2020年1月6日、トヨタの豊田章男社長は、ラスベガスのホテルで開催された「CES2020」プレスカンファレンスのステージに2年ぶりに登壇し、コネクテッドカーや自動運転の電気自動車を中心に、あらゆるモノやサービスをネットでつなげる「スマートシティ」を静岡県裾野市に建設すると発表した。TOYOTA WOVEN CITY(ウーブン・シティ)の開発宣言である。
「自動車メーカーからモビリティ企業への転身」を発表した2018年、それはそれで大きなサプライズであったが、その2年後に、「モビリティ企業が都市開発」するというのである。その2回のサプライズの現場に居合わせただけでも幸運なことであるが、カンファレンス最前列に陣取った筆者の隣に座っていた中日新聞の記者も、本気なのでしょうか?と首を傾げていたのを覚えている。
今回は、次世代モビリティの市場展望とCASE革命の最終章として、S:シェアリング&サービスについて深掘りをしつつ、「自動車メーカーが都市開発!?」一見領域外に思えるこの取り組みの必然性について考察してみたい。
MaaSにより全ての人が移動の自由を得られる?
トヨタは、未来のモビリティの姿を示すコンセプトとして、「Mobility for All:すべての人に移動の自由と楽しさを」というキャッチフレーズを掲げている。もちろん、人間にとって自動車が唯一の移動手段であるわけはない。しかし、自動車が人々の移動に与えた自由は大きい。昨今自動車業界では、CASEと同時にMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)というワードが語られる機会が多くなった。
現代の人々は移動しようとする際、電車やバス、飛行機、あるいは自家用車、レンタカーなど、さまざまな交通手段を、状況に応じ使い分ける術を知っている。しかし、ルート検索、乗り継ぎや料金の支払いなど、アプリを利用することにより効率化できる場面はあるにせよ、スマホやPCを使えない人にとって利便性の面で十分なサービスとは言い難い。また、交通網が整備された大都市に住む人と、道路整備もままならない僻地に住む人々との交通格差も深刻な問題である。自動車の増加による大気汚染も世界中で問題視されており、先進国ではガソリン車を禁止する動きが活発化している。さらに、自動車は大気汚染のみならず、交通渋滞や交通事故の問題も抱えている。
このように、世界中の人々が移動の自由を得るために、自動車メーカーのみならず、移動手段を提供する企業・自治体が連携して、人々の移動に関わるさまざまな問題を解決しようとする考え方の上に立っているサービスがMaaSなのである。