「センサーの塊」な自動運転車、整備工場が直面する高いハードルとは【岩貞るみこの人道車医】

レベル3自動運転を実現したホンダ レジェンド。フロントバンパーだけでも多数のセンサーやカメラ類が取り付けられている。
レベル3自動運転を実現したホンダ レジェンド。フロントバンパーだけでも多数のセンサーやカメラ類が取り付けられている。全 2 枚

レジェンド「ぶつけたら高そうだなあ」

先日、世界初の自動運転レベル3機能を持つ、ホンダ『レジェンド』に試乗させていただいた(試乗記、アップしてあります)。乗りながら思ったのは、「ぶつけたら高そうだなあ」ということだ。

【画像全2枚】

私は、車両保険に入っていない。以前、バブル期に泡まみれになってポルシェに手を出し(女の60回ローンです!)、ぶつけたら大変と車両保険に入ったら、年間の保険料が50万円近くになって倒れかけたことがある。以来、自爆事故はしないと心に誓って車両保険には入らないことにしたのである。

しかし、ここへきて状況が変わってきた。鼻先やオシリのバンパー部分に運転支援技術のセンサーが組み込まれ、ちょっとぶつけただけで修理代ン十万円の世界に突入してきたからである。

それまでは、バンパーなんて足で蹴っ飛ばして(蹴りません!)まっすぐになればいいと思っていたのに、やれ、被害軽減ブレーキだ、それ、ブラインドスポットモニターだと、四隅に技術がてんこもり。そこへ、レベル3のレジェンドの登場だ。全方位センサーでがっちがちである。ちょっとぶつけただけで、すぐ修理。ちょっとこすっただけでも、すぐにエーミング? めちゃめちゃ高くつきそうなのだ。車両保険、入ろうかな。あ、レジェンド持っていないんだった。

「エーミング」を行うための整備工場の条件

「エーミング」。それは、ついているセンサーが対象物を正確にとらえているかどうかを確認して調整する作業のこと。レジェンドが登場する前から、運転支援技術がどんどん搭載され、整備業界は右往左往である。

エーミングを行うためには、人+機械+場所の3点セットが必要になる。技術のある人、ちゃんと調整するための専用機械(数千万円!)、そして広くて平らでほかに物が置かれていないスペースである。

2021年4月からは、整備事業者に対して特定整備というカテゴリーが登場し、認定された工場でないと整備できないことになった(現在は移行期間中なので、認定なしでも条件によりできる)。

人は教育すればいい(大変だけど)。
機械も買えばいい(高額で設備投資して元がとれるか心配だけど)。
でも、場所は? 土地を買えばいいと言われても、拡張できないときはどうするの?

認定工場になるための、電子制御装置点検整備作業場(広くて平らな場所)の基準は、6m×2.5m(うち屋内は3m×2.5m)である。ただ、これまであったエンジンなどを分解する分解整備工場の基準は、屋内で8m×4mなので、分解整備工場であれば、簡単にクリアできる。

ところが、レベル3のレジェンドになるとハードルが上がり9m×6mが必要になるという。ギリギリで分解整備の基準をクリアしていた工場は、ここで脱落する。無理やり広げたとしても、地面は平たんでなければならないのだ。その高低差2センチ!

コシヒカリを作るため毎年、魚沼に播種に行っている私は知っている。まっ平で高低差のない地面(田んぼ)を作るのが、どれだけ大変かということを。水は正直。少しでも高低差があれば、苗は均等に水をかぶらない。

大型トラックにもレベル3が採用されたら…

では、レジェンドを整備できる工場は、どのくらい存在するのだろうか。ホンダに確認したところ、答えは、275店! あら、そんなに? 予想以上に多かった。これなら、年間100台のリース販売なら十分に対応できる。

よかったよかったと思うけれど、台数が増えたらどうなるんだろう。いや、それより、今後、レベル3の技術が大型トラックにも採用されることになったら?

大型トラックのエーミングは、乗用車とはわけが違う。もっとひっろーいスペースが必要なのだ。私の知る限り、そんなまっ平で広い屋内スペースは、航空機の格納庫くらいしかないぞ?

クルマに整備はつきもの。レベル3の大型車がばかすか登場するまでに、広いスペースがなくてもエーミングができる技術を早く開発していただきたいと、切に願っている。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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