アルファロメオ、110周年を記念しE-Bookを発行…間もなく日本語版も

アルファロメオ歴史博物館館長のロレンツィオ・アルディチオ氏
アルファロメオ歴史博物館館長のロレンツィオ・アルディチオ氏全 21 枚

FCAジャパンはアルファ ロメオ 110 周年を記念したヘリテージコンテンツ、“E-Book”を発表した。5月18日に英語版、6月24日に日本語版が公開される予定だ。

【画像全21枚】

280台の全てが見学可能な歴史博物館

アルファロメオは2020年6月24日に110周年を迎える。それを祝してイタリアはミラノで大々的にイベントを開催する予定であった。しかし、COVID-19の感染拡大により、その予算と企画の全てをE-Bookに振り向けられることになった。

その監修を行ったのは、アルファロメオ歴史博物館の館長であるロレンツィオ・アルディチオ氏だ。この博物館は2017年にリニューアルオープン。その目的は、「ユーザーを始めアルフィスタや専門家など全ての人と、メーカーとの仲介者としての役割を担っている」と紹介。

現在同館には280台が収蔵されており、そのうちの70台が常設展示。100基以上のエンジンも所有している。因みに予約をすればバックヤードに置かれているクルマも含めこの280台全ての見学が可能だ。アルディツィオ氏によると、「最近この試みを始めたのだが、COVID-19のために現在は閉館しているので、再開した際にはより力を入れていきたい」とコメント。

収蔵車両は全て動態保存を基本としており、1年に1回はエンジンをかけて隣接されたピスタ(コース)で走らせている。また、メンテナンスに関しては常駐の二人のメカニックの手によってなされている。

この博物館はタイムライン、ベレッツァ(ビューティー)、スピートの3つのテーマに分かれており、タイムラインは会社の歴史として、19台の車両の展示によって表現。

ベレッツァはイタリア語で美を指し、あえて英語に訳していない。これは、「イタリア語のベレッツァという言葉の中に含まれる、デザインや美しさという意味だけではなく、アルファロメオというメーカーの役割としての美も語るためにあえてイタリア語のベレッツァという言葉を使っている」と話す。

そして最後はスピードだ。これはモータースポーツを中心とし、パフォーマンスやドライビングの歓びを表現したコーナーで、戦前の『RLタルガフローリオ』や『ビモトーレ』などから、戦後ではドイツツーリングカー選手権(DTM)に参戦していた『155V6 TI』などが展示されている。

この博物館のもうひとつの特徴はアーカイブだ。そこにはアルファロメオが開発した船をはじめ、エンジニアを含めたアルファロメオに関する全ての資料が保管されており、この資料を並べると、「6000mの長さになる。400以上の写真や1000以上のビデオがコレクションされ、細かな車両一台一台のテクニカルデータなど、車両に関する全ての詳細な情報が記されたドキュメントがここに保管されている」とのことだ。

その資料の一部には「エンツォ・フェラーリがアルファロメオに採用された時と思われるものや、エンジニアのカルロ・キティのアウトデルタ時代の資料もある。そこにはカルロ・キティ自らのサインも入っている」と貴重な資料を紹介。

また博物館としては積極的にイベントも開催しており、過去には、『ジュリア』の発表プレゼンテーションも行われたほか、様々な企画展も実施されている。

アルファロメオのバリューから人々に愛されるブランドを紐解く

さて、今回リリースされるE-Bookはこの博物館のアーカイブなどがふんだんに用いられ、110年の歴史が語られている。その軸となる部分は「バリュー、価値だ」とアルディツィオ氏。この価値とは「クルマをはじめ、関わった人々、そしてレース、テクノロジーなどの価値をトピックスとともに紹介。そうすることで、なぜこれほどまでにアルファロメオが人々に愛されているのかというところを突き詰めた」と説明する。

例えばアルファロメオのエンブレムは、「当時のA.L.F.A.のデザイナーだったロマーノ・カッツァーノの手により誕生した。彼がミラノに走っているトラムの14番の停車場、カステッロ広場で待っている時、そこにある象徴的なフィラレーテタワーを眺めていると、中世ミラノを支配していたヴィスコンティ家の紋章である“ビスコーネ・ヴィスコンテオ”が目に入った。これが全ての始まりだった」と述べ、机上ではなく人の目と手で生まれたことを強調。これがとてもアルファロメオらしく、人々に愛される所以だと評した。

またこのE-Bookの最後のページには、このエンブレムとともに、盾の形をしたグリルの変遷も描かれており、ここでも110年の歩みがわかるようになっているという。

110年続いたのはテクノロジーとデザインの融合

今回、このE-Book発表に際し、アルディツィオ氏自らWebミーティングに参加しプレゼンテーション。その後、QAセッションが行われた。本人には事前に質問は知らされておらず、即興での回答であった。主なQAを紹介する。

----:アルディツィオさんはどのアルファロメオが好きなのでしょうか。

アルディツィオ氏:常にこういった作業をしながら自分はどのアルファが好きなのだろうと問い続け、本当に迷いました。なぜなら全てのアルファロメオにはそれぞれ役割があり、その役割ひとつひとつが違うのでそれをどれかで補うことはできないからです。そこをあえて選んだ2台のうちのひとつは。1930年の『8C 2300モンザ』。美しさ、速さ、テクノロジー、高いパフォーマンスの全てがこの1台に集約されているので好きなのです。

もう1台は1960年代に登場した『ジュリアGT』から『ジュリアGTA』までの全てが好きです。エッセンシャルな美しさと機能を持っている。つまりバランスが取れているので非常に良いと思います。そして何よりもドライビングの歓びを与えてくれる、アルファロメオらしさを備えているからです。

----:ジュリエッタの名前の由来はどういうものなのでしょう。

アルディツィオ氏:1950年代、アルファロメオにとってジュリエッタは新しい路線を築くという意味で、よりライフスタイルに沿ったクルマを目指しました。例えば女性ドライバーも視野に、トレンディで新鮮なカラーを纏うなど、新しさを持ったクルマなのです。そこで、それまでのような番号ではなく名前を付けようとなったわけです。

最終的にはアルファ“ロメオ”がいるのだから、ジュリエッタとなったのですが、1950年のF1で優勝し、パリでアルファロメオのチームが夕食を取っていた時、ロシアのプリンセスがそのレストランにたまたま入ってきて、そこにアルファロメオのチームがいることを知り、「ロメオばかりでどうしてジュリエッタがいないの?」といったのが始まりなのです。因みにこの時にはジュゼッペ・ブッソ(当時の『158“アルフェッタ”』のエンジン技師)も一緒にいて、彼がこの時にレストランで食べたメニューも我々のアーカイブに保管されています。

----:『33ストラダーレ』の歴史的価値はどういうものでしょうか。

アルディツィオ氏:イコンモデルであり一番美しいと思っています。実はつい3か月ほど前にわかったことなのですが、アルファロメオからのプロポーザルとしてこの33ストラダーレは作られたといわれてきましたが、実はアウトデルタのカルロ・キティが『ティーポ33スポルトプロトティーポ』を作る時に、ストラダーレも一緒に作ろうと当時のアルファロメオ社長のジュゼッペ・ルラーギに持ち込み、ルラーギが首を縦に振ったということが判明しました。

----:1930年代、イタリアはミラノ以外にパリにも工場がありましたが、なぜパリに工場を作ったのでしょう。

アルディツィオ氏:1928年から1933年、あるいは34年までありました。イタリアで作ってフランスに輸出すると税金がかかりましたので、新しくアルファロメオフランスS.A.という会社を作ってそこが生産をしていたのです。およそ100台が製造されました。

ここで注目したいのは場所がシャンゼリゼのすぐそばだったことです。建築はロベール・マレ=ステヴァンスという当時アールデコを代表する建築家が手掛けた、とても凝ったカラフルなガラスが使われていた工場でした。そこで当時からイタリアの美の大使とアルファロメオは捉えられていたのです。この資料がフランスのパリ市役所にあり細かいところは資料を取り寄せて現在調査中です。

----:1930年代のミッレ・ミリアやタルガ・フローリオのレースシーンを見ると『6C1750GS』などは三連のヘッドランプに、赤いヘッドランプカバーが装着されています。これはどういう理由だったのでしょう。

アルディツィオ氏:3連ランプは全て同じヘッドライトです。そのカバーは砲弾型をしており、飛び石回避と共に空力向上も目的のひとつでした。夜は外して走行しています。なぜ赤か……。やはりイタリアだから赤を採用したのでしょう。

----:アルファロメオが110年続いた理由は何でしょう。

アルディツィオ氏:一本筋が通っているということが挙げられます。常にテクノロジーとデザインの融合で、そのデザインも機能性をもとにしたデザインを採用しています。これが110年継続の秘訣ですが、もうひとつ、このアイデンティティを失わずに新しいことにトライしていることもあります。きちんと地に足を付けて新しい試みをすることも110年続いている理由でしょう。

----:110年続いてきたアルファロメオのDNAとは何ですか。

アルディツィオ氏:これはミュージアムのセクションわけにも通じるのですが、歴史とビューティーとパフォーマンスです。特にアルファロメオの場合はビューティーとパフォーマンスが重要です。このパフォーマンスとはイノベーション、例えば軽量化やドライビングファンも含まれており、これらが基本的にアルファロメオの合致したDNAといえるでしょう。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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