公道も走ることが出来るレーシングカー、マクラーレン『620R』…オートモビルカウンシル2020

マクラーレン620R(オートモビルカウンシル2020)
マクラーレン620R(オートモビルカウンシル2020)全 17 枚

マクラーレン・オートモーティブは幕張メッセで開催されているオートモビルカウンシル2020において、公道を走ることが出来るレーシングカー、『620R』を日本初公開した。

最高のドライビングエンゲージメントを

マクラーレンのブースのコンセプトは、マクラーレンの卓越したテクノロジーとその世界観を踏まえ、“マクラーレンに魅せられる”がコンセプトだ。全体的には一切の無駄を省いた清潔感のあるマクラーレンのファクトリーのイメージを踏襲し、マクラーレンのCIを基調としたシンプルかつ力強いエッジの利いたデザインは、マクラーレンの持つ先進性とスピード感を表現しているという。会場には初公開の620Rとともに、『GT』も展示された。

今回発表された620Rは、「レーシングカー、『570S GT4』の公道バージョンだ」とは、マクラーレン・オートモーティブ・アジア日本支社代表正本嘉弘氏の弁。

「マクラーレンは50年にわたる実績と知見をベースにしながらトップノッチのレーシングカーを作る技術と知見を持ったブランドだ。つまり、自動車メーカーではなくレーシングコンストラクター」としたうえで、「そのレーシングコンストラクターが一般のお客様に最高のドライビングエンゲージメントを体感してもらえるためにどういったことが出来るのかを考えその究極の結晶がこの620Rだ」と位置付けた。

その特徴は大きく4つ。ひとつは、モータースポーツ直系のピュアなレーシングカーであり、レーシングテクノロジーに基づいて開発されたクルマであるということ。次に、レースのレギュレーションに縛られずに、最高のサーキット体験が出来るパフォーマンスを有したクルマであること。そして、ナンバープレートを取得し合法的に行動を走らせることが出来ることを挙げ、「公道を走ってサーキットに行き、スリックタイヤに履き替えてそのままサーキットを走ることが出来るという最高の体験が出来るクルマだ」と正本氏。最後は、「トラックエディションに近いLTシリーズ、600LTと比べても更にスパルタンな、まさに生粋のレーシングカーといえるキャラクターを有しているクルマ」とその特徴を説明。最高出力は600LTと比較し20馬力アップ。これは主に「ECUやブーストコントロールのチューニングで捻出」。そして、「もうひとつ注目したいのがダウンフォースだ」と正本氏。これは、「大型のカーボンファイバー製リアウイングを搭載しているので、250km/hの段階で600LTよりも1.85倍と極めて強力なダウンフォースが得られるセッティングなのだ」と説明した。

レーシングカーと公道用モデルの融合

570S GT4をベースに作られていることから、フロントでの大きな変更はない。しかし、公道走行が可能になるように、歩行者保護の観点からフルカーボンのボンネットを作成。この結果、「万一歩行者の頭部がボンネットに衝突した場合でもしっかりダメージを最小限にしている」という。また、レーシングカーならではのものとしては、「ダイブプレーン(フロントサイドに出っ張っている羽根状のもの)も、とても小さいがこれだけでダウンフォースが40kg向上。車両上部のエアフロ―除去のためにノーズ部分にツインホールが設けられている」とのことだ。

サイドで目を引くのはセンターロッキングのレーシングホイールが挙げられる。鍛造のもので、公道走行が可能なように、ダブルのセキュリティがかけられ、日常走行でも安心して使えるような配慮がなされている。また、カーボンセラミックブレーキは標準装備。「レーシングカーなのでバネ下重量をどれだけ低減させるかがロードホールディングとドライビングダイナミクスの観点で特に重要だからだ」とその採用理由を説明。更に、レーシングダンパーを装着することで、「バネ下重量を6kg、通常モデルよりも低減。このレーシングダンパーはマニュアルでバウンドとリバウンド両面で合計32のセッティングの変更が可能で、それを四輪独立制御することで、世界の様々なサーキットのどこでも、そのサーキットに応じた効果的なサスセッティングを行うことが出来る」という。また、冷却の観点ではサイドにあるメインのエンジン用ラジエーターは、より吸入量が上がるように拡張されたデザインが採用されている。

リアでの注目は、カーボンファイバー製の大型リアウイングだ。マニュアルで3段階調整することが可能で、「ユニークなのはエアロダイナミクスの性能を損なうことなく、センター部分にハイマウントストップランプをインテグレート。これも公道走行のための法規対応だ」。同時に、サイドプレートも突起物なので、「若干レーシングカーよりもマイルドなデザインとなっている」と述べた。

レーシングカーでありながら使い勝手も考慮

インテリアはブラックの軽量アルカンターラでまとめられており、そのベースはカーボンモノコックのタブだ。これによって車両重量は大幅に軽減。更に、「レーシングカーなので1g単位の軽量化が随所に施されている」と正本氏。例えば、フロアカーペットやグローブボックスはすべて撤去され、新たに採用されたレーシングシートは、「公道で乗りやすいものでありながら、フルバケットのスーパーライトウエイトカーボンファイバーレーシングシートで、マクラーレン『セナ』と同じスペックのものを搭載。従って非常に軽くて剛性の高いものだ」と正本氏。そのシートに6点式のハーネスベルトを装着することで、「まさに最高のドライビングエンゲージメント、クルマとの一体感を感じられるだろう」という。

そのハーネスで固定された場合には、手のリーチが限られるので、「ドアを閉めるときにはプルストラップを追加で装備しており、更にセンターコンソールは各種パワートレインやサスペンションのセッティングを変更するスイッチがあるのだが、これも通常のモデルからかなりポジションが上に挙げられ、リデザインされている」と使い勝手も考慮されている。

正本氏は、「620Rはマクラーレンの中でもかなり尖った究極のレーシングオリエンテッドなモデルである。いってみれば公道走行可能なレーシングカーを超えた、レースのレギュレーションよりも更にパワフルでエキサイティングなレーシングカーだ」とし、「昨年発表し全世界で350台限定で発売し、日本のアロケーションは完売。マクラーレンは今後もこういったエキサイトメントを与えるような、最高のスーパーカーを出していくので注目してほしい」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. なぜ? 日産 リーフ 新型がクロスオーバーSUVに変身した理由
  2. もしも流行の「2段ヘッドライト」がなかったら…!? 一流デザイナーが斬新なフロントマスクを提案
  3. 東京外環道、千葉県内の4つのインターチェンジがETC専用に…9月2日から
  4. 新型EV『マツダ6e』、欧州で今夏発売へ...日本のおもてなしを体現
  5. トヨタ『GRヤリス』にモータースポーツ由来の空力パーツ採用!「エアロパフォーマンス」誕生
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  3. トヨタや京大、全固体フッ化物イオン電池開発…従来比2倍超の容量達成
  4. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
  5. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
ランキングをもっと見る