Ninja ZX-10Rといえば、スーパーバイク世界選手権(SBK)で前人未到の6連覇という偉業を成し遂げたモデル。2021年モデルは、10R・10RRともにエアロダイナミクスを大幅に向上させた点が最大の特長。
2021年モデルの価格は、Ninja ZX-10Rが229万9000円、Ninja ZX-10RRが328万9000円。ホモロゲーションモデルの10RRはほぼ100万円アップという具合で、両モデルとも価格には1カ月目点検・3年間定期点検・オイル交換(オイルフィルター含む)を無償で行うカワサキケアが含まれている。
◆「速いバイクは結果的に乗りやすいバイク」
10RRのエンジンは Pankl社製軽量ピストンを新たに採用しレブリミットを上昇させるなど、サーキットを速く・強く走るための進化はもちろん、ストリートライディングを想定したエレクトロニッククルーズコントロールや、スマートフォン接続機能を備えるTFTインストゥルメントパネルなどの新装備も追加している。
「速いバイクは結果的に乗りやすいバイク」という想いで、サーキット走行初心者にも手が届くような仕掛けと更新をいろいろ追加している。そのあたりを、メディア向け発表会に登壇した川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー 技術本部 西山隆史 開発リーダー、同 山本智 車体設計担当、同 阪口保彦 エンジン設計担当、株式会社ケイテック 実験部 苅田庄平 開発ライダーがそれぞれ説明した。

◆「2021年モデル開発の最大テーマは、空力性能を上げること」
「Ninja ZX-10R・10RR 2021年モデル開発の最大テーマは、空力性能を上げること。車体とエンジンの組み合わせはほぼ完成形に近い。足りないところは空力だった。そこでウイングとデザインを刷新し、機能とスタイルを両立させた」と西山隆史 開発リーダーがいうように、2021年モデルは、この空力を追求したモデルといっていい。

◆ライディングモードやクルーズコントロールを追加する理由
2021年モデルで新たに追加・アップデートした機能は、レブリミット引き上げ(10RRのみ)、Pankl 社製軽量ピストン採用(10RRのみ)、インテグレーテッドライディングモード、エレクトロニッククルーズコントロール、TFT カラーインストゥルメントパネル、スマートフォン接続機能などがあげられる。
まずインテグレーテッドライディングモードは、あらかじめ設定されたスポーツ・ロード・レインのセッティング、またはマニュアルセッティングのライダーを選べるS-KTRC・パワーモード連携モードセレクト機能。トラクションコントロールや出力特性をライディング条件に合わせて簡単に設定できる。
新追加されたエレクトロニッククルーズコントロールは、左側のハンドルスイッチで設定。スイッチを押すだけでシステムが起動、スピードを設定すると電子制御スロットルバルブがエンジンの出力を調整し、スピードを維持。手元の + と − のボタンで速度設定を変更できる。

◆TFTカラー液晶インパネやスマホ Bluetooth 接続も
またインパネには、コンパクトな4.3インチフルデジタルTFTカラー液晶スクリーンを採用。またこのTFTカラー液晶インパネの上部には、レーススタイルで見やすい別体型シフトランプを装備。サーキット走行時にシフトアップタイミングを示すシグナルを表示してくれる。

◆「スーパーバイク世界選手権で勝ち続けているから」
また1リットル水冷4ストローク並列4気筒エンジンのまわりでは、オイルクーラーが進化。スーパーバイク世界選手権参戦マシンからのフィードバックで、これまでの水冷式から空冷式オイルクーラーを新採用。阪口保彦 エンジン設計担当は「ハードに走るときに、空冷式オイルクーラーは効果を発揮する」とも話していた。
「10RRは、レブリミットを400回転上げて14,700回転に。ピストンの軽量化を図りながら耐久性を確保し、メンテナンスサイクルは前モデルと同様にしている点も進化ポイント」(阪口保彦 エンジン設計担当)
「自由に使える回転幅が増え、さらに余裕が出た。軽量ピストンに変更されていることで、エンジンの吹け上がりがさらに軽やかになったことを体感できるはず」(苅田庄平 開発ライダー)

「車体関係の刷新はあえて考えてなかった。なぜかというと、スーパーバイク世界選手権で勝ち続けているから。ドゥカティのスコット・レディングも『勝ってるからこれでいいんだ。変える必要はない』と言ってくれた。そこで、勝ち続けている車体を変えるのはリスクがあるという決断で、この2021年モデルができあがった」