【トライアンフ ストリートトリプルS 試乗】国産車に真っ向勝負!CB650Rキラーの最右翼…伊丹孝裕

欧州仕様より日本仕様の方がハイスペック

爽快に吹け上る3気筒エンジン

一体感の意味を教えてくれる

トライアンフ ストリートトリプルS
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近年、バイクの価格はずいぶんと高くなった。

国産の125ccでも40万円台のモデルが存在し、1000ccのスーパースポーツなら300万円オーバーも当たり前。新車価格の相場が「1ps=1万円」あたりだったのはすっかり昔のことで、今そんなことを言っていたら笑われる……と思っていたら、必ずしもそうとは限らないようだ。

行き過ぎた装備やスペックに対する反動なのか、2019年にホンダから登場した『CB650R』は95psの最高出力を持ち、これを97万9000円で発売。だからといって安普請なところはなにもなく、デザインも機能も必要充分、というかそれ以上の完成度を誇っていた。

そこへ真っ向勝負を仕掛けてきたのが、トライアンフの『ストリートトリプルS』である。最高出力は95.2psを発揮し、このクラスの輸入車としては驚くほどリーズナブルな99万9000円というプライスタグを掲示。CB650Rキラーの最右翼であることはもちろん、格上モデルの存在感を霞ませるほどの魅力にあふれていた。

欧州仕様より日本仕様の方がハイスペック


現在、ストリートトリプルシリーズには3つのモデルがラインナップされている。トップモデルの「ストリートトリプルRS」(765cc/123PS/143万7000円)、デチューンされたローシート仕様「ストリートトリプルR low」(765cc/118PS/126万7000円)、そして今回紹介する「ストリートトリプルS」(660cc/95.2PS/99万9000円)という構成だ。

上位の2機種が765ccなのに対し、ビミョーに排気量を落とした660ccのモデルがあるのが不思議だが、これにはヨーロッパのライセンス区分が関係している。

もともとこのモデルは、「18歳~20歳のライダーが運転できるのは最高出力35kw以下」という制約があるA2ライセンス用(他にAM/A1/Aなどのランクがある)に開発された。実際イギリス本国を含め、ヨーロッパの多くの国々では「35kw(47.6PS)/9000rpm」というスペックを公称。いわばエントリーモデルの役割を担っているわけだが、実は本当のパフォーマンスが隠されている。それが既述の95.2psというスペックで、日本でそれを楽しめるのは、かの地のライセンス区分の適用外だからである。

それにしても、我々日本のライダーは幸運だと思う。日本仕様のストリートトリプルSは、なにからなにまでちょうどよく、実にバランスよくまとまっているからだ。欧州仕様のままなら、つまり47.6psのままだったとしたら少し物足りない場面があったに違いない。

爽快に吹け上る3気筒エンジン


車体はコンパクトな部類で、少々小柄なライダーでも足つきに心配はない。ハンドルは上体を軽く前傾させたところにあり、身体のどこにも負担がかからないため、スローペースの街中でもストレスを感じず、スイスイと走らせることができる。

なによりいいのがハンドリングの軽さで、交差点でステアリングを大きく切って曲がる時も、コーナーで車体をバンクさせて曲がる時もスッと素直に旋回。小難しい操作や理屈をまったく意識することなく、腕の力を抜いてバイクに身体を預けておけばいい。

660ccの水冷3気筒エンジンは特に低回転型ではないが、ストップ&ゴーはイージーだ。アイドリング状態からでもクラッチレバーの操作だけで車体は力強く押し出され、フレキシビルそのもの。パワーもトルクも過度に盛り上がる部分がなく、どんな回転域でもスロットルを開ければ開けた分だけ、素直に反応する。


それでももし、さらに穏やかなレスポンスを望むならロードとレインの2パターンがあるライディングモードのうち、レインを選択するといいだろう。スロットルを「1」開けて「1」のパワーが出るのがロードだとすれば、レインは「0.7」くらいに留められ、安心感が高い。

ライディングモードがどちらでも、回転数が高くても低くても3気筒エンジン特有のビート感は失われず、スロットルを開閉しているだけで心地よさが得られる稀有なパワーユニットである。95.2PSのパワーが絶妙なところで、これ以上あると怖さが先行し、もっと高度な電子制御を盛り込む必要が出てくるが、その手前で寸止め。扱いやすさと適度な刺激がほどよくバランスしているのだ。

一体感の意味を教えてくれる


パフォーマンス面でひとつ注文をつけるなら、フロントフォークにしなやかさがあればベストだ。ごく普通に走っている時に不満はないものの、大きなギャップを拾った時の突き上げは強く、衝撃をそのままライダーに伝えてくる。ここだけが低コストを感じさせる部分である。

反面、LEDヘッドライトやヘアライン仕上げが施されたアルミのラジエターシュラウド、高い接地感をもたらすピレリ製タイヤ(ディアブロ・ロッソ3)などには上級モデルと同等のクオリティが確保され、満足度は高い。

構えることなく走り出せ、バイクと一体になって駆け抜ける爽快感を教えてくれる良質なスポーツバイク。それが、このストリートトリプルSである。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

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