「まち」の課題を解決する総務省のデータ利活用型スマートシティとは…総務省 地域通信振興課 課長補佐 齋藤洋一郎氏[インタビュー]

「まち」の課題を解決する総務省のデータ利活用型スマートシティとは…総務省 地域通信振興課 課長補佐 齋藤洋一郎氏[インタビュー]
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2020年4月17日に総務省のデータ利活用型スマートシティ推進事業に係る提案の公募が始まった。総務省のスマートシティの取組みについて、総務省情報流通行政局地域通信振興課課長補佐の齋藤洋一郎氏に聞いた。

齋藤氏は5月29日開催オンラインセミナー「スマートシティ2020」(参加費無料)に登壇する。

データ連携基盤構築により分野横断でデータ活用が可能に

---:これまでの総務省のスマートシティの取組みについて教えてください。

齋藤氏: 総務省では2012年頃からICT(情報通信技術)を活用した街づくりを進めています。最初は実証事業で、全国27カ所の地域で取り組んでいただきました。その成果を横展開していくため、2014年度の補正予算(2015年度から実施)から、実証事業で得た成果の普及展開に取組みました。こういった取組みは主に、鳥獣被害対策などの単一分野でICTやデータを利活用するものでした。

2016年度までは、そのような単一メニューを中心に進めてきましたが、今日では、総人口の減少や高齢化の進展、価値観の多様化等により、様々な課題が入り組んできています。単一メニューだけでは解決出来ない課題が顕在化してきていることから、より高次のICTを活用した街づくりを目指しています。

そのため、2017年度からは、ICTとデータを利活用し、そこに住む人々のQoLを高めながら都市のインフラ・サービスの効率的な管理・運用を実現することにより、街の課題を解決しつつ活力を高める「データ利活用型スマートシティ」の推進に取り組んでいます。

これまで、我が国においては、いわゆるスマートシティについて、政府各本部・省庁が、所管分野を中心に個別にモデル事業等を実施してきましたが、各事業の連携や分野間のデータ連携等があまり図れていない状況でした。そこで、政府のスマートシティに係る各事業の連携や分野間のデータ連携等を強力に推進するため、2019年3月、統合イノベーション戦略推進会議において、府省連携したスマートシティ関連事業の推進に関する基本的な方針とともに、内閣府、総務省及び国土交通省等が合同でアーキテクチャ(システム全体を俯瞰する設計図)構築のための検討会議を設置したほか、関係府省・官民が一体となってスマートシティの取組みを加速化するため、2019年8月、「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設立しました。

データ利活用型スマートシティでは、IoTデバイスやセンサーなどから取得できるデータをデータ連携基盤に集めて、サービスをアプリケーションとして提供します。データ連携基盤を構築することにより、APIを介して多様な主体が分野横断的にデータを活用できるようになります。

データ利活用型スマートシティ推進事業では、データ連携基盤や推進体制の構築などに対して2分の1の補助をしています。これまでのデータ利活用型スマートシティ推進事業の代表的な事例は、除雪作業効率化やインバウンド消費促進に取り組んだ北海道札幌市の事例、AIチャットボット導入や住民向けポータルサイト活用に取り組んだ福島県会津若松市の事例、災害対応の迅速化や観光振興に取り組んだ香川県高松市の事例、児童見守りやオープンデータのポータルサイト構築に取り組んだ兵庫県加古川市の事例などです。

中小規模の自治体に広めたい

---:今後力を入れていきたい点は?

齋藤氏:今後、生産年齢人口の減少や技術発展の加速化などにより、ますます効率化が求められる中小規模の自治体の取組みを増やしていきたいと考えています。過去のデータ利活用型スマートシティ推進事業の応募自治体は、県庁所在地や政令指定都市が多いです。

中小規模の自治体は、データ活用や横断的な企画・調整スキルのある人材が不足しています。また財源にも課題があります。データ基盤の構築や運用はまだまだかかる費用が高額であることも課題です。

主な変更点は、スマートシティリファレンスアーキテクチャの参照

---:2020年度の公募から大きく変わったことはありますか。

齋藤氏:2020年3月24日に、2020年度の政府スマートシティ関連事業における共通方針を4府省合同で発表しました。関係府省は、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期ビックデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術におけるアーキテクチャ構築及び実証実験」事業であるスマートシティリファレンスアーキテクチャの「ホワイトペーパー」を参照することになりました。

これまでは例えば「データ連携基盤」の定義や満たすべき要件等について、関係府省で共通したものを持ち合わせていませんでした。

その他、共通方針は大きく分けて5点です。(1)ビジョンの明確化、(2)アーキテクチャによる全体俯瞰、(3)相互運用性の確保、(4)拡張性の確保、(5)組織・体制の整備です。相互運用性の確保ではAPIの公開、拡張性の確保ではベンダーロックインを防ぐために多種多様なデータ提供者との連携を推奨しています。

新型コロナに関する事項を評価項目の一つに

---:新型コロナウイルスに関連してお話をいただけますか。

齋藤氏:2020年4月17日から開始したデータ利活用型スマートシティ推進事業に係る提案公募の実施要領において、「新型コロナウイルス感染症の対策等に係る住民への情報伝達や雇用・事業・生活の維持への貢献、収束後の地域の経済活動の回復や強靱な経済構造の構築など、新型コロナウイルス感染症対策に関連する事項があれば提案書上に記載すること」としており、評価項目として追加しております。

---:今後何か新たな災害が起こった時に、新型コロナウイルス対策として講じたことが役に立ったというようになると良いですね。

オンラインセミナー「スマートシティ2020」5月29日開催(参加費無料)はこちら。

《楠田悦子》

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