博報堂の生活者発想型MaaSや生活者起点のスマートシティとは?[インタビュー]

博報堂の生活者発想型MaaSや生活者起点のスマートシティとは?[インタビュー]
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2020年8月に富山県朝日町、スズキ、博報堂が連名で地域住民向け移動サポートに関するMaaSソリューション「ノッカルあさひまち」の実証実験を開始すると発表した。これは、ただ単にMaaSを提供するのではなく、博報堂のフィロソフィーである 生活者視点に基づいて設計された“生活者発想型MaaS”であり、新たな公共交通の可能性として注目されている。

また2020年10月に博報堂は、浜松市とMaaSを起点にスマートシティに関して相互に協力する連携協定を締結すると発表した。“生活者起点”のまちづくりに取組むのだという。スマートシティの事業を見渡しても、裏方に徹してきた広告会社の同社が表立って協定を結ぶ初めてのケースといっても過言ではない。

博報堂がMaaSやスマートシティに対してどのように取組もうとしているのか。博報堂CMP推進局の堀内悠氏に聞いた。

ソリューションやテクノロジーありきでは上手くいかない

---:生活者発想型MaaSとは?

博報堂は「生活者発想」と「パートナーシップ」をフィロソフィーに掲げ、事業を行っています。

生活者発想とは、人々を単に「消費者」として捉えるのではなく、多様化した社会の中で主体性を持って生きる「生活者」として全方位的に捉え、深く洞察することから新しい価値を創造していこうという考え方です。博報堂は1981年に生活者研究をするシンクタンク、博報堂生活総合研究所を立ち上げました。

生活者発想では、生活者の課題やニーズは何かを徹底的に問います。これは、我々がソリューションを持っているから、AI技術などのテクノロジーがあるからといった、ソリューションやテクノジーありきでMaaSに取組もうとする発想とは異なります。

博報堂は数多くのクライアントとお付き合いしています。スズキと博報堂が富山県の朝日町で始めたノッカルを例に、生活者発想型MaaSを説明しましょう。

単純に移動課題を解決することだけに着目するのでは、地域の生活者、特に高齢者にとって便利なサービスにはならないことが多いです。生活者発想型MaaSでは、地域に住む生活者の視点からの課題意識を持ち、移動することがワクワクしたり、暮らし自体が豊かになったりするように設計することで、地域の生活者にとって必要とされるサービスをつくります。このように、真の生活者のニーズや豊かな暮らしに迫って「ノッカルあさひまち」を企画しています。

クライアントのパートナーとして企画から実装へ

---:博報堂の生活者発想型MaaS、そしてその代表例であるノッカルは、暮らしを営む人々の真のニーズや豊かさに迫ることで作られているのですね。

生活者発想はもちろん大切ですが、2つ目のパートナー主義も同様に大切です。私たち博報堂は、クライアントと一緒に考えることを大切にしています。

博報堂のパートナー主義も少しずつ時代とともに変化しています。世界が大きく変化している今、クライアントも我々広告会社も変化していかなければなりません。これまでの考え方やスタンスでは、だんだんと太刀打ちできなくなってきています。博報堂は、より良い社会の実現に貢献するための「社会課題の解決」と当社やクライアントの「経済インパクトの最大化」のかけ合わせにチャレンジしていきたいと考えています。

MaaSレベル0以下のレベル“マイナス” 1から5

---:御社の「生活者発想」と「パートナーシップ」に基づけば、日本版のMaaSレベルが、新たに定義できるのではないでしょうか?

日本の地方は自家用車の社会です。既存の情報や移動サービスを統合しようとしてもそもそも地方にはないのです。ですから、欧州発のMaaSレベル(レベル0統合なし(鉄道、バス、自動車などの移動サービスが単体で運行)、レベル1情報の統合、レベル2予約・支払いの統合、レベル3提供サービス統合、レベル4社会全体目標の統合)に当てはめて考えようとしても当てはまりません。

朝日町に足繁く通った結果生まれたのが、「生活者MaaSレベル」で、実はMaaSレベルにはマイナスも存在しているのではないか?生活者はマイナス課題の解決こそを求めているのではないか?という気づきです。我々は、高齢化社会や自家用車社会において、生活者の交通課題や生活課題を、レベルマイナス1からマイナス5と定義しています。例えば、マイナス1~マイナス5にかけて、免許返納、職業ドライバーの減少、路線バスやタクシーの撤退、コミュニティバスの赤字問題、地域交通全体の衰退、交通空白地帯、消滅可能性都市、など、日本の地方域では、共通になっている大きな課題を含んでいます。このような現状に向き合い、目の前の交通課題/生活課題を1つ1つ解決することもMaaSが果たすべき役割で、5年・10年先の、日本の交通インフラ/生活インフラの再編を実現したいと考えています。

博報堂のノウハウを社会課題の解決に役立てたい

---:御社はこれまでも地方創生に関わってこられたかと思います。これまでと何が異なりますか?

企画や会議体の運営は担ってきました。しかし、それに基づいて、サービス開発を行ってはいませんでした。

博報堂が得意とすることは、マーケティングです。今までは、クライアントの商品やサービスにおいて、各市場での生活者ニーズや課題を解き、事業戦略や販売戦略を描いてきました。これからは、マーケティング領域で培った生活者発想や、課題解決のためのクリエイティビティを活かして、日本や世界の社会課題にも貢献していけるのではないか。と考えています。

《楠田悦子》

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