実証実験、現場のホンネ…自動運転の最終目的とは【岩貞るみこの人道車医】

前列右より、経産省・江島潔副大臣、内閣府・三ツ林裕巳副大臣、国交省・渡辺学審議官。後列右より、東京大学 須田義大教授、内閣府SIP-adus・葛巻清吾PD。スクリーンは、右上から時計回りに、沖縄県北谷町・野国昌春町長、滋賀県東近江市・小椋正清市長、秋田県上小阿仁村・小林悦次町長、島根県飯南町・塚原隆昭町長、福井県永平寺町・河合永充町長。
前列右より、経産省・江島潔副大臣、内閣府・三ツ林裕巳副大臣、国交省・渡辺学審議官。後列右より、東京大学 須田義大教授、内閣府SIP-adus・葛巻清吾PD。スクリーンは、右上から時計回りに、沖縄県北谷町・野国昌春町長、滋賀県東近江市・小椋正清市長、秋田県上小阿仁村・小林悦次町長、島根県飯南町・塚原隆昭町長、福井県永平寺町・河合永充町長。全 7 枚写真をすべて見る

2021年3月25日、内閣府SIP-adusによる地域自動運転サミットが開催され、パネルディスカッションでは第一部が、自治体、第二部が事業者の方々に登壇いただいた。

私がモデレータをさせていただいた第一部の目的は、実証実験を行っている自治体をつなぐ、というもの。それぞれが抱えている問題を個別ばらばらに解決するのではなく、課題を共有し、解決策をヒントにしながらよりよい運営につなげてもらおうというものである。また、こうした動きを全国の自治体に知ってもらい、新たに実証実験に参加してもらうという狙いもある。

つなぐとか、つながるとか、そんなことは、今やSNSをはじめさまざまなツールがあるのだから、自由にやればいいのではないか。そういわれるかもしれない。たしかにそうなのだが、しかし、自治体の現場はどうだろう?

高齢者の移動問題解決と位置付けられて実証実験に参加している自治体の多くは、山間部などの地域がほとんどだ。いきなり見知らぬ自治体に向けて「友達になって」と連絡をするなど、めっそうもないのである。そう、だから、つながるきっかけを作るのだ。

実証実験の現場は試行錯誤の連続

地域で実証実験に携わる自治体の方々。右上から時計回りに、島根県飯南町、福井県永平寺町、秋田県上小阿仁村、沖縄県北谷町、滋賀県東近江市。地域で実証実験に携わる自治体の方々。右上から時計回りに、島根県飯南町、福井県永平寺町、秋田県上小阿仁村、沖縄県北谷町、滋賀県東近江市。
登壇してもらったのは、自動運転の実証実験をいち早く行ってきたフロントランナーの方々。国交省施策である道の駅を中心とした「地方部における自動運転による移動サービス」からは、秋田県上小阿仁村の「かみこあに」、滋賀県東近江市の「奥永源寺渓流の里」、島根県飯南町の「赤城高原」(それぞれ「」は道の駅名)。さらに、国交省と経産省施策である「ラストワンマイル自動運転」から、福井県永平寺町と、沖縄県北谷町と、合計5つの自治体である。

これらの自治体の活動について報道などでは、「やりました!」「できました!」「喜んでもらいました!」という明るい言葉が並んでいる。しかし、実際に行っている現場は、試行錯誤の連続なのだ。そう、何事も、0から1を作るのは本当に大変なのである。

WEBとオンラインのハイブリッド開催で、自治体の方々は現地からWEB参加。目の前に聴衆がいなかったこともあり、最初から本音が飛び出してくる。

道の駅「かみこあに」からは、「ここにいる自治体はすべて、同じヤマハ製のカートを利用しているが、うちだけ旧型なので、新型にしてもらいたい!」と、先制パンチ。そりゃそうだ。いくら実証実験でまだ車両代は負担していないとはいえ、国交省の手前、ふだんはなかなか言えないとはいえ、きれいな車両を使いたいのは本音中の本音だろう。

遠隔監視・操作型の自動運転車による無人自動運転移動サービスで注目を集めている永平寺町も「無人なので、乗りたい人をうまくキャッチするのが難しい」という本音がぽろり。

各地の課題は似たものが多い

今回も、イラストによる議事録、グラフィックレコーディングが活躍。こちらは、第一部の地域自治体のパネルディスカッションの内容今回も、イラストによる議事録、グラフィックレコーディングが活躍。こちらは、第一部の地域自治体のパネルディスカッションの内容
そして、各地、それぞれ目的や内容、自治体の規模などは異なるものの、やはり、課題は似たものが多い。

(1)初期に整備する電磁誘導線などの費用はどうするか
(2)乗客数をいかに増やし、安定経営を行うか
(3)車両のメンテナンスは、どのようにするか
(4)乗車だけでなく、ほかの活用方法はないか

いずれも、もともと高齢化などで人口が少ない地域であるものの、サステナブルに経営を続けていくために奮闘していることがうかがえる。

そんななか、町の人に車両のニックネームをつけてもらったり、ラッピングカーを作ったりというアイディアや、観光客からニーズを聞いて新たなルートを開拓したり、乗員サービスにつなげたりという話も出てきた。

さらに、自動運転車両に「乗ってみる」という目的を作り、外出機会を増やして高齢者の健康促進につなげたり、子どもたちに経験してもらうことで、人材育成にもつなげるという取り組みも見受けられる。

自動運転の最終目的は

第二部のパネルディスカッションは事業者の方々。右から、西日本鉄道・日高悟氏、みちのりホールディングス・浅井康太氏、ZMP・西村明浩氏、BOLDLY・佐治友基氏、Tier IV・加藤真平氏。モデレータは、SIP-adus構成員で国際モータージャーナリストの清水和夫氏。第二部のパネルディスカッションは事業者の方々。右から、西日本鉄道・日高悟氏、みちのりホールディングス・浅井康太氏、ZMP・西村明浩氏、BOLDLY・佐治友基氏、Tier IV・加藤真平氏。モデレータは、SIP-adus構成員で国際モータージャーナリストの清水和夫氏。
つまり、自動運転車両は移動できればいいという話ではなく、住民サービスのひとつとして活用するという目的が見えてくる。最終目標は魅力ある町づくりだ。やはり、住民や観光客などすべての人から愛される町であることがなによりも大事なのである。

どこの自治体も、今の乗客数ではランニングコストも厳しいところがほとんど。国からの補助金をあてにするという手段もあるのだろうが、補助金頼りではサステナブルとはいえない。

自動運転のための技術のさらなる向上は、これからもまだまだ必要だが、同時に、運営についても情報共有と知恵の出し合いがさらに求められている。一気に解決する魔法はないけれど、今回のサミットをきっかけに各地域がつながり、お互いに情報共有しつつ地域の足として育っていくことを期待している。

みなさん、ありがとうございました。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

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