工期遅延を1年半から1年へ…国交省が北陸新幹線敦賀延伸問題の中間報告書を公表

敦賀延伸延期の要因のひとつとなった北陸新幹線加賀トンネル。写真は北陸本線の直下に位置する中工区金沢方切羽での工事の様子。
敦賀延伸延期の要因のひとつとなった北陸新幹線加賀トンネル。写真は北陸本線の直下に位置する中工区金沢方切羽での工事の様子。全 5 枚

国土交通省は12月10日、北陸新幹線金沢~敦賀間の事業費増や工期遅延が見込まれることになったことに対する原因究明や再発防止策に関する中間報告書の内容を明らかにした。

同区間は2025年度末の開業を目指して、2012年6月に着工。2015年1月には開業時期を3年前倒しした2022年度末とされ工事が進行。2020年11月1日時点で用地取得率が99%、土木工事着手率が100%に達している。

しかし、2019年10月に貫通した加賀温泉~芦原温泉(あわらおんせん)間の加賀トンネル(5.463km)におけるひび割れや、敦賀駅部の工事遅れといった「不調不落」が相次いで発生し、工期が1年半ほど延びる見込みとなった。これにより、大きく関係する福井県では動揺の色を隠せず、観光業や都市計画で大きな打撃を受ける懸念が指摘されていた。

累積の事業費についても、2019年3月に工事実施計画が変更認可された際、2000億円増の1兆4000億円に。その後、徐々に予算や費用などの金額が増すことを意味する「増嵩」(ぞうすう)と言われる動きが続いた。

2019年春頃には入札が集中したことにより、コンクリート桁工事を中心に不調不落が頻発し、秋頃には発注金額が増嵩。その後も急速な施工によりさらに増嵩し、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が今年に入って事業費を精査した結果、5月には国交省鉄道局(鉄道局)へ3000億円の増嵩が必要であることが報告されたという。

とくに、延伸区間で唯一、駅舎工事に着手していない敦賀駅工区の遅れは深刻で、2018年4月に予定より1年遅れで土木工事に着手したものの、必要な要員や機材が他工区に流れたことから遅延回復が進まず、今年2月には土木工事と建設工事の同時施工が困難と判明。7月には建設工事と電気工事の同時施工も困難であるとして、鉄道局へ2年程度の遅延が報告されていた。

このような経過を受けて赤羽一嘉国土交通大臣は11月13日に開かれた会見で「現在の工期短縮策の検証、更なる工期短縮策・事業費縮減策等の検討、今般の工期遅延・コスト増額に至った事実関係の検証、そして、原因究明・再発防止策の検討など、こうした観点からの検証が必要」として、11月17日には「北陸新幹線の工程・事業費管理に関する検証委員会」と題した最初の会合を開かれ、原因究明や再発防止策を検討。12月9日には5回目の会合が開かれ、今回、その中間報告書が公表された。

報告書では、事業費増嵩や工期遅延に至った原因として、工事を統括する鉄道・運輸機構大阪支社の甘い見通し、現場の情報が鉄道・運輸機構本社へ正確に伝わっていない、鉄道・運輸機構本社のチェック機能や鉄道局への報告、鉄道局の鉄道・運輸機構に対する監督・管理が不十分、関係自治体との情報共有が早い段階で行なわれていない、といった点が指摘されている。

これらを改善する案として、情報共有のあり方や現場に近い司令塔となる組織の配置、外部の有識者による定期的な助言を可能とする体制づくり、鉄道局の管理監督体制の整備、関係自治体との定期的かつ綿密な情報共有や管理を行なう仕組みの導入が提案されている。

今後の対策としては、工期遅延について人員やクレーンの増設、監査・検査の効率化などを図るとしており、敦賀駅工区において自然災害や新型コロナウイルスの感染拡大、掘削部の地盤が地下水の上向き圧力により持ち上がる現象を意味する「盤ぶくれ」の進行、労働災害、監査や検査における不適合箇所の発生といった「リスク要因」を想定に収めた場合、遅れは1年程度に留められる見込みになるという。

事業費については、工事短縮策を一部中止するなどして増嵩を抑制。リスク要因を想定に収めた場合には、増嵩額の2880億円を222億円程度圧縮した約2658億円に留められる見込みになるという。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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