【アルピナ XD4 & XD3 新型試乗】BMW Mモデルとの違いは「快適にハイパワーを楽しむ世界観」…塩見智

アルピナ XD4
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アルピナに触れる機会があったら確かめてほしい。ボンネットフードを開け、右前輪のストラットタワーに目をやると、打刻された製造番号がバッテンで訂正され、すぐ下に別の製造番号があらためて打刻されている。BMWとして製造された車体が、途中でアルピナに生まれ変わったという印だ。

1965年にBMW1500(いわゆるノイエクラッセ。現在の5シリーズの系譜にあたる)用のキャブレターユニットを開発したところ、性能がよく、BMWに認められたのがアルピナの始まりだ。以来、歴代のBMWのみをベースとし、エンジンのみならず、クルマ全体に手を加え、年間1200~1700台を世界で販売している。

アルピナはどう生産されるのかというと、BMWの工場の生産ラインが一定時間、アルピナのために空けられ、アルピナ専用ラインとなって稼働するのだ。しかるべきタイミングで、別の場所で組み上げられて持ち込まれたエンジンが搭載される。そして新しい製造番号が与えられるのだ。アルピナが「我々はチューナーではなくメーカーである」と主張する所以だ。この製造、流通体制も見ると、アルピナとBMWがいかに特異な関係かがわかるというもの。

エンジンが違う、だけではない

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今回、山梨県・山中湖畔のワインディングロードで、BMWアルピナの『XD4』と『XD3』に乗った。XD4は、BMW『X4』を“素材”とし、日本仕様のX4には設定のない直6ディーゼルターボエンジンにアルピナが開発したクワッドターボ(シーケンシャルターボが2つという意味)を付与して搭載する。エンジンが異なるだけではなく、足まわりのセッティングから内外装の仕立てにいたるまで、ひと通り開発し直されている。

例によって外観上の違いは大きくない。チューニングブランドのコンプリートカーにはひと目でノーマルと違うことを主張する派手なエアロパーツが付けられることが多いが、アルピナの場合、中央に「ALPINA」とレタリングされた控えめなフロントスポイラーが付き、定番アイテムである20本のスポークタイプのアルピナクラシックホイールが装着される。試乗車には標準の20インチに代えて22インチが装着されていた。インテリアはX4とほぼ変わらない。

最高出力388ps、最大トルク770Nmのエンジンにとって、一般道を走行するための負荷はアイドリング時のそれとほぼ変わらない。静かで、振動はきわめて少ない。試乗中、ディーゼルであることを意識することはなかった。

問答無用にパワフル、だけど過激さは感じない

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鋭い加速を試みると、エンジン回転数が4000rpmあたりまで鋭く上昇し、ギアが上がって少し回転が下がる。それを繰り返すと速度はみるみる上がっていくのだが、回転数はタコメーターを見て、速度は景色の流れ方を見てわかるだけで、エンジン音がうなったり振動が増すといった変化はない。気づけばもうこんな速度かと驚かされる。

問答無用にパワフルなのだが、不思議なくらい過激さを感じない。スムーズに吹け上がって速度を増すのだが、例えばアクセルペダルをかなり速く深くグイッと踏まないとキックダウンしないしつけになっている。ステアリング操作に対する反応も過敏なところがない。あくまでも切っただけ曲がり、スポーティーを謳うモデルに多い、ドライバーの思惑以上に曲がろうとするような振る舞いを見せない。

サスペンションは独自のチューニングによって、ベースのBMWに対し、明らかに快適方向に振られている。が、試乗車にはオプションの前235/35ZR22、後295/30ZR22 のタイヤが装着されていて、細かな振動を正直に拾って乗員に伝えてきた。標準装着の20インチのほうが快適性は上だろうが、22インチでも決して乗り心地に不満を覚えるほどではないので、見た目と快適性のどちらを優先するか悩ましいところだ。22インチタイヤ&ホイールのオプション価格は50万円。私なら装着しない。

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XD3に乗り換える。BMWのX4と『X3』を乗り比べても本質的な違いがないのと同じで、XD3の走行感覚はXD4にかなり近い。ただし同じ3リットル直6ディーゼルターボエンジンなのだが、こちらはビターボ(一組のシーケンシャルターボという意味)で、XD4のエンジンよりもややチューンの度合いが低く、最高出力333ps、最大トルク700Nmに抑えられている。

一般道で快適にハイパワーを楽しむ世界観

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近頃、BMWがどんどん車種を増やしている。それに伴いハイパフォーマンスモデルもラインアップがきめ細かくなり、どれもかなりレベルが上がった。このため、アルピナはこれまで以上に独特の世界を示す必要がある。独特の世界を具体的に表現するなら「大人っぽさ」だろう。

動力性能は高いが、サーキット走行は考慮せず、あくまで一般道で快適にハイパワーを楽しむことに最適化した乗り心地を提供するのがアルピナだ。BMWのMモデルはサーキット走行を考慮しているため、ひと言で言えば足まわりがハード。電子制御サスを導入する前の時期に比べれば、乗り心地はずいぶんよくなったが、一般道での快適性は依然としてアルピナのほうが上だと思う。その点に、Mモデルよりも高い価格を出せる、出したいという人がアルピナのお客だ。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

塩見智|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1972年生まれ。岡山県出身。地方紙記者、自動車専門誌編集者を経てフリーランス・ライターおよびエディターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。文章はたとえツッコミ多め、自虐的表現多め。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。趣味ゴルフ。日本カーオブザイヤー選考委員。

《塩見智》

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