【アウディ A4 新型試乗】優しくなったA4は、セダン&ワゴン復活の旗手となるか…南陽一浩

アウディ A4アバント 改良新型(35 TFSI Advanced)
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乗り味ばかりか価格まで。いや、その前に見た目の印象も、ずいぶん柔和になった。攻撃顔ではなく、受けとめる側に回った、そういう柔らかさだ。ボディサイドのキャラクターラインをピキピキに立てていた頃は、先進的どころかむしろバロックの域に入って、その肩に力の入った感じが見ていて痛かった。ところが今回、ビッグ・マイナーチェンジが施されたモデルイヤー2021年のアウディ『A4』は、インテリ風情というか、らしさが戻ってきた。

無機質さよりも無駄のなさ、シンプルな線と面構成が際立つ、血の通ったデザインになった。聞けば、前期フェイズよりフロントフェンダーは5mmほど広がり、ドアもリアフェンダーパネルも別物に一新されたとか。

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借り出したのは「A4アバント 35 TFSI」で新たに設定された「advanced(アドバンスト)」というグレード。LEDのリアコンビランプなど外観に関わる装備はSラインと同じで、約70万円ほど車両価格を下げたとか。試乗車にはオプションのラグジュアリーパッケージ23万円也が入っていて、運転席メモリー機能を備えたシートはパーシャルレザー使いだったが、本物のレザーに近い質感と打目模様のアルミパネルによる穏やかなモノトーンは、なるほどアウディらしい。

コントロールパネルはタッチパネル1画面に、ダッシュボードセンターがエアコン、その下にドライブモード選択やESPなど主要な走行パラメーター関連のボタン類というオーソドックスさで、A6のような上下2画面ではない。だが明快な機能表示とアクセスのよさはメーターパネルやステアリングホイール上にまで及び、操作上で戸惑うことはなく、むしろ安心感を覚える。次はパワートレインを見てみよう。

スペック値よりずっと力強い動的質感

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確かに、「S4」と「クワトロ」に次ぐ、直4・2リットルターボの150psによるFF仕様だが、今回のビッグマイナーチェンジの眼目である12Vマイルドハイブリッド(MHEV)化の恩恵は受けている。通常のバッテリーとは別に荷室のフロア下、要はスペアタイヤのスペースに駆動力用のリチウムイオン・セカンドバッテリーを積み、最大60Nmのアシストを必要に応じて前車軸に送る。もちろん荷室容量や後席スペースは、バッテリーの割を喰ってはいない。

いざ走り出すと、ゼロ発進から初速がのる域では、確かにモーターの恩恵だろう、2リットルという排気量に見合わぬ、ヌルリとした出足の軽さを感じる。ちなみに最大トルクは270Nm/1350~3900rpmと最初からトルクは分厚いのだが、電気の加速感にありがちな、後ろから蹴飛ばされて首に来るような唐突さや、モーターとICEの継ぎ目は感じない。

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街乗りから高速道路まで、新しいA4アバントのマナーはジェントルそのものだ。FFであることを差し引いても、1570kgの車両重量は今やめっぽう軽い。それでいて今回のマイナーチェンジでは相当にボディに手が加えられ、サスペンションのマウント部の素材を熱処理することで、剛性を大幅に高め、軽くできたという。微低速域から足がよく動き、小さなギャップもそそくさと拾っては、いなす。

神経質な上下動のない大人びた乗り心地は、言ってはなんだが、『S8』や『A6』のようなハイテクな足まわりによって作られ、守られている乗り心地ではないながら、日本のせせこましい道でかくもサービス精神に満ちた優しい乗り心地は、意外なほどだ。

ちなみに試乗車にはオプションで、外からの音を減じて静粛性を高めるアコースティックガラスも入っていた。

それは新世代ドイツ車のサービス精神か?

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いずれA4アバントが奥ゆかしくもその本領を見せたのは、ワインディングだった。前後の荷重移動を使う走り方をしても、素晴らしくしなやかに、かつ控え目にアシが弾む。それでいて左右いずれかから逆位相へ切り返す時も、ロール・ゼロの中立を意識させないほどシームレスに、沈み込みと伸びが緻密にコントロールされている。よってロール感はともないつつも、4輪の接地がまるで薄れない。

ブレーキングで前脚が突っ張ることもなく、ドライバーの意志に応じてヨーを喰っては、積極的に旋回を作り出す。12V MEHVの恩恵か、トラクションの立ち上がり方も適度に鋭く、小気味よい。弱アンダーステアという主張こそ決して曲げないが、ひと昔前の直線番長めいたドイツ車の、フロアは地面と平行であるべし的な、説教めいた挙動と比べたら、大したサービス精神だ。元よりアウディはドイツ車の中でもしなやかさが際立つ乗り味だったが、陽気さが加わった、そんな印象すら抱いた。

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数少ない難をあげつらうなら、3つほど。ステアリングの軽さはイージー・ドライビング時は申し分ないが、ワインディングなどでは舵角や加速度やペダル操作に応じて、もっとどっしりしてくれたら、と思うことがある。ふたつ目は、大きめ舵角をあてるとステアリング裏の9時・3時位置のパドルが行方不明になりやすい。この2点は慣れの問題だが、ラスト1点は乗り心地や穏やかスポーティなハンドリングに寄与しているであろう、抑えめサイズの17インチホイールが、もう少し垢抜けてくれたら。昔のスピードライン風の美シンプルなタイプの方が似合いそう…という辺りだ。

また燃費についてだが、WLTCモードのミックス条件で13.6km/リットルという値に、確かに今どき驚きはない。が、バッド・サプライズではないし、むしろ高速道路条件では15.5km/リットルと、長距離で伸びそうなことを考えれば、久々の本格的な快速スポーツ・ワゴンとして、552万円の車両価格ごと「アドバンスト」は注目に値する。とはいえクワトロがどんなか?も気になるところで、後日、セダンの「A4 45 TFSIクワトロ Sライン」も試してみた。

クワトロでこれなら…と趣旨変えを迫られた!

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先のA4アバントのFF仕様と目立つ違いは、ワゴンとセダンである以外に、ハニカムグリルやフォグランプ周りがよりスポーティ外観であること。同じ2リットルターボの別チューンで、出力が+99psの249ps、トルクが+100Nmの370Nmとスペックごと積み増しだが、可変バルブリフトが2駆では吸気側だったのに対し、排気側となること。そして7速Sトロニックのギア比はまったく同じだがファイナル減速比が上がっていること。他にもオプションのスポーツサスペンションと19インチホイールを装着していた。

結論からいってしまえば、ルーフという背負いモノが小さく、パワー感やそのつき方、トラクションの安定感ばかりか後輪側からプッシュの効く感覚まで、クワトロは2枚ほど上手だった。わざと狭く小さい峠道にもち込んでみたのだが、バイクのような軽快感とキレさえあった。増したトルクやパワーを持て余すどころか、素早くトルクがとり出せる分、結果的にパワーの使い方もトップエンド近くまで欲張れる。

そこに盤石の制動力としなやかなサス、そしてFR気味に後輪側が沈み込みつつ、押し出すようなフィールを醸すクワトロのトラクション…が加わって、楽しくないはずもない。トッピングというより出汁ごとパンチが効いている。これだけの内容で2駆のアバントより約70万円高の627万円って、これまた悪くないなと、逆の考えも頭をよぎる。

いずれにせよ、軽くてキレがよくて緻密。そんな乗り味はアバントにもセダンにも地続きだった。知的で柔らかな雰囲気だが、SUV慣れした身体にピリッとくる。そんな新しいA4は、これまでアンチだった人にも一見の価値あるアウディといえる。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

《南陽一浩》

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