【ヤマハ セロー ファイナルエディション 試乗】「偉大なる先生」35年の“深化”をしみじみと味わう…青木タカオ

ヤマハ SEROW 250 FINAL EDITION
ヤマハ SEROW 250 FINAL EDITION全 31 枚

昨今のバイクは「これでもうお終い」「新車を手に入れる最後のチャンス」ということを意味する“ファイナルエディション”なるものが、最終イヤーに発売されることが多い。

【画像全31枚】

ロングセラーモデルとして名高い“セロー”も、ついに『SEROW250 FINAL EDITION』と名乗ってしまい、バイクファンはショックを隠せない。

初代登場は1985年、35年も前のこと。83年は二輪車販売台数328万5000台を記録し、空前のバイクブームの時代。スペック至上主義のレーサーレプリカが人気を誇り、それはオフロードモデルでも同じだった。そんな時代に『セロー225』は誕生。パワーや速さは追求せず、トレールランをエンジョイするマウンテントレールとして生まれた。

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『XT200』の空冷4スト単気筒をベースにボアを拡大し、223cc化した2バルブエンジンは新しさなどちっともなく、軽量化のためセルスターターも搭載されていない。初期型ではトランスミッションのギヤ比を、1速でスーパーローとしトライアルマシンのような走行も可能に。ハンドル切れ角も51度と広く、とにかく扱いやすい。

時代と逆行するフレンドリーさで根強い人気を誇り、いつの時代も愛された。ネイキッド、SRなどシングル、アメリカン、ストリートトラッカー、ビッグスクーター、どんなブームになろうと流されず、トレンドとは関係なくセローは生き延びてきた。

変わってないようで“深化”してきた35年

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89年にセルを標準装備し、91年に常時ライトオンに。93年にリヤブレーキをディスク化し、車名を『セロー225W』にすると、97年には燃料タンク容量を8.8→10リットルに増やした『セロー225WE』へ進化。

2005年には250cc化し、08年にキャブレターをフューエルインジェクション化。17年9月に生産終了がアナウンスされつつも、翌18年7月にキャニスター付き、テールランプをLED化した新型を発売し、絶版を免れた。

しかし2020年1月、国内最終モデル『SEROW250 FINAL EDITION』が発売される。“原点回帰”とし、初代の緑と赤のカラーリングを設定。カラーフレームは05年に250cc化したときに非採用となったが、これも手の込んだダブルコーティングで復活した。

変わらない魅力、それは急かされないこと

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もう幾度となく乗ったセローだが、いつ乗っても自在に操れる気がしてフレンドリー。まずコンパクトで軽量な車体が取っつきやすい。そしてオフロード車であるにもかかわらずシート高が低く、足つき性に優れる。重心が低く“二輪二足”という言葉が用いられるが、これは悪路も両足を使って切り抜けられるという意味。これまでセローでエンデューロなど競技にも何度も出場したことがあるが、雨が降ったり難コースになればなるほど「セローでよかった」と感謝したことが何度もあった。

低中回転域がトルクフルなセローは、街を流しても気持ちがいい。混雑していても、狭い場所もスイスイ行ける。トコトコと歩くような速さで走るのも難しくない。「速く走らない」「競わない」といった林道をノンビリ走るためのキャラクターは、都会のライダーにも歓迎される。

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唯一、高速道路は苦手。それは35年間、変わることはなかった。しかし、それでいい。急かされることなく、ゆっくりといけばいい。セローに乗ると、バイクでスピードを出し、万が一事故などにあったら元も子もないと考えがまとまる。大きく開けた右手のスロットルを戻し、小気味よいシングルエンジンの鼓動に耳を傾けようではないか。

オフロードの楽しさも教えてくれたし、バイクはスペックがすべてでないことにも気付かせてくれた。セローは偉大なる先生なのだ。

試乗記事も幾度となく書かせていただいたが、これもファイナルになるのは寂しいかぎり。まだもう少しだけ!長生きして欲しいと切に願う。

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■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★
足着き:★★★★★
オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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