国内二輪4社が交換式バッテリーとステーションの技術仕様で合意…狙いは原付き一種・二種でフリートから街乗りまで

左からホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハの4社による交換式バッテリーの技術標準の合意
左からホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハの4社による交換式バッテリーの技術標準の合意全 5 枚

電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアムは2019年に国内二輪大手4社(ホンダ・川崎・スズキ・ヤマハ)によって設立された。2021年3月26日、その成果のひとつとして、交換式バッテリーの共通技術仕様について4社が合意したことが発表された。

技術仕様は、自動車技術会(JASO)のテクニカルペーパー(TP210003)に準拠する形で、バッテリーの構造、特性、保護回路、充電に関する通信プロトコル、さらに交換インフラとなるステーション(バッテリーステーション)に関する規格がまとめられている。ただし、大きさ、重量、容量、形状などは協調領域の範囲外となり各社ごとの対応、つまり競争領域となる。現時点で、TP21003が一般公開(4月公開予定)されていないので詳細不明だが、設計要件や安全性にかかわる部分の共通化で、価格(コスト)、商品形態、サービス形態は各社ごとの差別化が図られるものと思われる。

規格の合意にあたっては、バッテリーのユースケースやそのスコープ(想定される車種、利用形態、ユーザー層)の調整がいちばん時間がかかったという。二輪、四輪ともに、バッテリーのモビリティ利用は用途や条件によって仕様や特性が大きく変わる。共通化が難しいところだが、今回は対象カテゴリを、原付一種・二種にしぼることで必要なスペックを決めた。ユースケースは、今後の展開を見据えてデリバリーやフリート管理用車両だけでなく、一般消費者向けのスクーターも視野に入れている。

規格にバッテリーステーションの仕様が含まれたのはB2Cビジネスに不可欠だからだ。フリート用途なら、充電・交換設備は、たとえば郵便局や店舗、配車拠点にあれば十分だ。しかし、買い物や生活の足として使うバイクの場合、適度なメッシュで交換拠点が必要となる。ステーションの要件も設備や安全に関するもの以外は未定で、コンソーシアムでは、販売店、自治体公共施設、既存のSS、商業施設など限定せずに、幅広く議論する。ただし、インフラについては政府のなんらかの支援や関与が必要なことを繰り返した。

電動バイク用交換式バッテリーの共通規格電動バイク用交換式バッテリーの共通規格

活動がコンソーシアム内で完結しない(できない)のは、バッテリー技術についても同様だ。合意した技術仕様について、知財は開発した個社が管理するが、ライセンスは4社以外にも提供される。ライセンス条件はまだ白紙とのことだが、戦略は共通バッテリーの普及・拡大を基本とする。コンソーシアムにおける技術供与や開放は、非常にバランスが難しい。ライセンスホルダーの収益最大化が市場の最大化と相反する要素が多い。協調領域と競争領域の采配に難しい舵取りが必要だが、うまく機能すればバッテリーメーカー、ステーション事業、その他二輪OEMの参入が活発になり、市場および個社ビジネスの拡大につながる。

交換式バッテリーは、ホンダが「BENLY e:」で商品化している。しかし、今回合意したTP21003の規格外となる。今後製品化される各社共通バッテリーとしては使えない。ヤマハ、スズキも原付き電動バイクを市販しているが、交換式ではないためこれも対象とならない。つまり、交換式バッテリーの電動バイクは各社スクラッチで開発されることになる。

電動バイク用交換式バッテリーの共通規格電動バイク用交換式バッテリーの共通規格

今回の合意は、二輪のうち原付一種・二種向けの交換式バッテリー(と交換ステーション)に関する部分だ。従来からの車載固定式バッテリーの電動バイク、中型・大型バイクの電動化については、4社ともにこれまでどおり技術開発・商品開発を続ける。

《中尾真二》

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