【フィアット パンダクロス 4x4 新型試乗】かけ蕎麦か素うどんのようなクルマ…中村孝仁

フィアット パンダクロス 4×4
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言っておくが4WDである。そして150台限定で既に完売しているのだが、次が間もなくやってくるそうで、このクルマが欲しい人は次を狙って欲しい。

国民食を食べようと思ったら、例えばイタリアでスパゲッティなら「アリオ・エ・オリオ」つまりニンニクとオリーブオイルだけのシンプルなやつを食べればその店の実力がわかると言われる。日本で言えば蕎麦かうどん。純粋に蕎麦の味を吟味するには素のそばを食べるのがイチバン。タイトルにはわかり易くかけ蕎麦と書いたが、まあ冷たいもり蕎麦に限る。うどんだって素うどんがイイ。クルマも同じだ。

その昔ヨーロッパのコンパクトカーを知るには素のモデルが良いなどとよく言われたものだ。今、素のクルマが輸入されることは滅多にない。日本のクルマも素のベーシックグレードは簡素過ぎて、正札の価格を引き下げる役目しか担っていない気がする。

今回試乗した『パンダクロス 4×4』は正確に言えば素のモデルではない。しかし、オートと名の付くデバイスはオートエアコンぐらいなもので、オートヘッドライトだって、オートワイパーだって付いてない。自動格納ミラーもない。全部手動だ。まあ、流石にフロントサイドウィンドーだけは電動化されているが、当然ながらリアはレギュレーターウィンドーである。なので、限りなく素のクルマといっても差し支えない。

「感じる」クルマ

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3月のとても暖かくなった日にこのクルマを借り出した。車両を引き取りに行くと、「すみません、まだタイヤがスタッドレスのままなんです」と言われたが、さして気にもせずに街に乗り出した。そこで抱いた思いは「感じる」ということだった。

暖かさも手伝って、敢えてエアコンをつけず、窓を開いて春の空気を満喫した。信号待ちをすると隣のトラックからディーゼルのカラカラという音が…。さらに次の信号では無音の乗用車が止まった。へぇ~、こんな感じなんだと、今更ながら雑踏の音を感じた次第。桜吹雪もじかに見た方が(ウィンドウを通してよりも)綺麗だし、空気感も風の爽やかさもすべてとても新鮮だった。

こんな感覚は久しく味わったことがなかった。近年の自動車はオープンカーでもない限り、ほとんどは閉鎖空間で過ごすことが多い。素のモデルだからこそ、こんなことをしたくなるのかもしれない。

思いのほか力強くて軽快な875cc

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ツインエアと称する2気筒ターボエンジンは、排気量たったの875cc。あとちょっとで軽自動車の枠に入るサイズでしかないのだが、こいつが思いのほか力強くて軽快だ。デフォルトではエコが選択されてしまい、その場合のパフォーマンスは77ps、100Nmである。ところがこのエコスイッチをオフにするとパフォーマンスは一気に85ps、145Nmに跳ね上がる。

最大トルクはノーマルモードで1900rpm、エコモードでは2000rpmで発揮されるのだが、エコから走行中にノーマルモードに切り替えると、タガが外れたといえば少し大袈裟かもしれないが、思い出したように俄然速くなる。

トランスミッションは6速MT。そもそもMTは今時稀少車の部類に入るが、センターコンソールの後ろ側にほんの少しだけ掘りを入れて、左足を休めるスペースを確保しているのだが、こいつが予想外に快適さを演出し、同時にちょっと気合を入れた時のコーナリングでも体を支える踏ん張りとなる有り難いものであった。

ついついエンジン回転を引っ張りたくなる

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メーターディスプレイにはシフトアップを促す表示が出るのだが、勿論それに従ってシフトすればきっと燃費も良く普通に走るのだろう。でも、オートバイ感覚の2気筒という性格上、どうしてもその音から感じ取れる常用回転は、その指示されたシフトアップポイントよりもだいぶ高く、ついついエンジン回転を引っ張りたくなる。だから目いっぱい引っ張ろうとすると、今度はタコメーターがオーバーシュートしてすぐにレブリミットを超える。

そもそも今時、レブリミットいっぱいまで引っ張る必要にあるクルマなんて軽自動車でもなかなか無く、「使い切る」とはまさにこのクルマのようなことを言う。それに、そこまで引っ張ってもエンジンが悲鳴を上げることはまずない。それこそ、まだまだ…と言われているような気分になる。敢えて言うが、常用回転域は2500rpmよりも上だ。その状況を維持する限りとても快活で小気味よい走りをする。

烈に欲しくなるクルマの1台

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ほとんど素のクルマだから、室内に使われる素材はほとんどハードプラスチックなのだが、そのハードプラスチックにもPANDAの文字を順不同にエンボスしてあるのも楽しい演出。それにクロスの顔つきは他のパンダとはだいぶ違ってやはりそれらしさを演出している。

ステアリングはパワーアシストを持つが、それがシティと呼ばれる軽い操作で回せるポジションとノーマルの2種がある。重さ的にはさして変わらないのだが、ノーマルに入れると切り始めの抵抗感が大きく、高速では俄然直進性が良くなる。

年に数回猛烈に欲しくなるクルマが出現するのだが、パンダクロスはそんな1台だった。
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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

《中村 孝仁》

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