ヤマハのスポーツツーリングモデル「トレーサー」が3代目へとフルモデルチェンジを果たした。名前も『トレーサー9 GT』となり全面刷新。新型トレーサーの進化を、22枚の撮り下ろし写真とともに紹介する。
日常を刺激的にするマルチロールファイター
ヤマハ トレーサー9 GT ABS
新型トレーサーの開発コンセプトは「Multirole fighter of the Motorcycle」。一機でさまざまな用途に対応する戦闘機(マルチロール機)のように、スポーツ、ツーリング、日常など様々なシーンを刺激的なものにすることをめざした。
従来モデルと同様、その車体のベースとなっているのは3気筒スポーツの『MT-09』。新型は同時に開発が進められた。核となるのは888ccの水冷4ストローク3気筒エンジンだ。最高出力88kW、最大トルク93Nmを発揮する新型エンジンは、慣性マスをアップしながら300gの軽量化を実現。MT-09の刺激的な走りを継承する。
ヤマハ トレーサー9 GT ABS
新開発の「IMU」(Inertial Measurement Unit)は『YZF-R1』の基本性能を維持しつつ、50%の小型化、40%の軽量化を実現。さらに、バンクの角の情報を反映する「TCS(トラクションコントロール)」、リアタイヤの横滑り情報を反映する「SCS(スライドコントロール)」、前輪の浮き上がり速度を補正する「LIF(リフトコントロール)」、コーナーでの制動時にも対応する「BC(ブレーキコントロール)」と、最新の電子制御システムを搭載する。
走りを支える骨格は、基本をMT-09と共有しながら専用チューニングのブラケットやエンジンマウント、専用設計のスチールパイプ製リアフレーム、高剛性アルミ製ロングリアアームを開発。足元には、ヤマハ独自のSPINFORGED WHEEL技術による軽量ホイールを採用し、従来モデルより前後で約1000g軽くなった。さらにタイヤはブリヂストンと共同開発した「BATTLAXスポーツツーリングT32」を装着する。
ヤマハ トレーサー9 GT ABS
サスペンションはKYBの前後電子制御サスペンションを装着。快適な移動とワインディングでの刺激的な走りを高次元で両立。3バッグを積載した状態でも高い高速安定性を実現するほか、無積載時と変わらない旋回性も兼ね備えた。
デザインに「機動性と機能性」
ヤマハ トレーサー9 GT ABS
デザインのコンセプトは「Agile & Minimalist Traveler」。旅のプロフェッショナルが使う道具のような雰囲気を盛り込み、見た瞬間に旅に出たくなるようなデザインをめざした。超凝縮樽型マスPF+最小構造・最適プロテクションを実現すべく、フロントフォークに灯火器、プロテクションパーツを寄せ、さらにプロテクションパーツをライダー側に寄せた。新設計のウインドプロテクションやカウルなど機能部品をデザインの特徴とすることで、サイドから見た際に前進感のあるアローシルエットとしている。
「機動性と機能性」にフォーカスしたというフロントマスクは個性的だ。スクリーン直下の、従来であれば「目」にあたる部分のライトはヘッドライトではなくコーナリングライトになっている。バンク角に応じてリニアに調光し前方を照らす。
ヤマハ トレーサー9 GT ABS
その下を縁取るようにポジションライトが配された。ヘッドライトはさらに下、フロントフォークとカウルに挟まれるように配置されている。夜間の走行性能を高める機能をデザインの特徴に落とし込んだ、とヤマハは説明している。
メーターは3.5インチTFTメーターをダブル装備。左側には速度や回転数など走行に関わるもの、右側にはトリップメーターや燃費、水温、燃料計などを表示することが可能だ。このほかにも、15mmの調整が可能なライディングポジション、10段階の調整が可能なグリップヒーターなど、快適性も追求している。
トレーサー9 GT ABSは7月28日発売、価格は145万2000円。カラーは写真のモデル「マットグリーニッシュグレー」のほか、「シルバー」、「レッド」の3色を設定する。