インフィニティラウンジの機能と使命…担当デザイナーが語る

左からグローバルデザイン本部アドバンスドデザイン部VI&スペースデザイングループ課長代理・安原大介氏、グローバルマーケティング本部グローバルブランドエクスペリエンス部主担・鈴木香奈子氏。
左からグローバルデザイン本部アドバンスドデザイン部VI&スペースデザイングループ課長代理・安原大介氏、グローバルマーケティング本部グローバルブランドエクスペリエンス部主担・鈴木香奈子氏。全 7 枚

2020年10月28日、日産自動車のラグジュアリーブランド・インフィニティは、日産グローバル本社のギャラリー内にラウンジを開設した。

同日、開設にあたって報道発表会が行なわれた。発表会では、グローバルマーケティング本部グローバルブランドエクスペリエンス部主担・鈴木香奈子氏、グローバルデザイン本部アドバンスドデザイン部VI&スペースデザイングループ課長代理・安原大介氏がラウンジについて解説を行なった。

まず鈴木氏がインフィニティラウンジの概要について以下のように説明した。

「インフィニティラウンジは、くつろいだ環境で市販車、過去の歴代車、コンセプトカーをご覧いただけるスペースとなっている」

インフィニティラウンジインフィニティラウンジ

「この日産グローバル本社は、新車発表や企業情報の発信基地、スーパーGTのイベントなど、お子様から大人まで楽しんでいただけるスペースになっており、年間約125万人(新型コロナウイルス感染拡大前)のお客様にご来場いただき、約70パーセントの方がリピーターというほど、みなとみらい地区の顔として根付いてきた」

「2019年度にはヘリテージゾーンを開設し、続いてインフィニティラウンジを開設することで、より多角的な発信拠点として海外のお客様を含め、より幅広くお客様に注目していただける場所として発展させていきたい。とくに日本ではお目にかかれない、コンセプトカーや、市販車を展示することで、たくさんのお客様に楽しんでいただけると思う」

『Qインスピレーションコンセプト』を間近で見ることができる。『Qインスピレーションコンセプト』を間近で見ることができる。

続いて、ラウンジのデザインコンセプトなどについては、モーターショーやイベント、建築関係のデザインを担当している安原氏が解説を行なった。

「ここにラウンジを設立するきっかけになったのは、インフィニティの本社が日本に移転したということ。それによってお客様からも、インフィニティの車を見てみたいといったご要望をいただき、いい機会ということでこのようなラウンジを作らせていただいた」

次世代3列シートSUVのデザインの方向性を示すコンセプトカー『QX60モノグラフ』も展示。次世代3列シートSUVのデザインの方向性を示すコンセプトカー『QX60モノグラフ』も展示。

「今回の開設の目的はふたつある。インフィニティの車は日本で販売していないので、どんなブランドなのかいまいちわかりづらい。そこでお客様にブランドを認知していただくための場所としての役割がひとつ」

「もうひとつは、従業員のためでもある。我々は日産、ダットサン、インフィニティと3つのブランドを持っており、インフィニティの開発、デザインに関わっている従業員は国内にもたくさんいるが、日本で販売していないということもあり、車を見る機会、世界観を感じる機会が少ない。そこで本社内ギャラリーの中にインフィニティを感じられる空間を作ることで、お客様だけでなく担当者たちのモチベーションの維持にも大きく関わってくると考えた」

天上からぶら下げられた2枚の『Cloud』。三軸織りという織物技術が用いられ、ミウラ折りと呼ばれる小さな力で大きく開く折りの技術でデザインされている。折りの角度でヒダを通過する光の陰影が変わるのが特徴。天上からぶら下げられた2枚の『Cloud』。三軸織りという織物技術が用いられ、ミウラ折りと呼ばれる小さな力で大きく開く折りの技術でデザインされている。折りの角度でヒダを通過する光の陰影が変わるのが特徴。

ラウンジのデザインコンセプトについては以下のように述べた。

「ラウンジのデザインコンセプトとしてブランドを一番感じていただける部分については、車を見ていただくことだと思う」

折りの角度が変わることで、それぞれ縦の長さが異なり、窓側の方が長くなっている。折りの角度が変わることで、それぞれ縦の長さが異なり、窓側の方が長くなっている。

「もうひとつ、ブランドを感じていただける『空間』のコンセプトとして、モーターショーのブースをイメージして、2019年の上海モーターショーでブースに設置された、隈研吾氏のデザインによる『Cloud』をラウンジの上部に飾っている」

「これらは『自然にできる形』そして『日本古来のデザインや所作』を大切にしたいという思いが原点になっている。Cloudについても、日本の文化、クラフトマンシップがインスパイアされており、原材料としてはセラミックを使い、世界で2社しか作れないハイテクなものだが、三軸織りと折り紙の伸縮性を併せ持ったものとなっている」

『Cloud』の三軸織りは3本の糸を編み込んだもので、六角形の格子が並んだような形状になっている。『Cloud』の三軸織りは3本の糸を編み込んだもので、六角形の格子が並んだような形状になっている。

「そして空間をデザインするうえで、もうひとつ大事にしているものが『間』だ。日本の建築には非常に大切にされているものだが、デザインとなると『モノ』のデザインに目が行きがちになる。しかし我々が意識したのは、『モノとモノとの間』のデザインだ」

「『空間をどうデザインするか』ということをインフィニティはいつも大切にしている。このラウンジにおいては、CloudとCloudの間、展示されている車と車の間などについて、リッチな環境を構成することでラグジュアリーブランドにふさわしい空間演出をしている」

「『光』についても重要視している。車に光がどう当たるかということも大事だが、空間に差し込む光も演出には大切なことだと考えている。ラウンジの隣の窓は北側の採光となっており、非常に柔らかい光が入ってくる。それがCloud越しに透けて入ってくることで、障子越しに光が差し込むような、光の取り入れ方を表現している。こういった日本の様式を取り入れ、直接的ではない表現手法を用いることで日本のブランドであるということと、ラグジュアリーブランドということを体現している」

インフィニティラウンジでは、今後コンセプトカー以外の車についても展示される予定とのこと。現在は日本未発売のブランドだが、これから知名度アップを進め、いずれは日本での展開も、と考えられているかもしれない。

《関口敬文》

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