【ランドローバー ディフェンダー ディーゼル 新型試乗】購入希望者は決断を早めるべきだ…中谷明彦

ランドローバー ディフェンダー110 ディーゼルMHEV D300
ランドローバー ディフェンダー110 ディーゼルMHEV D300全 15 枚

今回は、個人的にも自動車業界的にも非常に注目されているモデルである、ランドローバー『ディフェンダー110 ディーゼルMHEV D300』に試乗した。

人気沸騰中のディフェンダーに「ディーゼルターボエンジン」+「48Vマイルドハイブリッドシステム」を搭載した新しいモデルだ。まだ試乗会すら開催されていない段階で試乗する機会をいただき、関心が高かった分、心が躍った。

ディフェンダー自体は雪道での試乗記等で何度か紹介してきた。従来モデルは、2リットル直列4気筒ガソリンターボエンジン(ハイオク)で、車幅が1995mmもある巨大な車なのだが、車体の大きさからは想像もつかないようなコンパクトなエンジンを搭載しているにもかかわらず、非常に優れた走りに感心していた。

今回の「ディーゼルMHEV D300」は、ディーゼルエンジンということだけでも注目度が高く、登場を待望されていたモデルだ。ハイパワーなガソリンの6気筒モデル「P300」も同時にラインアップされている。

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3リットル直6ターボエンジン+48Vマイルドハイブリッドシステム搭載

エンジンの排気量が3リットルとなり直列6気筒レイアウトのインジニウムエンジンは燃費性能だけでなく、軽油で走れるという経済性も高く、その辺りも含めリットル当たり燃料消費量とランニングコストがどう向上させられているのか興味があるところだった。

今回搭載されている直列6気筒ディーゼルエンジンにはターボチャージャーが装着されていて、フロントに縦置きされるレイアウトだが、エンジンの全長は非常に短く、フロントのアクスルよりもやや後ろ寄りにレイアウトされていてフロントミッドシップに近いようなエンジンレイアウトとなっている。

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6気筒になってもエンジンルームには余裕があり、特にエンジンより前にあるラジエーターとの隙間がかなりゆとりがある。ディフェンダーにとっては、4気筒から6気筒になったとはいえコンパクトに見えてしまう。そこに、ベルト駆動のオルタネータージェネレーターモーターが装備されマイルドハイブリッド化されている。

ディーゼルエンジンの加速フィールを滑らかにするようアシストし、エンジン始動時の駆動モーターとしても機能し、静かでクイックにエンジンスタートさせているのも特徴だ。一方で、6気筒化されることによって排気音が非常に静かになっていて、振動も少ない。加速時にエンジンが発する音色はディーゼルとは思えないほどスポーティで心地よく、エキゾーストサウンドすら楽しめる。

ボンネットフードを開けていればディーゼル車らしいサウンドは聞こえてくるが、ボンネットフードの遮音性能が優れているため、閉じるとガソリンかディーゼルか区別がつかないほどの小さな音量になる。

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車体剛性により滑らかで高級感のある乗り味

走り出すと、これがまた非常に滑らかでスムーズ。車自体は車体剛性があり、ダンパーの動きが滑らかに感じられ高級感のある乗り味になっている。昔、”BMWの6気筒エンジンは「シルキーシックス」”と言われ、「絹のように滑らかにまわる」ということからこのような呼び名がついていたのだが、それを彷彿とさせるくらい静かでスムーズに回るのだ。

タコメーター表示を見ると、レッドゾーンが4500回転から始まっていて、通常は2000回転以下の低い回転数域で走ることができる。

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ディーゼルモデルは最大出力が300ps、最大トルクが650Nm。2リットル直列4気筒ガソリンターボエンジンの最大トルクは400Nmだったから、さらに250Nmもトルクが増えていて、ドライバビリティーは当然優れている。

尚且つトランスミッションには8速のATが装備されていて、高速道路の100km/h巡航では8速で約1350回転と低い回転数でこなせてしまうので、高速巡航燃費はかなり良くなる。

実際に燃費計のメーターを見てみると、高速区間では1リットルあたり13~14kmほどだった。登り区間や加速区間でアクセルを踏み込めば、その分燃費は当然落ちるが、巡航して走っている限り非常に優れている燃費性能だと言える。

軽油のため、燃料代がガソリンエンジンモデルのハイオクよりも2割程度安いので、燃費、維持費、ランニングコストは安く抑えられることになる。

操舵力がシッカリあるステアリング

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ディーゼルエンジンになって、2リットル直列4気筒ガソリンターボエンジンよりもエンジンの重量自体増えている。そのため特にフロント周りの重厚感が増している。

2リットル直列4気筒ガソリンターボエンジンは、巨体を感じさせない軽快なフットワークがあったのだが、6気筒のディーゼルモデルには、重厚感があり往年のBMWにあった「12気筒セダン」のような重厚な乗り味が感じられるのだ。

ステアリングは、操舵力がシッカリあって直進安定性がよく、サスペンション剛性の高さが感じられ、ライントレース性の正確なステアフィールを感じ取ることができる。

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今回試乗した車には「255/65R19」というオフロード向きのオールテレインタイヤが標準装備として装着されていたのだが、高速道路を走っていてもロードノイズが非常が静かで、タイヤの外見からは想像できない快適な乗り味になっている。直進安定性が良くてライントレース性も活かされ、ステアリングのしっかりした剛性間や重厚感なども失われていないので、さすが標準装着されるだけあってタイヤとしての機能性が非常に高いと感心させられた。

常に力強く燃費にも優れる走りを実現

今後、悪路を走る機会もあると思うが、今回は市街地走行が多いユーザー向けにということで高速道路や一般道を走った印象を主に述べる。

まず、高級セダンとしても使えてしまうほど音が静かで快適かつ重厚感があり、装備や内装の作り、前席はもちろん後席も非常にスペースがあって実用的な車だと言える。

日本の道路は道幅が狭いが外装のデザインが四角く角ばった形のため、見切りが良く車体の大きさをあまり感じさせない。

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ロングホイールベースで車体全長が長いため最小回転半径は6.1mとなっていて、Uターンなどの小回りはしにくいが、日常的な使用においてはあまり困ることはないだろう。コンビニ等の駐車場など、車間の駐車スペースが狭い場所に停車した場合、ドアの開閉には気を使うが、ヒップポイント(着座位置)が高いので見晴らしが良く、車としては非常に運転しやすい印象だ。

山道を走行すると、8速のギアシフトが的確に行われていて、エンジンのトルクバンドの美味しいところを自然に引き出している。

650Nmという大トルクに加え8速のステップ比が的確に割り振られているということで、路面状況、走行状況、交通関係に応じて適切なギアが選択され、常に力強く燃費にも優れる走りを実現されている。

ディフェンダーは爆発的な人気があり、受注や販売面で絶好調なようだが、ディーゼルモデルが追加された事によってさらに注目され、早めに注文しないと納期に時間がかかってしまう可能性があるという。購入希望者は決断を早めるべきだろう。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

《中谷明彦》

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