F2スペイン戦で日本勢が躍動…松下信治がレース1優勝、角田裕毅はシリーズランキング4位に上昇

#14 松下信治(8月15日)
#14 松下信治(8月15日)全 8 枚

F1スペインGPと併催されたFIA-F2選手権の今季第6戦で日本勢が躍動した。レース1では松下信治が今季初優勝。また、前戦のレース2で初優勝していた角田裕毅は今回連続4位となり、シリーズランキングを4位へと上げている。

将来のF1昇格を狙う者たちが競うF2(旧GP2)、今季は日本勢のレギュラードライバーが多く、#14 松下信治(まつした・のぶはる 26歳/MP Motorsport)、#7 角田裕毅(つのだ・ゆうき 20歳/Carlin)、#23 佐藤万璃音(さとう・まりの 21歳/Trident)の3人が戦っている(カッコ内の年齢は本稿掲出時点/所属チーム)。迎えた今季第6戦はスペイン・バルセロナが舞台。ここで#14 松下と#7 角田が魅せた。

現地15日決勝のレース1(37周)にはドライ用タイヤの2スペック使用義務という原則があり、各車最低1回はピットインすることになる。予選6位の#7 角田は序盤7番手での走行となるも、6番手を奪回、すると6周終了時という早い段階でタイヤ交換する作戦を敢行した。予選18位だった#14 松下の方は対照的に、レース後半にタイヤ交換をする戦略で臨んでいる。

上位が25周目を走っているときにアクシデントが発生、セーフティカー(SC)導入となる。この時点で#14 松下は3番手まで上がっており、#7 角田の順位も7番手まで戻ってきていた。ここで各車の判断は大きく3つに分かれることに。まだ“タイヤ交換義務”を果たしていない者はこの機にピットへ、そして既にタイヤ交換をしている者はコースにとどまるか、フレッシュなタイヤを求めて2度目の交換をするか、である。

タイヤ未交換だった3番手 #14 松下はもちろんここでピットイン、そしてタイヤ交換済みの7番手 #7 角田はコースに残る選択をした。

28周終了時にSC撤収、レース再開となるが、このときを#7 角田はトップ、#14 松下は3番手で迎えた。SCが入ったタイミングは#14 松下にとって絶妙だったことになる。タイヤの硬軟あるいは新旧が入り乱れての戦い模様となったなか、#7 角田はタイヤ的に辛い状況ながら首位を守って走行。#14 松下が30周目に2番手へと浮上し、日本勢の1-2というかたちが現出した。

32周目、#14 松下が#7 角田をパスしてトップへ。抜かれた#7 角田はさすがにタイヤが厳しいか、さらに3番手へと後退する。すると、ここでまたもやSC導入となる事態が発生。そしてレース時間制限の関係で、SC明けはファイナルラップ1周勝負となる(予定より2周早い35周目が最終周に)。

#14 松下はトップを守ってチェッカーフラッグを受け、今季初優勝。#7 角田は5番手まで下がってのゴールだったが、上位にペナルティがあり、レース結果は4位ということになった。

2014年に全日本F3チャンピオンとなった松下は、ホンダ期待の星として2015、16、17、19年にGP2~F2を戦っており、今年で通算5年目の参戦となる(18年は日本のスーパーフォーミュラが主戦場)。しかし今年は、これまでとはその立場が異なっている。

モータースポーツ専門サイト等の報道によれば、今季20年に関してホンダは松下に国内トップカテゴリーのシートを用意していたが、松下はF2チームからオファーが来ていたこともあり、F2参戦継続にこだわったという。そしてホンダは松下の意思を尊重し、彼を国内トップ戦線の人事から外したとされる。

今もホンダと松下の関係は良好なものであるだろう。ただ、昨季とは違い、ホンダの選手育成プログラム「ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)」に松下の名はない。今季、HFDPの選手としてF2に参戦しているのは新人の角田だけだ(ちなみに昨季のF2参戦に関しても、松下の判断と自己努力が実現に大きく寄与していた)。

茨の道かもしれないが、あくまでF1に最も近いシリーズに今季も参戦し続けることを選んだ松下。これまでもGP2~F2に参戦したシーズンは必ず1勝以上をあげている彼だが、今回の優勝には過去のそれとは違う、格別の喜びがあることだろう。

松下は「本当に嬉しいです。今年は(マシンの仕上がり的に)ペースに苦労することもありましたけど、今日は“メガ・ペース”(素晴らしいペース)でした。SCのタイミングもパーフェクトでしたが、とにかく今日のレース(内容)から自信を得られると思います」との旨のコメントを残している(コメントはF2公式サイト掲載のもの)。

翌日(現地16日)のレース2は、レース1の決勝上位8台がリバース配置されたグリッドからの26周スプリント戦。このレース2では#7 角田が4位、#14 松下は5位でのフィニッシュとなった。実績を買われて移籍加入したチームの地力アップに松下が貢献しているのは事実のようで、レース2では彼の僚友#15 フェリペ・ドルゴビッチが優勝している(ドルゴビッチは自身今季2勝目、チーム今季3勝目)。

一方、前戦のレース2でF2初優勝を達成し、今回は連続4位となった#7 角田。彼のシリーズランキングは前戦終了時の6位から4位へと上がった。ランキング首位との差も少し縮まっており、さらなる上位へ、期待が高まる。

なお、#23 佐藤のスペイン戦での決勝成績はレース1が15位、レース2が21位だった。

FIA-F2選手権はF1との併催が原則。コロナ禍の今季はカレンダーに依然流動的な面もありそうだが、現段階では9月までに第7~10戦がF1併催でラインアップされている。引き続き日本勢の活躍が注目される。

《遠藤俊幸》

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