【ホンダ N-ONE 新型試乗】2週間で450km、乗り比べてわかったターボとNAの違い…中村孝仁

ホンダ N-ONE プレミアムツアラー
ホンダ N-ONE プレミアムツアラー全 27 枚

ホンダ『N-ONE』のターボ車とノンターボ(NA)車を、それぞれ1週間づつ乗り比べてみた。ノンターボは「オリジナル」、ターボ車のグレードは「プレミアムツアラー」である。

軽自動車の使い方は主として街中、あるいは郊外の一般道が多いとの想定で、高速はあまり走らず、もっぱら一般道でその走りの差を比較してみた。結論から言うと、ターボ車はレッドブルではないが、「翼を授かった」クルマであった。

ターボ車とノンターボ車の間にある性能の溝

ホンダ N-ONE プレミアムツアラーホンダ N-ONE プレミアムツアラー
以前から、軽自動車のターボ車とノンターボ車の間にはかなり大きな性能的な溝があって、特にそれが高速道路などでは顕著な差となって表れたものだが、今回先に乗ったノンターボ車では、驚くほどその性能が改善されていて、高速に乗っても非力さを感じさせるところがあまりなかった。

勿論、主眼に置いていたのが一般道路での使い勝手だったので、高速走行区間が短く、特に登坂部がなかったから非力さを味わうことがなかったのかもしれない。いずれにせよ、N-ONEのポテンシャルは、ノンターボであっても性能的にはそれほど不満を感じるものではないと結論付けていたのだが、ターボ車に乗るとやはりその差は歴然であった。

正直なところ、今回のN-ONEは改良のためのリソースをネガ潰しに使っていると言って過言ではなく、デザインは基本ほぼ何も変えていないからもっぱら乗り心地や静粛性といったところにリソースの多くを費やしている印象が強い。

ホンダ N-ONE プレミアムツアラーホンダ N-ONE プレミアムツアラー
エンジン性能は変わっているわけではないのだが、例えばCVTの最適化などを行ったり、ターボエンジンでは電動ウェイストゲートバルブを採用するなどして、レスポンスの向上を図った結果、従来と比較して判で押したような64psという絶対値や最大トルクなどに変化はないものの、パーシャル領域での改善があったのか、従来車よりもスイスイと走る印象は間違いなく向上している。

それがノンターボ車の印象を押し上げていたのだが、こうした改善は当然ながらターボ車にも当てはまって、別に競争をしているわけではないのだが、信号待ちからなどの加速では明らかに他の普通車よりも前に出る確率が高かった。勿論アクセルの踏み込み具合は至って普通で、でもだ。

「オリジナル」と「プレミアムツアラー」の違い

ホンダ N-ONE プレミアムツアラーホンダ N-ONE プレミアムツアラー
オリジナルとプレミアムツアラーを比較すると、まず外観が違う。グリルなどのデザインが異なりオリジナルがグリルの存在を消したデザインなのに対し、プレミアムツアラーはクロームで縁取られた立派なグリルを持つ点が異なる。また、性能に合わせてタイヤサイズもオリジナルの14インチから15インチに引き上げられ、ホイールはテッチンからアルミに、タイヤはオリジナルのダンロップ・エナセーブからブリジストン・エコピアに変更された。

エコピアというタイヤはてっきり低燃費タイヤだと思いこんでいたが、確かに低燃費を標榜してはいるものの、今やブリジストンのフラッグシップタイヤに登りつめているのには驚いた。つまり総合性能で最も優れているのがこのエコピアだというわけである。

ホンダ N-ONE プレミアムツアラーホンダ N-ONE プレミアムツアラー
タイヤの影響のよるものかあるいはサスペンションのチューニングが異なるためかはエンジニアと話しをしていないために定かではないが、やはりこのプレミアムツアラーの方がオリジナルと比べて若干ではあるが乗り心地に硬さを感じた。といっても、NVHの収め方などは軽自動車の域を確実に超えて、小型車に近い…否、下手な小型車よりははるかに良い。

さすがに燃費の方はノンターボより悪く、あくまでも車載コンピューターの表示によれば、おおよそ200km走ったオリジナルが17.0km/リットル、250km走ったプレミアムツアラーが15.2km/リットルであった。走行シーンはほぼ変わらず、使った高速道路の距離は一緒である。こと燃費に関していえば、やはり今時のハイブリッド車に軍配が上がるようだ。

ターボを選ばずともN-ONEの良さは味わえる

ホンダ N-ONE プレミアムツアラーホンダ N-ONE プレミアムツアラー
冒頭に述べた通り、性能差は顕著である。ただ、以前と違うのはノンターボ車に我慢を強いたドライビング状況が少なくなった(恐らく登坂路や高負荷時では我慢を強いられる可能性はある)。ターボ車は明確な加速時のアドバンテージがあることと、パーシャルからの加速で普通車並みの瞬発力を披露するシーンもあり、マニュアルギアボックスが用意される「RS」グレードでは面白い走りが期待できるのではないかと思われた。

個人的には敢えてターボを選ばずとも十分にN-ONEの良さは味わえると感じる。しかも内装などはオリジナルとプレミアムでほとんどその差はない。

ホンダ N-ONE プレミアムツアラーホンダ N-ONE プレミアムツアラー

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ショッピングセンターに320台の名車・旧車が大集結…第5回昭和平成オールドカー展示会
  2. 『V』クラスより上級のミニバンか? メルセデスベンツが2026年に『VLE』『VLS』導入へ…上海モーターショー2025
  3. 「通勤とか買い物にちょうどよさそう」オシャレ系特定小型原付『ウォンキー』にSNSでは反響
  4. 日産がエルグランドなど新型4車種投入へ…NISSAN START AGAIN
  5. 【VW ゴルフGTI 新型試乗】自動車を運転することが楽しかった時代に引き戻される…中村孝仁
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 東レ、偏光サングラスでの利用を可能にする新たなHUD技術を開発…フロントガラス全面展開も視野に
  2. AI家電を車内に搭載!? 日本導入予定の新型EV『PV5』が大胆なコンセプトカーに
  3. 住友ゴム、タイヤ製造に水素活用…年間1000トンのCO2削減へ
  4. AI導入の現状と未来、開発にどう活かすか? エンジニアの声は?…TE Connectivityの独自リポートから見えてきたもの
  5. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
ランキングをもっと見る