【INDYCAR 第11戦】初開催ナッシュビルの乱戦を制したのはマーカス・エリクソン…琢磨は多重事故遭遇で戦線離脱

マーカス・エリクソンがナッシュビル市街地コース初開催戦を制した。
マーカス・エリクソンがナッシュビル市街地コース初開催戦を制した。全 8 枚

NTTインディカー・シリーズ第11戦の決勝レースが現地8日、米テネシー州ナッシュビルの市街地コースで実施され、マーカス・エリクソンが乱戦を制して自身2勝目を達成した。佐藤琢磨は多重アクシデントに巻き込まれる格好で戦線離脱(リザルトは25位)。

今季のインディカー・シリーズは7月初旬に第10戦が開催されたあと、約1カ月の実戦空白期を挟むこととなった。“再開初戦”は初開催のナッシュビル市街地コース戦。現状で今季は全16戦のラインアップなので、レース数的には既に後半戦に入っていたともいえるが、この第11戦ナッシュビルから8~9月の6レース、本当の意味での後半戦突入となるかたちだ。

予選でナッシュビル市街地の初代ポールシッターに輝いたのは若手実力派のひとり、コルトン・ハータ(#26 Andretti Autosport w/ Curb-Agajanian/ホンダ)。日本期待の佐藤琢磨(#30 Rahal Letterman Lanigan Racing/ホンダ)は2グループに分かれての予選第1段階(いわゆるQ1)で脱落、全27台中の24位という予選結果に甘んじた。なお、目下のポイントリーダーであるアレックス・パロウ(#10 Chip Ganassi Racing/ホンダ)は予選3位となったが、エンジン交換に関するペナルティの適用が今大会前から決まっており、6ポジションダウンで9番手からのローリングスタート参加に。

また、今年のインディ500で歴代最多タイとなる4度目の優勝を飾ったエリオ・カストロネベス(#06 Meyer Shank Racing/ホンダ)が、そのインディ500以来となる出場をしてきており、予選15位。カストロネベスは今季後半6戦中、今大会を含む5戦への参戦が決まり、来季は自身2017年以来5季ぶりとなるレギュラーシート獲得も決まっている(今季後半、来季ともに、今年のインディ500を一緒に制覇したMeyer Shank Racingからの参戦)。

決勝レースは路面ドライ、暑いコンディションのもとで始まった。初開催の市街地コースらしくというべきか、アクシデント等によるフルコースコーションが手元集計で9回(うち2回は赤旗中断に)という乱戦になっていく。

圧倒的に速かったのはポール発進のハータである。しかしながら彼は、フルコースコーションとピット戦略の絡みから終盤は上位猛追を敢行する展開を強いられた。それでもハータはとにかく速い。抜きやすいとはいえなさそうなコースで先行車を次々と抜き、首位マーカス・エリクソン(#8 Chip Ganassi Racing/ホンダ)にも迫ってくる。

レース展開的に燃費も気にしつつの逃げであったエリクソンと、タイヤやブレーキ等を酷使しながらの猛追であっただろうハータ。一度はエリクソンの真後ろまで接近したハータだが仕掛け損ない、少し下がって、再び迫ってきた、そんな最終盤のトップバトルだった。それが80周レースの75周目、突然の終焉を迎える。

2番手ハータが単独クラッシュを演じてしまったのだ。

健闘を称える観客の前で、無念の終戦となったハータはマシンを降りる。速さでは他を圧倒していたといっていいが、運と流れを味方にできなかった(リザルトは19位)。

レースはコーションラップでの終幕を避けるためと思われる赤旗中断を経て、実質残り2周から戦闘再開に。エリクソンは首位を守ってゴールし、ナッシュビル市街地戦“MUSIC CITY GP”初代ウイナーの座に就いた。彼は今季第7戦(デトロイトでのダブルヘッダー1戦目)でキャリア初のインディカー優勝を飾っており、これが2勝目である。

実はエリクソン、今回はレース序盤にリスタート隊列のなかで前車に乗りあげて飛ぶような格好でクラッシュし、フロントノーズを派手に壊すという一幕があった。戦線離脱となっていてもおかしくないアクシデントで、ペナルティを受けたりもしていたのだが、こちらは運と流れを引き寄せて、予選18位、レース序盤の一時はほぼ最後方というところからの大逆転勝利を現実のものとしている。

優勝した#8 マーカス・エリクソンのコメント
「信じられない勝利だよ。インディカー・シリーズでは本当に何が起こるかわからない、ということだ。だから絶対にあきらめてはいけない。それに自分には、とても優秀なチームがついてくれている。彼らは素晴らしいマシンを用意してくれて、今日の勝利を可能にしてくれた。この勝利をすべてのクルーに捧げる。序盤のアクシデントで受けたダメージも見事に修復してくれたんだ」

「コルトン・ハータは週末を通じて本当に速かったと思う。その彼を封じ込めながら、燃費セーブもしなければならなかった状況での走りは、自分のキャリアのなかでもベストのパフォーマンスであったと言っていいと思うよ。彼がクラッシュでレースを終えたことは残念だ」

「ホンダエンジンは最高で、レースを通してパワフルだった。そしてとにかく、僕はチームを誇りに感じている。彼らに深く感謝したい」

インディカーを主戦場として3年目の元F1ドライバー、マーカス・エリクソン。名門ガナッシ(Ganassi)加入2年目の今シーズン、その実力がいよいよ本格的な“インディカー仕向け”となって開花したといえそうだ。

決勝2位はエリクソンの僚友であるスコット・ディクソン(#9 Chip Ganassi Racing/ホンダ)で、ガナッシの1-2フィニッシュ。3位にはジェームズ・ヒンチクリフ(#29 Andretti Steinbrenner Autosport/ホンダ)が入った。7位までをホンダ勢が独占するレース結果となっており、シボレー勢最上位は8位のフェリックス・ローゼンクヴィスト(#7 Arrow McLaren SP)。9位はカストロネベスで、シングル順位9台中8台がホンダ勢だった。

ドライバーズポイントランキング首位のパロウは今回7位。彼とランキング2位との差は39点から42点へと、前戦終了時よりわずかに広がっている。今回2位のディクソンがランキング2位に上がり、こちらもガナッシ勢の1-2に。ふたりの差自体は56点から42点に短縮した。今回13位だったパトリシオ・オワード(#5 Arrow McLaren SP/シボレー)はランキング2位から3位に後退し、首位パロウの差は39点から48点へと拡大。

琢磨はレース序盤、最初の赤旗中断につながる都合4回目のフルコースコーションになった多重事故に巻き込まれる格好でマシンを傷め、戦線離脱となってしまった(リザルトは25位)。

#30 佐藤琢磨のコメント
「本当に厳しいレースとなりましたね。ナッシュビルは素晴らしい雰囲気で、実にエキサイティングなレースでした。スタートでも混乱が起きてアクシデントが多発しましたが、自分はすべてを避けることができていました。(その後も)コース上でライバルたちをオーバーテイクし、前方のグループに追いつき、13番手まで順位を上げました。レース序盤は、かなり勇気づけられる戦いができていたんです」

「しかし、(3回目のフルコースコーション明けの)再スタート時にクラッシュが発生、目の前でマシンが絡み合ってストップしました。タイトなコーナーに2台が並んで止まったので、避けきれずにぶつかり、フロントサスペンションを破損してしまいました。ピットに戻ることはでき、クルーたちが素晴らしい働きで修理を試みたのですが、残念ながら重要なパーツのひとつが修復不能な状態になっており、レースに戻ることは叶いませんでした」

「とてもエキサイティングで面白いレースとなっていたので、レースを戦い続けたかったところです。次のレースでいい戦いぶりを見せたいと思います」

シリーズはここから3週連続開催の予定。次戦第12戦は今季2度目となる“インディアナポリス・ロードコース戦”で、現地8月14日決勝の日程だ。

《遠藤俊幸》

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