ライバルは軽自動車:マイクロモビリティはコロナ禍で伸びるのか?…矢野経済研究所 モビリティ産業ユニット 阿江佑宜氏[インタビュー]

ライバルは軽自動車:マイクロモビリティはコロナ禍で伸びるのか?…矢野経済研究所 モビリティ産業ユニット 阿江佑宜氏[インタビュー]
ライバルは軽自動車:マイクロモビリティはコロナ禍で伸びるのか?…矢野経済研究所 モビリティ産業ユニット 阿江佑宜氏[インタビュー]全 1 枚

新型コロナウイルスの影響による生活様式の変化。そのひとつにソーシャルディスタンスがある。モビリティにおいてはタクシーや電車・バスなど公共交通が「三密」やクラスター化のリスクが問題となり、自転車や自家用車、さらに法整備が整ったマイクロモビリティに注目が集まる結果となった。

矢野経済研究所 モビリティ産業ユニットの上級研究員 阿江佑宜氏に、マイクロモビリティ市場や海外動向、これからの展望について話を聞いた。なお、阿江氏は11月26日開催のオンラインセミナー「2030年CASE市場予測と車載ソフトウェア勝負の行方/コロナで注目のマイクロモビリティ」で、マイクロモビリティの国内外市場について講演する。

---:コロナ禍でマイクロモビリティが注目されているといいます。ここでいうマイクロモビリティとはどのような車両になりますか。

セミナーで取り上げるマイクロモビリティとは、自転車や原付スクーター、電動キックボード、現行法で原付四輪に分類される「ミニカー」、現在、車両法改正が進められている「超小型モビリティ」とよばれる1~2名乗車の小型自動車です。

これまでは、超小型モビリティは、認定制度に基づいて許可を得たエリアでしか公道走行ができず、特区などでの実証実験でしか走ることができませんでした。しかし、今年に入って軽自動車の規格内での道路運送車両法・保安基準での法整備が進められています。ただし、量産体制が必要なこと、最高速度が60km/hに制限されたり自動車専用道路には入れないといった制限が課されます。

制限がありますが、公道を走行できる法的な根拠が明確になったので、トヨタなどが対応車両の開発・販売を発表しています。

---:マイクロモビリティという視点から、現在のモビリティ市場はどう捉えられるのでしょうか。

自動車市場は、コロナ禍によって転換期を迎えているといっていいでしょう。EUや北米市場では3割から4割の売上減少が伝えられています。9月期に回復も見られますが、再び感染者が増えるなど状況は読めません。

感染リスクを避けるため、たとえばEUでは電車・バス離れが見られます。アメリカでは、2020年上期の自転車市場が前年比2倍に伸びたという報告があります。この牽引を支えたのが、85%増の電動自転車です。

---:マイクロモビリティは電動化が基本なのでしょうか。

自転車は電動アシストが一般的になったようにマイクロモビリティと電動化の相性はよいと思います。日本ではバイクは「ファンバイク」つまり趣味利用のイメージが大きく、実用車とは違う側面を持っています。しかし、まだまだ市場は小さいながら、日本でも郵便配達やデリバリーなど業務用途での電動バイク活用が伸びてくると思われます。

---:海外では電動バイクやマイクロモビリティはどうなんでしょうか。

インドのバイク市場は1億5千万台と言われています。このうち電動バイクのシェアは2%以下です。市場が小さいのは日本と同じですが、モディ首相はこの比率を30%まで上げるとしてバイクの規制を強化しました。安全・環境面で、ABS装着の義務化やキャブレターを禁止して燃料噴射にしなければ新しいバイクは売れなくなりました。

その結果、多くのメーカーがいままでのような安いバイクを作れなくなっています。インドは巨大市場のひとつですが、全世帯の80%が年収20万INR以下のいわゆる貧困層です。自動車や高性能バイクを買える層はわずかで、多くの国民は車よりまずバイクしか買えないという状況です。

安いバイクが買えなくなれば、業界や国民にとっても影響が大きいので、政府はEV、電動バイクの補助金に力を入れています。たとえば、四輪EVに対する補助金は3.5万台規模の予算ですが、電動バイクの購入補助には100万台の枠を設けて普及を促しています。

---:中国はどうですか?

2019年のデータですが、中国の2輪車1540万台のうち、およそ10%の150万台以上が電動バイクです。4輪の5%以下より電動化が進んでいるといえます。EVは中国というイメージがありますが、中国は電動バイク大国でもあります。

中国は自転車とバイクがもともと多い国で、車より自転車やバイクが多い時代もありました。日本では電動自転車は電動アシスト方式が一般的ですが、中国には昔から自転車のフレームにモーターを後付けしたような電動「フル」自転車が大量に存在しました。それが足としてのバイク、コミューターとしての用途で大きく普及しました。

その中国で、2019年4月からあいまいな電動自転車・バイクの規制が変わり、自転車なのかバイクなのかわからないグレーな二輪車を一掃されるようになりました。しかし、これがメーカーに正規な電動バイクを作るモチベーションにもなり、電動バイクの性能や品質が各段に向上しています。中国製の電動バイクは南米、アフリカなどに多く輸出されています。

---:最後にマイクロモビリティの展望についてお話いただけますか。

2019年のIEA(国際エネルギー機関)のデータですが、4輪のCO2排出削減量が14.6メガトンだったところ、2輪・3輪の削減量は32.2メガトンでした。これは、環境貢献度でも4輪より2輪の削減効果が高かったことを意味しています。また、コロナ禍ではソーシャルディスタンスをとりやすく、小型モビリティは充電も短時間で済み、自動車では課題の多いスワップ方式のバッテリーも採用しやすいといった特徴があります。

各国の政策、インセンティブによりマイクロモビリティと競合商品との価格差もだいぶ縮まってきています。価格差が20%以内になってくれば、ランニングコストなどと合わせて、さらに競争力・商品力を高めてくると思います。

まだ製品としての改善は必要ですが、電動バイクは原付バイクの価格や利便性が、超小型モビリティは軽自動車の価格や性能・安全性がそれぞれのターゲットとなってくるでしょう。

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阿江氏が登壇する11月26日開催のオンラインセミナー「2030年CASE市場予測と車載ソフトウェア勝負の行方/コロナで注目のマイクロモビリティ」はこちらです。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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