来季F1昇格が期待される角田裕毅、今季F2をシリーズ3位で終了

F2の今季最終第12大会、レース1で優勝した角田裕毅。
F2の今季最終第12大会、レース1で優勝した角田裕毅。全 7 枚

2020年のFIA-F2選手権が、F1サクヒールGPと併催の第12大会(12月4~6日)にて終幕。来季のF1昇格が期待される日本の角田裕毅はシリーズ3位となった。チャンピオンは来季ハースからF1に参戦するミック・シューマッハが獲得している。

Carlinチームで自身初のF2シーズンを戦った日本の20歳、角田裕毅(つのだゆうき)。2018年のFIA-F4日本チャンピオンで、ホンダとレッドブル、双方のジュニアプログラムに所属する新進気鋭である。角田は今季のF2で第10大会までに2勝をあげ、ポイントランキング3位に位置して最終のバーレーン連戦(2大会4レース)を迎えていた。だが、前の週の第11大会(F1バーレーンGP併催)ではジェットコースターのようなレースウイークを過ごすことに。

第11大会はバーレーン国際サーキットの5.412kmコースでの戦い、まずフリー走行ではいつも通り“すぐに速い”ところを見せて角田は3番手につける。ところが予選ではノータイムに終わってしまい、レース1は最後尾22番手発進となった。だが、このレースを角田は6位で終えてみせる。

そしてレース1の決勝上位8位までをリバースに配置したスターティンググリッド(9位以下は順位通り)から競われるレース2決勝は、3番グリッドからの発進。しかし1周目の接触でタイヤにパンク症状が出てしまい、予定外のピットイン……。レース2は15位という最終順位に甘んじることとなった。

これら一連の結果により、角田は今回の最終第12大会(F1サクヒールGP併催)、バーレーンの3.543kmコースでの戦いを前にランキング5位に後退してしまっていた。ただ、3位とは5点差、4位とは2点差の大接戦状態で、3位は充分に射程圏内である(F2は1大会最大48点獲得可能)。

迎えた最終第12大会、角田は金曜にフリー走行でトップを獲り、予選でも今季4回目のポールポジション(レース1のポール)を獲得する。これで4点を加算し、この段階でランキングを4位に上げた。3位とは1点差だ。

土曜に実施されるF2のレース1決勝は、タイヤ2スペック使用義務(実質的なタイヤ交換義務)ありの設定。角田は1周目に3番手まで順位を下げはしたが、優勝戦線で戦い続け、終盤に首位に立って今季3勝目を飾った(レース1では2勝目)。ランキングでは3位に上がり、4位に対しては15点リード、2位からも15点差という状況に変わる。

そして日曜のレース2決勝、前述のリバースグリッド制により、角田は8番グリッドからのスタートだ。レース2はノーピットの行ったきりが基本の設定、今季F2最後のレースで角田は2位となり、シリーズ3位でシーズンを終えた。最終大会はポール、優勝、リバースグリッドからの2位と、準パーフェクト級の成績。最終的なシリーズ2位との差はわずか1点だった。

2020年のF2チャンピオンはミック・シューマッハ、シリーズ2位はカラム・アイロット。シューマッハとシリーズ5位のニキータ・マゼピンは来季、ハースF1チームのレースドライバーになることが既に発表されている。

角田以外の日本勢では、佐藤万璃音がシリーズ22位(最高位8位)。シーズン途中までの参戦だった松下信治はシリーズ15位(1勝)にランクされている。

角田は来季2021年、F1のアルファタウリ・ホンダでレースドライバーとなることが有力視されているが、そうしたストーブリーグ動向と同時に、F1に参戦するためには“F1の免許証”スーパーライセンス(SL)の取得が必須とされる。数年間のいろいろなシリーズでのシーズン総合順位をポイント化して、その合計が基準を満たしていることが基本的な取得条件となる“SL取得ポイントシステム”は規則が煩雑かつ流動的なことで知られ、角田の取得条件についてもいろいろな報道があった。とはいえ、F2のシリーズ3位以内は細かい話を抜きにした“一発合格要件”である。

(*ホンダの公式サイトによれば、最終大会のレース1を終えたところでシリーズ5位以上が確定し、この時点で角田は自身のSL取得条件を達成したとされる)

角田裕毅のコメント(最終大会レース2終了後)
「アップダウンの激しいシーズンでしたが、ミスをしたことで成長できたところもありました。最後にいいかたちのレースができて、結果としてランキング3位となり、目標であるSLの条件をクリアできたことはとても嬉しいですし、これまでサポートしてくれたチームや関係者のみなさんには、とても感謝しています。応援してくださったファンのみなさんにも感謝しています。本当にありがとうございました」

SL取得条件はクリアした。でも、F1に参戦するためにはストーブリーグでの最終的な勝利が必要だ。やはりF1への道はいつの時代も険しく、現に今季F2で最終大会のレース2まで王座獲得の可能性を残して戦い、シリーズ2位となったアイロットは来季のF1レースシート獲得がほぼ絶望とされる。

そんな厳しい環境のなかでも、角田はまた一歩、F1へと近づいた。F2初年度でありながら金曜のフリー走行や予選ですぐに速さを見せることが多かった角田は、今季ルーキー最上位のシリーズ順位という結果以上にその内容面も評価が高いものと見られる。最終大会での素晴らしい結果と内容も後押し要素になるだろう。

角田は11月上旬、レッドブル系列で同じくホンダ製パワーユニットを搭載してF1を戦っているチーム、「アルファタウリ」の2018年型マシン(トロロッソSTR13)でのテストも経験済み。F1最終戦アブダビGP明けの火曜日(12月15日)にアブダビで実施される“F1若手テスト”にもアルファタウリ・ホンダから参加することになっている(アブダビGPでの金曜フリー走行1回目=FP1出走の可能性もあるか?)。

アルファタウリ・ホンダの来季レースドライバーにはピエール・ガスリー(今季イタリアGP優勝者)の残留が決まっているが、残り1シートの発表はまだない。2014年の小林可夢偉(当時ケータハム)以来となる日本人F1レースドライバー誕生なるか、期待せずにはいられないところだ。

[追記] 12月8日、アルファタウリは15日にアブダビで開催される“F1若手テスト”での角田の起用を正式発表した。11月上旬のテスト時に陣営首脳がテスト後のコメントで明言していたことが正式アナウンスを迎えたかたち。角田は「(11月のテストと違い)他のチームと一緒に走る公式テストで2020年型マシンに乗ることになるので、本当に待ち遠しく感じています。学べることをすべて吸収し、確実に自身の成長につなげたいと考えています」とコメントしている。

《遠藤俊幸》

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