ゼンリンが「沖縄MaaS」を開始---乗車券と施設を連携、観光型MaaSの実証事業

12月23日、ゆいレール「てだこ浦西駅」で開催された沖縄MaaS・サービスインセレモニー
12月23日、ゆいレール「てだこ浦西駅」で開催された沖縄MaaS・サービスインセレモニー全 20 枚

地図大手のゼンリンは12月23日、沖縄県内7自治体と4企業で構成される沖縄MaaS事業連携体の一員として、離島を含んだ沖縄県全域における「沖縄MaaS」のサービスを開始。23日にはそのスタートを記念したセレモニーをゆいレールの終点「てだこ浦西駅」で開催した。

公共交通と観光/商業施設の連携で公共交通の分担率を高める

沖縄MaaSは、国土交通省の「令和2年度日本版MaaS推進・支援事業」の実証事業として38事業(2020年度)の中から採択されたもので、沖縄県全域のモノレール、バスなどの乗車券や観光/商業施設、その他のサービスとの連携を目指すことを目的としている。参画した7自治体は石垣市、浦添市、宮古島市、今帰仁村、伊江村、座間味村、竹富町の各市町村と、沖縄都市モノレール、琉球銀行、TIS、ゼンリンの4社。

沖縄県では現在、地域住民の自家用車、旅行客のレンタカー利用率が高く、全国と比べると公共交通分担率が低い。そのため、那覇市中心部などの渋滞の深刻化が大きな課題となって来た。沖縄MaaSでは、公共交通と観光/商業施設の連携を柱とした施策で公共交通の分担率を高め、そうした課題に対してMaaS事業全体として利便性向上を目指すことが目的。2020年度は国内観光客を主な対象として実証を進める。

また、新型コロナに対する新しい生活様式として電子決済(キャッシュレス決済)が推奨されている中で、実証事業ではQRコード決済を活用することを基本としており、事業者・利用者双方の接触機会を低減する感染症対策への効果も期待できるとしている。

ゼンリンは実証事業における取り組みとして、今回のMaaSサービスによって取集された様々な移動データを同社が保有する地図情報に重ね、詳細な交通ネットワークに紐付ける方針。これによって地域ごとに異なる交通課題の可視化し、地域に合わせた移動の最適化を目指す。さらにゼンリンは今後、地域における様々な移動の課題について、移動者への最適経路や寄り道の提案に貢献する分析技術の開発及び、地域活性化につながるソリューションの提供によって解決していく考えだ。

2021年2月からの第2フェーズでは石垣島など離島へも拡大予定

実証事業は12月23日からを第1フェーズとし、一部事業者のチケットを電子化したサービスを開始。2月以降を第2フェーズとして石垣市や宮古島市など離島も事業対象に含め、今後はさらなるサービスの連携を目指していくスケジュールとなっている。

23日に開催されたセレモニーではその第1フェーズで展開される内容が紹介された。それによると、「ゆいレール」の経営母体である沖縄都市モノレールをはじめ、沖縄本島で運行するバス会社3社(カリー観光バス/東京バス/やんばる急行バス)、沖縄美ら海水族館と首里城公園が連携。QRコードを使った電子チケットで各交通機関を乗り継ぐことができ、施設へお得に入場できるセットチケットも販売する。

具体的には、サービスの中核企業である沖縄都市モノレールが終日乗り放題券や24時間/48時間乗車券を提供。それと連携するバス会社として、カリー観光バスは本島で展開する3路線と全線乗り放題券を、東京バスでは沖縄本島での2路線に加えてモノレールと連携する全線乗り放題乗車券を販売する。距離が比較的長い路線を運行するのがやんばる急行バスで、運行中の3路線を対象としつつ、その中にはゆいレールの終点である「てだこ浦西駅」から今帰仁までを結ぶルートも含む。セット割りには沖縄美ら海水族館と首里城公園の入場券も対象となる。

セレモニーでは、沖縄都市モノレールの美里義雄社長が「沖縄MaaSにより今帰仁村とゆいレールがやんばる急行バスで結ばれ、交通形成の要になることを期待したい」と挨拶。また、浦添市の松本哲治市長は「浦添市は県都那覇に隣接した交通アクセスに便利で立地に優れた特徴がある一方で、地域内の公共交通を活用した観光施策に課題がある。沖縄MaaSはその課題解決の大きな力となる」と沖縄MaaS実証の成功に期待を寄せた。

実証事業の検証を通してサービスの使い勝手を高めていく

この後、QRコードを活用したサービスについて、TIS・サービス事業本部の中田悠紀子氏が説明した。既にゆいレールではQRコードによる改札を実現しており、今回はこのサービスを軸に展開することとなった。利用する際にはあらかじめ本実証のサイトへアクセスして利用登録することから始まる。登録を終えて希望のチケットを購入し、その後で表示されるQRコードによってゆいレールや接続するバス、セット割りされている各施設への入場が可能となる仕組みだ。

セレモニー後に利用して気付いたのが、チケットの購入も、QRコードの表示もすべてWebブラウザベースになっていることだ。そのため、利用者はその都度サイトを開く必要がある。しかも、ゆいレールとバスや各施設ではQRコードの利用方法が異なる。アプリを使えばもっと簡単にアクセスできると思うが、中田氏は「事前に観光客に取ったアンケートでは、沖縄滞在の時だけしか使わないのにアプリをダウンロードするのには抵抗がある」との声が多かったという。コストの問題もあるだろう。ただ、今後は「実証で利用者の意見を集約し、継続する中でどう反映していくべきか考えていきたい」(中田氏)とも語った。

なお、4企業の実証事業における役割は以下の通り。
沖縄都市モノレール…代表会社として実証全体の取りまとめ
琉球銀行…キャッシュレス決済の実現、加盟事業者開拓
TIS…「MaaSプラットフォームサービス」を活用したMaaS基盤構築と本事業の企画立案

《会田肇》

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