【ハーレー パンアメリカ 1250 試乗】これまでのハーレーとは「見える景色」が違う…青木タカオ

ハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャル
ハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャル全 24 枚

ドコドコと重く回るエンジンを股ぐらに感じつつ、ローアングルから見上げるようにして乗る。

幅広なハンドルやフットペグに手足を乗せ、ワイルドにライディングポジションを構えれば、普段はおとなしい人も魔法にかかったかのようになんとなく反逆的、不良っぽい気分にさせてくれるから不思議。

シート高が低く、乗り手の体格を選ばないから女性ライダーも少なくないし、足がしっかりと地面に届くという強みは、リターンライダーやビギナーにもありがたい。

それがハーレーダビッドソンなはずだが、『PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャル』から見える景色はまったく異なる。ゆったりと高い位置から見下ろし、エンジンもVツインながら水冷DOHC化されジェントルに回る。

クセの強い姿に惹かれれば、抜け出せない“沼”が待っている

ハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャルハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャル
しかし、ハーレーらしさは随所に見られる。アドベンチャーセグメントへは初の参入となるが、成功者の真似などしない。競合他社のモデルがクチバシの長い鳥類のようなフロントマスクを採用するなか、一度見たら忘れない武骨なデザインで勝負。

カウルからタンク、そしてシートへ一直線にラインが伸びる水平基調のデザインは、力強さを感じるもので、質実剛健なジープかはたまた戦車か装甲車か、流行など関係ない己を貫くスタイル。

第一印象では、到底スタイリッシュとは思えなかった姿も、見ているうちにだんだんと魅了されていくのは、ハーレーでは毎度のこと。過去の名車たちも、初めて見たときは違和感だらけだが、その斬新な姿は後に評価が高まっていく。パンアメリカの野暮ったさも、病みつきにするクセの強さが大いにある。

アドベンチャーなのに足つき良好

ハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャルハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャル
前後サスペンションは190mmとダートも余裕の長いストローク量を持ち、見るからに車高が高い。足つき性には苦労しそうと覚悟して挑むが、なんとびっくり、上級仕様の『パンアメリカ1250スペシャル』なら片足立ちでカカトまで地面に足が届くではないか。

これは市販二輪車初装備となる『アダプティブライドハイト(ARH)』による恩恵で、走行時はサスストロークをそのままに活かし、停車時には自動でシート高が下がり足つき性を向上する。830~873mmで調整され、最大43mmもシート高が低くなり、体格を問わずに乗れるというハーレーの持ち味を、アドベンチャーツーリングでも継承することに成功しているのだ!

キャンプ道具を積み、さぁ出かけよう!

ハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャルハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャル
クルージング力はさすがのハーレーと言わんばかりで、どっしりと落ち着いている。フロントカウルに備わるウインドシールドは4段階に調整可能で、風雨からライダーをガード。自由度の高い乗車姿勢や高速巡航でありがたいオートクルーズコントロールの装備、フロント19インチのゆったりとしたハンドリングなどが相まって長旅へ出かけたくなる。

今回はかなわなかったが、高速道路を使った長距離走行でこそパンアメリカの実力を存分に発揮するはず。ちなみにそのネーミングは、北米から南米まで太平洋岸に沿って走る道路網の総称に由来。大陸縦断の冒険も、パンアメリカが相棒なら心強いだろう。

オプションのアルミ製ラゲッジケースをフル装備すれば、キャンプ道具も収納可能。試乗後は早速、その世界感をアウトドアフィールドで堪能することができた。

ハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャルハーレーダビッドソン PAN AMERICA(パンアメリカ)1250/スペシャル

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★★
足着き:★★★★(スペシャル)
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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