ハザード点滅&ホーン鳴りっぱなしの車は緊急事態…三菱ふそうの安全支援装備を体験[動画]

三菱ふそう:スーパーグレートのアクティブ・ドライブ・アシストをバージョンアップ
三菱ふそう:スーパーグレートのアクティブ・ドライブ・アシストをバージョンアップ全 14 枚

三菱ふそうトラック・バスは6月にリリースした2つの安全運転支援機能について、同社の喜連川研究所内のテストコースで走行実験とデモを行った。

大型トラック『スーパーグレート』の新型モデルには、「アクティブ・ドライブ・アシスト」に「エマージェンシー・ストップ・アシスト」と、また衝突と判断したときに緊急停止まで行う「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」が追加されている。この2つの機能はオプション設定となるが、どのような機能なのか。

進化したアクティブ・ドライブ・アシスト

エマージェンシー・ストップ・アシストは、ステアリングシャフトの軸トルクの変化によって、ドライバーの運転状態を認識し、ドライバーがハンドルに手を添えていないと判断した場合、走行中の車線で緊急自動停止を行う。緊急停止といっても急ブレーキは追突の危険を誘発し、積荷にもダメージを与えるため、ハザードとホーンで異常停止を周囲に知らせながら、マイナス0.15G程度の減速を行い完全停止まで行うものだ。

自動運転では、自動運転の継続が不可能な状態になったら、システムが自ら車両を安全に停止させなければならない。このような動作をミニマルリスクマヌーバ(MRM)という。レベル3以上、とくに人間の制御を必要としないレベル4以上の自動運転では必須の機能といわれている。三菱ふそうでは、このMRM準拠の機能をスーパーグレートに搭載した。エマージェンシー・ストップ・アシストは、レベル2の安全運転支援機能だが、発作や心臓・血管トラブルなどでドライバーが運転不能な状態に陥ったときの事故を最小限に抑えるために導入した。

アクティブ・サイドガード・アシストは、車両左側(助手席側)の自転車・バイクなど障害物を検知し、その状態で左折や車線変更動作を行うと、ドライバーへの警報行うとともに、さらにセンサーの動きから衝突を判断した場合に緊急ブレーキをかけて自動停止するシステムだ。

想定されるシチュエーションは交差点での左折巻き込み事故だ。トラックによる死亡事故のうちおよそ25%が交差点の左折時に発生している。さらに25%の死亡事故のうち約9割弱が大型トラックによるものだという。左折巻き込み防止のためのシステムは、この問題への大きなソリューションのひとつとなる。

助手席側の障害物検知と巻き込み防止警報装置については、WP29でも議論がされており22年から警報装置の義務化が始まる。スーパーグレートやキャンターなど三菱ふそうのトラックにはすでに、助手席側側方ミリ波レーダーと助手席Aピラーにワーニングランプが装着されている。新しいアクティブ・サイドガード・アシスト1.0は、これに衝突判断と自動ブレーキの制御を加えたものだ。WP29では、いずれ巻き込み防止装置に自動ブレーキ機能も盛り込む流れになっている。三菱ふそう(ダイムラーグループ)では、それに先行してブレーキ介入制御を商品化している。三菱ふそう:スーパーグレートのアクティブ・ドライブ・アシストをバージョンアップ三菱ふそう:スーパーグレートのアクティブ・ドライブ・アシストをバージョンアップ

ドライバーの異常を検知して緊急自動停止

実際、エマージェンシー・ストップ・アシストとアクティブ・サイドガード・アシストの機能はどうか。エマージェンシー・ストップ・アシストは、テストコースのオーバルコースで行われた。スタートするとすぐにアクティブ・ドライブ・アシストが有効になり、緊急ブレーキや車線逸脱防止システムなどが有効になる。この時点で、エマージェンシー・ストップ・アシストも有効になっている。

そのため、ハンドルから手が離れると(システム起動)15秒でメータパネルに黄色の警告灯が点灯する。ドライバーがハンドルを保持したり運転を再開しなければ、システム起動後30秒経過すると警告灯が黄色から赤に変わる。起動から50秒後には警告音もなり始める。システム起動から1分経過すると、自動停止シーケンスが始まる。

停止シーケンスは、ホーン吹鳴とハザード点灯によって周辺に異常(停止シーケンス発動)を知らせると同時にギアをニュートラルに入れる。これによりエンジンからの動力伝達がカットされる。同時にブレーキ制御を行い完全停止まで行う。停止するまでにドライバーのハンドル操作が再開されれば、シーケンスはキャンセルされホーンなども止まるという。

このとき、車線さえ認識できていれば車線逸脱防止機能の制御により、ステアリング操作も行われる。デモでは、オーバルコースのストレートエンドでシステムを起動させ、バンクコーナーの途中で完全停止した。ホーンやハザードは人間がキャンセルボタンを押すまで鳴り続ける。平均的な居眠りや疲れの場合は、レーン逸脱警報、居眠り警報、運転非集中検知などその他のアクティブ・ドライブ・アシスト機能で多くのドライバーは覚醒すると思われる。エマージェンシー・ストップ・アシストも、ドライバーへの注意喚起を行うので、自動停止までいったときは、ドライバーの意識は完全に失われている可能性が高い。道路上で、ハザードとホーンが鳴りっぱなし車両を発見したら、ドライバー異常と思って警察等への通報をしたほうがよいだろう。少なくとも、こういうモードがある車両の存在は多くのドライバーが知っておくべきだろう。アクティブ・サイドガード・アシスト実験中アクティブ・サイドガード・アシスト実験中

巻き込み防止警報に自動ブレーキ機能が追加

アクティブ・サイドガード・アシスト1.0は、車両後端(トレーラーを牽引している場合は、トラクターヘッドの後端)2メートルくらいから障害物をミリ波で検知し、その動きをトラッキングする。この時点でピラーの警告灯が黄色に点灯し、ドライバーに障害物の注意喚起を行う。障害物を検知した状態でさらにウインカーを左に操作すると、ピラーの警告灯が赤色に変わり、アラーム音を発する。ここまでは、従来モデルのスーパーグレートに搭載されていた巻き込み防止警報装置と同じだ。

新型では、障害物を検知してから、その動きと自車の軌道から衝突を予測判断した場合、ブレーキの介入制御を行い、車両を完全停止させる。アクティブ・サイドガード・アシストの作動速度は20km/hなので、タイヤがスキッドするほどの急ブレーキではないが、かなり強めのブレーキとなる。

障害物はレーダーによる検知なので、一定の大きさと構造があれば反応する。バイク、自転車、歩行者、ベビーカー、もちろん車両も検知する。現在の道交法ではセンサーを車幅から突出させることができないので、レーダーの検知範囲は前後方向に168度。欧州などは側方レーダーなどの突起は許容されるとのことで、国内法も対応が検討されているという。レーダーが側面よりすこし飛び出せば180度のセンシング可能になるという。あるいはいすゞ車のように四隅にレーダーを配置する必要がある。

なお、20km/h以下なら渋滞時の合流や車線変更でもブレーキ介入が入る可能性もあるとのことだ。三菱ふそうとしては、あくまで左折巻き込み防止機能なので、渋滞並走での動作は意識して対応させていないが、渋滞時のすり抜けバイクやうっかりの車線変更などで安全方向にブレーキを制御してくれるのは(うっとおしいと思うかもしれないが)ありがたい機能ではある。

多層的な運転支援が総合的なリスクを減らす

これらの機能は、システムが想定するケースで危険回避や事故防止に役立つが、もちろん100%ではない(ADAS機能・自動運転機能全般に言えることだが)。たとえば、現状市販車両の実装可能なMRMは、停止動作中の路上に別の障害物があったり、車線を認識するためのマーカー(白線など)がなくなったりしたらどうなるか。この対応は設計ポリシーに依存する。車線が続くものとして停止動作を続けるか、MRM自体をキャンセルするか。この手の問題に正解はない。

有効な利用シーンが限られるならなくてもいいのではないかと考えるかもしれない。だが、発生時の被害が大きいリスク、一定の頻度で発生するリスクについての対策は重要だ。結局事故は複合的なリスクの積み重ねで発生する。この対策をすればこのリスクは防げるという銀の弾丸的な解決はない。多層的な対策で顕在化するリスクを回避していくしかない。また、個々のADAS機能の積み重ねと統合が高度な自動運転技術にもつながる。

《中尾真二》

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