【川崎大輔の流通大陸】コロナショック、自動車業界の短期的課題

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政府は4月23日にまとめた月例経済報告で、景気について「急速に悪化しており、極めて厳しい状況」との判断を示した。このような厳しい経済下で自動車業界が直面する3つの課題が浮き彫りになっている。

2020年度の自動車消費ニーズの落ち込み

今年は、訪日観光客の激減と、外出・イベント自粛等による国内内需が急に減少した不況からスタート。また特に大きなダメージを受けている飲食、宿泊、運輸業(タクシーやバス)などの業種は、労働集約型の中小企業が多く、失業や倒産の危険性が日を追うごとに大きく増している。サービス産業に対する需要の落ち込みは一気に顕在化し、またその影響は短期的に元に戻るとは考えられなく、中長期化する可能性が高い。

帝国データバンクの景気動向調査(2020年4月調査結果)によれば、10業界51業種すべての業績が悪化したという、とんでもない状況となっている。更に、民間エコノミストからは、緊急宣言が5月31日まで延長されて個人消費が大きく冷え込み、新たな失業者が77万人に増えるといった厳しい予測が出ている。企業の業績悪化により、給与が減少し、個人消費に影響が出てくることは間違いない。

それにより自動車需要に対する手控えが発生している。新型コロナウイルスが長期化すれば、公共交通機関ではなくマイカー移動を重視する需要が高まる可能性もあるが、経済への影響だけを見た場合、不景気になれば個人所得が減り、車を保有しない人が増えていく可能性が高い。深刻化する若者の車離れと人口減少・少子高齢化も追い打ちになる。

多くの世帯に自動車が行き渡っている日本においては新規購入世帯の割合は新興国に比べると低い。1台目の購入の潜在的需要は生まれず代替え需要が基本となる。自動車購入の意思決定サイクルが長期にわたる底堅い製品であるため、急速に自動車代替え需要が減ることはない。しかし、消費者の新車代替え購入は先延ばしになる可能性が高い。2020年後半から2021年以降にまで自動車販売の需要がずれ込む。

特に新車のような高額な商品は、不景気になると、購買力が低下する。更に先行き不透明なコロナの影響が、不安と失業率を増加させる。メーカーでの在庫が少なくなり納車が先延ばしになることも重なり、新車販売は中長期的に影響を受ける。

アメリカでは、2020年第1四半期(1月から3月)の新車販売台数は、前年同期比12.4%減の350万7,920台だった。IHSマークイットはアメリカでの通年の新車販売台数は1,440万台になると予測している(3月25日)。これは2019年の新車販売台数の15%減だ。GDP比約10%の2兆ドル(220兆円)ものコロナウイルス対策の財政支出による経済政策を行った上でも、15%近くの減少。

日本のコロナウイルス対策の財政支出はアメリカに比べて桁(けた)が少ない。巨額の財政対策を行っているアメリカと同じような経済効果が日本で生じたと仮定する。そのような場合でも通年で日本における新車販売台数の下落幅は15%近くになる可能性が大きい。25%以上の下落になった場合は、トヨタでさえも赤字に陥る可能性がある。

メーカーの生産調整

IHSマークイットによれば、2020年の世界の自動車生産台数を下方修正し約21%減少の7,100万台程度まで落ちる。リーマン・ショックの減少率(マイナス12.4%)を大きく上回る水準だ。ただし、コロナウイルスの収束時期が遅れるほど需要は減る。

既に自動車メーカー各社の工場生産停止は、当初の中国工場から欧米に移り、そして日本国内工場にも波及してきた。自動車各社は、工場の従業員を一時解雇したり、一時期休させたりして、長期間の工場停止を想定し始めている。新型コロナウイルスの影響は長引く。理由はサプライチェーンだけでなく、需要減少という事態に直面しているためだ。

コロナショック終息後の、自動車産業のV字回復は期待できない。完全終息するまで少なくとも数年かかり、失業者が増え、収入は減少する。消費者による自動車の代替えは生活の中での重要な優先事項ではなくなる。自動車の需要がない、つまり売れなければ、供給サイドのメーカーも自粛し、自動車産業の回復には2年から3年の長い時間がかかる。

特に日本の場合は、自動車とそれに付随する産業がGDPに占める割合が5.5%と他産業に比べて高く、工場誘致などで雇用を維持してきた地方経済にとっても影響が出てくることは間違いない。更に、自動車メーカーの悪化から、自動車部品メーカー、ディーラーやトラック輸送業界、タクシー業界に至るまで車関連業界全体に危機が及ぶことになる。

対面営業活動の変化

コロナの影響で、対面営業活動の禁止が行われるところも出てきている。新車引き渡し、店舗への納車、修理補修などのアフターセールスへの提供も滞る。今後この流れは加速される。日本において自動車販売ディーラーや整備工場は、自粛要請職種ではないが、営業時間の短縮、更に出勤者を少なくさせるシフト体制を実施している。

現在、日本における自動車販売の営業は自粛モードで新規営業ができず、商談数が足りず、非対面営業の実施により混乱している。アメリカでは、対面営業からの脱却を迫られ、オンライン販売を強化している。更に、アメリカのウォルマートが行っている「非接触ショッピング」の流れが自動車業界でも起きてくる。日本においても、愛車の査定ができるドライブスルー形式の非対面査定サービス「ガリバー ドライブスルー査定」、中国では自動車メーカーGeely(吉利)が、自動車の非接触発注&デリバリーシステムを導入し始めた。

自動車販売の場合は、100%の非対面営業は難しい。それを理解した上で、業務と仕事を整理、分類し、可能なものはリモートで行っていく体制を早急に構築することが生き残るポイントだ。

このような直近の自動車業界の変化に対応するためには、危機対応、及び労働力の確保が重要となる。危機対応とは、今まさに起きている課題の解決をひとつひとつ行いきちんと対処することだ。過去の価値観からの脱却が求められる。また、このような時期だからこそ労働力の確保がこれからの基盤を構築するために大切になることは間違いない。

コロナショック時代には、オンラインによるリモート化がマストのスキルとなる。2021年以降を生き残っていくためには、必須のリテイラシーとなる。このようなリテイラシーを持つ人材の確保、それによるビジネスプロセスの改善だ。本来であったら既にできたことが、今まで過去の常識にしばられシフトしてこなかった。良いか悪いかは別としてコロナショックによって変わる。そしてこの変化は戻ることはない。

<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、合同会社アセアンプラスコンサルティング にてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。17年に設立した株式会社アセアンカービジネスキャリアでは、ベトナムからの自動車整備エンジニアを日本の自動車関連企業に紹介する外国人紹介を行う。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《川崎 大輔》

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