンダが行っている人間研究から得た知見だ。通常のインタビューではなかなか捉えきれない本質的なもので、次に欲しいクルマのイメージに合う画像を多くの写真(風景など様々なもの)から選ぶものだ。ここからユーザーも捉えていなかったもの、本当に求めているものがわかってくるというのだ。そこから「リラックスや、癒しなどが浮き彫りにされ、心地よさがキーワードとして出てきた」と話す。そこで、フィットは心地よい視界、乗り心地がよい、座り心地がよい、使い心地がよいという代表的な4つを訴求展開したのだ。

迷ったら家に帰ろう

ホンダ フィットNESSホンダ フィットNESS

さて、フィットはHOMEグレードを中心に5つのグレードを展開している。その考え方について奥山さんは、「新型フィットのコンセプトを最も象徴しているのがHOMEだ。その名前の通り家。家では毎日寝て起きて過ごし、仕事から帰って来る拠点だ。そこには居心地のよさがすごく重要になる。そこでそういうクルマでありたい、そういうクルマであるべきだというイメージのクルマを作った」と説明。そして、「内装も含めて家にいるような感覚。4人の会話が弾むような空間や、ガラスも非常に大きく、外が明るければ光が自然に入り、また視界も広いので多くの情報量も入ってくる」とその特徴を語る。

そのHOME、家を拠点に、「フィットネスなどに行く際に家で着替えてから行く人もいるだろう。そういうライフスタイルを重視している方にはNESSを選んでもらいたい。週末にスノーボードなどに行かれる方はCROSSTARを。このように基本はHOMEをベースにそれぞれのライフスタイルで何を重視しているかから、直感で選んでもらえるようにしている」とし、「悩んだ場合にはHOMEに立ち返るのもいいだろう。実際の販売もHOMEが一番売れている」とコメントした。

ホンダ フィットNESSホンダ フィットNESS

このようにライフスタイルを重視してグレード設定しているが、今後、CROSSTARのエクステリアでLUXEの内装が欲しいという人も多様なライフスタイルを考えると出てくるかもしれない。奥山さんは、「その可能性は多分あるだろう。服や家のコーディネートと同じような世界観をクルマに取り入れたのは初めてのことだ。家具店などは単に展示しているだけでなく、ひとつのテーマでいくつもの家具をレイアウトしその世界観を表現している。まずはそういうイメージでスタートし、このグレードひとつひとつがフィットのユーザーの方に理解してもらえれば、今後、これとこれを組み合わせたスタイルがいいよという声に対して、そういった選び方が出来るように考えて行こうと思っている」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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